5章
数日後、今日も今日とてゲームをしている。
あれ以来仕事が減ってしまった。まだしばらくは課金をしても大丈夫な額を貯金しているが、そろそろ心もとないかもしれない。
今はタワーディフェンスゲームをプレイしている。
考えてみれば僕が仕事を始めたきっかけとなったのもこのゲームか。
もしあそこでこのゲームをしてなければ、お知らせを無視していれば、山田に連絡してなければ、今の僕はいないと断言できる。
「ありがとうな…」
感謝の意を込めてそうつぶやくと画面の中のキャラクターが「なにしてるだち~?」と問いかけてきた。しまった。つい考え事をして放置してしまった。
すると次の瞬間――
ピーンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
親が出てくれるだろうと思っていたが思い返してみると仕事から帰ってすぐに車のエンジンをかけた音が聞こえた気がする。買い物にでも行ったのだろうか?
今までの僕なら居留守を使っていたがもう僕は仕事をしていて控えめに言って社会人だ。
勇気を出して玄関の扉を開ける。そこに立っていたのは…
青い服を着たお兄さんたち――もといお巡りさんがいた。
「こんにちは~。春野嵐士くんかな?すこしお話聞かせてもらっていいかな?」
バタン!思わず扉を閉めてしまった。
恐る恐るドアを開けてなんでしょうと問いかけてみる。
「あ、ごめんね。最近、事件で検査したしたところに君の指紋があってね。話を聞かせてくれるかい?水色のビニール袋なんだけど…」
その言葉を頼りに記憶を探ってみる。いや、探す必要なんてない。
タケさん…。
その時、フラッシュバックのようにチャットに送られてきた文面を思い出した。
『ちけ^_^ほ』とは『にげろ』ではないか…?
タケさんが急いで打ち間違えたとしたら納得がいく。
「わかりました。ちょっと待っててください」
そう言ってドアをいったん閉めると必要そうなものを集めた。財布とスマホと…家族に手紙も書いておくか。
あらかた準備を終えると僕はドアスコープから外の状況を確認した。
その姿はまるでMwah!としているようだ。
お巡りさんがよそ見をしているタイミングを見計らって勢いよく飛び出る。お巡りさんがおい!と声をかける。
すれ違いざまに「逃げるんだよォ!」と言ってやった。
山田に連絡を取りたいがさっきから音信不通状態だ。
今日はネカフェとかで止まるしかないかもな。