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【完結】おかん転移 残念でした私が聖女です〜娘を癒すために異世界で食堂をはじめたら、娘に一途なイケメンが釣れました〜  作者: 黒砂 無糖
第3章 母と娘の恋模様

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おかん、パーティーの準備をする 前編

 朝、明るくなるよりも前の時間、私は腕まくりをしてキッチンに立ち、今日のパーティーの下準備に取り掛かる。


 食材は大体揃っているけれど、せっかくのパーティーだから、何か工夫がしたいと思って張り切って早起きをした。


「確か、瑠璃が先日お土産でくれた食材があったわよね……魔族の国の食材なら、ハロウィンにピッタリじゃないかしら?」


 今日はハロウィン改めパンプキンパーティーなので、メイン食材はかぼちゃだ。


 魔族の国の土産をストックしてある空間魔法の鞄の食材リストを確認すると、3種類のかぼちゃが入っていた。


「あら? このリスト、説明欄があるわ」


 ペリルによって改良されたのか、リストに備考欄が追加されていて、確認すると取り扱い方や素材の特徴まで記されていた。


 ■クリームかぼちゃ


 表皮は薄く硬い。中身がサラサラな液状のため、必ず安定する場所に置き、上部のへただけを『風魔法』で切らなければ、すべて溢れてしまうだろう。


 *味は柔らかくクリーミー。熱を加えるととろみが増す。


 ■岩かぼちゃ


 表皮は厚く、岩のように硬い。中身も圧縮されているのでかなり硬い。

 3日間水につけておけば、普通の包丁で切ることも可能。


 *味はほくほくとしていて、甘みも濃厚。


 ■縞かぼちゃ


 表皮は固いが、ナイフで切れる。

 癒し魔法をかけてから切らなければ、種が空気に触れた瞬間に爆発し飛散する。

 落として割れた瞬間に爆発して負傷するものも多いため取扱注意。


 *味は比較的さっぱりとしているが、火を通すと水分にとろみがつき、食感にもちもちとした弾力が生まれる。



「魔族の国の食材は、やっぱり特徴がおもしろいわね。とりあえず、岩かぼちゃの処理からしようかしら」


 私は一番大きな鍋に水を入れて、岩かぼちゃを浸すと『時間経過魔法』をかけた。


「三日分だと、私でもそれなりに魔力を使うみたいね……」


 私は魔力タンクのようだから、全く支障はないけど、通常はそのまま放置して三日経った物を、時間停止の鞄に入れておくのだろうな。


「あら、水分を含むと本当に柔らかくなるのね?」


 岩かぼちゃは乾いているときは、本当に岩のようだったが、三日間の浸透した水分のおかげで普通に切ることができた。


「岩かぼちゃは、ホクホクなら、コロッケとパイにしようかな?」


 皮をむいた岩かぼちゃは、後から潰すので、魔導鍋に入れて蒸すことにした。


「待っている間に、ほかにも使う食材を見てみないと……」


 私は再び鞄の中を覗いた。


「あら、これ、いいじゃない」


 私は鞄から大きな塊を取り出した。

 

 それは、岩かぼちゃを食べて育った

『魔豚のスペアリブ』だ。


「かぼちゃつながりだし、パーティーっぽいし、いい感じじゃないかしら?」


 魔豚と書いてあったけど、何が違うの? と気になって確認したら、


 *人間が食す場合は、調理前に肉を丸ごと浄化をしないと、魔素を取り込み『魔力酔い』を起こすから注意が必要。


 と記載されていた。


「備考欄に、まめ知識も書いてあるわ……」


 *魔素を浴びすぎると、通常の豚でも魔豚になる。通常の豚よりも大きくなる。


「へえ……大きくなるなら、皆、魔豚にすれば可食部が増えそうよね?」


 魔族の国の食材はどれも大きくて立派だった


 魔豚のスペアリブを、風魔法で食べやすい大きさにカットし、ぼーっと考えていたら——


「誰もがトーコのように魔力を持っているわけではないので、全部魔豚にするのは難しい話だと思いますよ」


 いきなり話しかけられて、びっくりして振り返ると、裏口から入って来たのか、そこにはいつの間にかケルナーがいた。


「ケルナー? どうしたのよ、こんな早くに」


 そんなに時間がたったかと窓を見たけれど、外はまだ暗く朝にはなっていない。


「トーコのことだから、張り切って明け方から準備するだろうと思ったので、仕事前に立ち寄ってみたら案の定でしたね」


 ケルナーは、やれやれとでも言いたそうな顔をして笑っていた。


「このあと仕事に行く人に、お手伝いはさせられませんよ?」


 ただでさえ忙しいのに、この人は何をしているのか……


「トーコは店の料理じゃないなら、魔物食材を使うと思ったので……キッチンを爆破しないための見張りです」


 確かに私は何度もキッチンを爆破している。


 そのたびにケルナーにキッチンの修繕を頼んでいるので、何も言えない。


「とりあえず、ケルナーはそこに座って、これでも食べていて」


 私はレモネードを入れて、棚からミックスサンドを出しカウンターに置いた。


「トーコ、私は朝食を食べに来たわけではないのですが……」


 ケルナーが困って立ちすくんでいるので、


「いいから。そこから見えるでしょ? 手が必要になったら言うから、そこから監視していて」


 そう言って、私はまた作業に戻った。


 ケルナーはしぶしぶカウンターに座り、レモネードを飲んでいる。


「ちゃんとサンドイッチも食べるのよ」


 私はスペアリブにスパイスをもみ込み、調味液に漬け込みながらケルナーに注意した。


 鞄をのぞき、さらに新しい素材を、丁寧に二つ取り出した。


 ひとつはコロッケに入れようと思っていた

『破裂豆』だ。


 ■破裂豆

 枝豆の魔植物へと変異した物。保存袋のまま雷撃を与える。

 そのまま調理をすると、水に入れても火にかけても爆散するので注意。

 一粒の爆発でオーブンが壊れる威力がある。


 *味は通常の枝豆に近いが、雷撃を受けることによってピリピリとした刺激が生まれ、楽しい食感になる。


 ——この豆、危険すぎないかしら?


 もう一つの食材は『雷鳥』


 ■雷鳥

 生肉を素手で触ると感電するので、空中に浮かせたまま風魔法で調理する。

 芋やかぼちゃと調理すれば雷は抜ける。


 *調理の難易度は高いが、身がプリッとしていて美味。


 これ、岩かぼちゃのパイに相性抜群よね?


 私は説明通りに豆に雷撃を与え、空中で雷鳥をカットしていた。


「……連続で魔法を使いながら調理をするなんて、トーコはすごいですね」


 食事を終えたケルナーは、じっとしていられないのか、気づけばキッチンに入ってきた。


「仕事まで時間があるので、手伝いますよ」


 ケルナーの好意を無碍にもできないわね。


「じゃあこのかぼちゃ、少し塊が残る程度に潰してくれるかしら?」


 私はケルナーに、かぼちゃを潰してもらうことをお任せした。

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