ハロウィンはなんのお祭り? イベント回
久しぶりの追加投稿です!
「お母さん、もうすぐハロウィンじゃない?だから皆で仮装パーティしない?」
転移陣を使って帰ってきた瑠璃が、夕食の途中に不意に思いついて話しかけてきた。
いつの間にか、転移陣によって、瑠璃の部屋と特殊部隊の拠点は繋げられていたのよ。
「ハロウィンパーティーね……でも瑠璃、こちらの世界には、ハロウィンの認識も、仮装の認識もないのではなくて?」
ちょっと考えてみたけれど、想像がつかない。
「認識かぁ……ソージュはどう思う?」
鳥の天ぷらを咀嚼しているソージュは、瑠璃に手の動きで、少し待つように合図をした。
「……っ。済まない、口にものが入っていたからすぐに返事ができなかった。ハロなに?瑠璃はなんて言ったんだ?」
そもそも、ハロウィンを聞き取ることさえできていなかった。
ソージュは王子なだけあって、食事のマナーはお上品だ。なんと、旅の間に箸も使えるようになったらしい。
「ハロウィンだよ。こちらにはないの?えっと、ハロウィンは……何で説明すれば良いかしら?」
瑠璃は、ハロウィンの説明がうまくできないのか、チラチラこちらを見てくるけど、
——ハロウィンの説明は私が知りたいわ。
ふわっとしか分かってないから、説明するとなると難しい。
「そもそも、ハロウィンパーティーをする人って、ちゃんとハロウィンの意味を理解しているのかしら?」
絶対、私と同じで、ふわっとしか分からずにパーティーしてるはずだわ。
「ハロウィンは、収穫祭と間違えやすいですよね」
ソージュの隣で食事をしていたチャコちゃんが、あちらの世界の話に気づき会話に参加してきた。
「もともとは、外国のお祭りが始まりって聞きました。収穫祭の意味も、少しはあったみたいですけど……」
へえ、そうだったんだ……完全にカボチャの収穫祭だと思っていたわ。
「秋と冬の境に、死者の霊が来ないように、仮面をかぶったり、火を焚いたみたいです」
チャコちゃんは博識だ。追加情報もくれた。
「今は、ただの仮装パーティーか、お菓子を配るイベントになっているわよね?」
私は、食事を再開したチャコちゃんに、さらに質問をしてみた。
チャコちゃんは、今、口の中がいっぱいで、まだ喋れないためか、
コクコクと首だけで返事をしていた。
「霊が来ないようにするなんて、日本のお盆とは真逆よね?」
私は誰に話すでもなく、ポツリと言葉をこぼした。
ジャック・オー・ランタンはカボチャだけど、ナスとキュウリの馬とは意味合いが違うのね……
私は、そんなことを考えながら、自分のお皿の上の、ナスの天ぷらを見つめた。
「お母さん、それを言ったら、クリスマスだって同じじゃない?」
私の言葉を拾った瑠璃は、クスクス笑いながら、クリスマスも一緒だと言う。
——瑠璃、そうね。あなたは正しいわ。
我が家では、クリスマスはプレゼントがもらえて、ホールケーキを食べられるという認識だった。
——認識のズレは、私のせいよね。
「確かにそうだけど……あと、ハロウィンで子供たちがトリック・オア・トリートと言うのはどうしてなのかしら?」
お菓子をくれなきゃイタズラするぞなんて、子供は可愛いけど、ある意味脅しだわ。
——子供版のカツアゲね?
「昔のハロウィンは、死者や悪霊が戻ってくる夜に、家の人が食べ物を用意して、霊をなだめました」
口の中が空になったチャコちゃんは、また私の疑問に答えてくれた。
——そうなんだ、知らなかった。
「外国の霊たちは、食いしん坊なのね?」
今は、お菓子がお供え物ってことかしら?
私の考えに、皆がフフッと笑ったのが、なんとなく伝わってきた。
「時代が移り変わると、子どもたちがオバケの仮装をして家を回り、お菓子がなかったら、小さな“いたずら”をする遊びになりました」
チャコちゃんは、ひとしきり話をすると、食事中の皆が、じっと彼女の話に集中していたことに気づき、
「あ、ちょっと喋りすぎました……」
チャコちゃんは一気に赤い顔になり、恥ずかしかったのか俯いてしまった。
「チャコちゃんは、博識なのね。よくそんなこと知っていたわね?」
感心しながら、チャコちゃんを褒めたら、
「昔、子供相手をすることがあって……何度か説明したんです」
フッと、チャコちゃんの笑顔に影がさした。
「……そう、きっと子供たちは、詳しく知れて、楽しかったでしょうね」
きっと、過去に何か想いがあるのだろうと感じ、そっとしておこうとした時、
「オバケって、こんな感じ?」
ペリルが話に参加したので、皆が一斉にそちらに振り向くと……
「ペリル!何してるの!」
チャコちゃんは叫びながら、ガタガタっと椅子ごと後ろに下がり、
「ぎゃー!!何コレ!」
瑠璃はパニックになり、ソージュに掴まる。
「なんでこんなところにレイスが?!」
ソージュは瑠璃を抱えたまま、腰にある剣に手を伸ばし、即座に構えた。
「ソージュ様、俺です!ちゃんと、本物とは見分けてください!!」
なんと『レイス』がペリルの声で喋っていた。
私を咄嗟に後ろに庇ったケルナーが腕を下げると、
「ペリル様の変身でしたか……」
ケルナーが落ち着いた声でそう言い、皆が慌てたせいで乱れてしまったテーブルの上を、サッと整えた。
「ソージュ様、さすがに抜刀は酷いですよ」
ペリルは魔法を解除して、通常の姿に戻した。
「レイスって、半透明なのね?初めて見たけど、魔物は本当にいるのよね……再現できるなんて、やっぱり魔法ってすごいわね」
私はちょっと、魔物に興味が湧いてしまった。
「お母さん、よかったら今度、一緒に魔族の国に行かない?」
瑠璃は、ワクワクしながら、私のことを見てきた。
「そうね、休みをいつ取るか考えておくわ」
娘と一緒に旅ができるなら、魔族だろうが地獄だろうが、喜んで付き合おう。
「うーん、現実に魔物がいるなら、仮装パーティは難しいかもしれないわね」
瑠璃は、少し残念そうにしていた。
「仮装にこだわらなければ、いいじゃない。食べ物でグロテスクな見た目の物も、私は食べたくないわ」
指の形とか、蜘蛛とか、目玉とか、ちょっと私は遠慮したい。
「あー、確かに、グロテスクな食べ物は、私も無理かもしれない」
チャコちゃんも、同意見のようだ。
「えー、じゃあ残念だけど、ハロウィンパーティーはできないわね」
瑠璃がガッカリした。
瑠璃は昔から、イベントが大好きだったから、小さな頃は、季節ごとに工夫をしていたのを思い出した。
「じゃあ、ハロウィンのカボチャにちなんで、パンプキンパーティーはどう?カボチャのフルコース!」
私はつい、娘の笑顔見たさに、余計なことを言ってしまった。
「えー、いいの?お母さんありがとう!」
跳ねる様に喜ぶ娘は、パーティーメニューが食べたかったのだろう。
——仕込みのために、前日休まなきゃだわ。
「……日程はどうされますか?」
ケルナーは、仕込みから手伝うつもりらしい。
「ハロウィンは10月31日よ。前日に仕込むけど、ケルナーは手伝う時間ある?」
聞かなくても、手伝うのがケルナーだけど……
「とりあえず城に戻り次第、調整しますよ」
ケルナーは嬉しそうに、にこっとした。
「ケルナー、もし長期休暇取れるなら、一緒に魔族の国に遊びに行きましょう。無理かな?」
瑠璃が、ケルナーに珍しく強請っている。
「……検討……いえ、必ず、幸せボケしているシュラーフ様から、確実に手に入れてみせます」
ケルナーは、グッと拳を握り、力強く瑠璃と、長期休暇をとる約束をしていた。
……この人、国王夫妻巻き込んでくるわね。
私は、やる気に満ちたケルナーを見て、軽くため息をつくと、
ハロウィン改め、パンプキンパーティーのメニューを考え始めた。
読みにきて頂き、ありがとうございました!
私が、おかん達に会いたくなり、イベント投稿しちゃいました!
ハロウィン前の話だけど、ハロウィン当日の需要はあるかしら?そもそも、間に合うかしら?
おかんの世界では、こちらと同じく、ジリジリと時間が進んでいます。イベント毎に、変化する事もあるかもしれません。
また、いつかお会いしましょう!




