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7/104

―興味―

フェリア村の周囲には、エルネアの森と呼ばれる広大な森林地帯が広がっている。


薬草を探しに森の外れまで足を運んだその日、

彩子は、いつもと違う静寂に気付いた。


──妙だ。

鳥の鳴き声すら、聞こえない。


慎重に一歩、また一歩と進んだその先。

木立の間から、一人の男が現れた。


長い黒髪。

銀色に光る瞳。

深い闇を纏いながらも、どこか孤高な雰囲気を持つ存在。


(……魔族?)


直感で分かった。

相手がただ者ではないことも。


男は、彩子を見ると、わずかに首を傾げた。


「──人間、か。……妙な気配を纏っているな」


その声は低く、落ち着いていたが、わずかに興味を含んでいた。


彩子は、気を張りながらも冷静に男を見つめ返した。


「あなたも……普通の存在じゃないわね」


魔族か、人間か。

それを超えて、相手が持つ"何か"に、彩子は気づいていた。


男──リュシアン=ヴァルゼイルは、ふっと小さく笑った。


「この辺りの人間は、我らを見れば震え上がるものだが……

お前は、違うようだな」


「命に、種族の違いはないと思っているから」


彩子は、飾らない言葉で答えた。

それは自分自身を貫いてきた信条だった。


リュシアンは、その言葉にわずかに目を細めた。


「……奇妙な人間だ」


言いながら、彼は背を向けた。

だが、その歩みを止めず、静かに言葉を落とす。


「──覚えておこう。

アヤ、と呼ばれる存在を」


(……名前、言ってないのに)


彩子は驚いたが、問いかける間もなく、

リュシアンは森の奥へと消えていった。


ただ、去り際の銀色の瞳には、確かに"興味"の光が宿っていた。


彩子はしばらくその場に佇んでいた。


胸の奥に、小さなざわめきが生まれていた。


──何か、大きな運命の端緒に触れた気がする。


そんな、言葉にならない予感だけを胸に。


そして、この後──

彩子は森で傷ついた少年と出会うことになる。

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