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NoWHere ToGo  作者: 遍雨
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3章

 翌週、僕はオフ会のために駅まで来ていた。

「あの、山田だよピースピース☆彡さん…ですか?」

「ん?おお、♰刃♰くん?」

「あ、すみません人違いでした」

 まってまって冗談冗談といいながらうざったらしい野郎が近づいてきた。

「ごめんて。君は干場っちくんであってる?」

「そうですよ山田さん」

 ちなみに干場っちというのは今の僕のアカウント名だ。

 少し間をおいた後思い出したかのように「ああ」と反応する山田。

「とりあえず、シャレオツなカフェーでも行くかい?それともサイゼリアの方がいい?」

 金欠と話していたからか安くてうまいと定評のあるサイゼリアを提案してきた。案外気を使える人なんだな。

「ちなみに金欠の干場くんには俺が奢ってやろう!じゃあほら、サイゼリア行くぞ」

 何気なくサイゼリアに向かおうとした山田の肩をつかんでカフェに向き合わせる。

「それじゃあ、いきましょっか!シャレオツなカフェ!」

 山田は少し…いや、かなり嫌そうな顔をしていた。


「じゃあ改めて、干場っちです。ちなみに苗字は干場じゃないで~す!」

 山田は少し驚いたような顔をする。

「本名は干場 刃だとばかり思っていたよ」

 満面の笑みでいじってきたから机の下でこっそり足を踏んづけてやる」

「ちなみに俺もアカウント名は山田だよピースピース☆彡だけど苗字は山田じゃないぞ」

 今度は僕が驚く番だった。

「ええ!じゃあ名前が山田なんですか…」

 思いっきり憐みの目を向けると山田(仮)が「ちげぇしその目を向けるんじゃねえ!」と机の下で足を蹴り上げやがった。

 しばらく机の下で蹴りあっていたが店員さんがお冷を持ってきたので急いでやめてなかよさそうにふるまう。

「で、バイトの斡旋してくれるってこの前言ってたじゃん。あれ、なんかいいの持ってこれた?それとも見栄でも張ったの~?」

 それを待っていたかのようにどこからかパネルを取り出す山田。

「では紹介していきましょう!今回エントリーしたバイトの総数は何と十を超えます!しかし厳正な審査の結果3つまで絞りましたのでそこからお選びください」

「ちゃんと準備してきたんだ。意外だな…おいそのドヤ顔やめろお冷ぶっかけんぞ」

 その言葉が聞こえないかのように山田はその顔のままバイトを紹介していく。

「まずはエントリーナンバー1番!コンビニバイト選手!時給は低め、労働時間多め!ストレス多めの3点のハッピーなセットとなっております!」

 なるほど。メンタルよわよわの僕にはつらい仕事内容だな。ハイ次ィッ!

「学生の苦難を助けてきたのはこの仕事!ぅえんっとりーなんばー2番!新聞配達!」

 確かになんとなく学生でもやっているイメージがある。あとなんで陣で内な感じの説明の仕方なんだ?

「ちなみに労働時間は朝と夕の2回!高校生はバイクの免許を取ることができますが今のお年齢は?」

「いま?今は15だけど…」

「なんと16歳未満の方限定!自転車か走りで新聞の配達をしていただけます!」

「パスで」

 いやだ!この自堕落引きこもり生活の果てに手に入れた体は実質吸血鬼とミジンコのハーフ!朝に弱く、体力がない!

「ではこちらで最後の方となります!エントリーナンバー3番!配達業!ただしただの配達業ではございません!完全に個人性の配達となります!」

 個人性とな?

「要するに普通の郵便は民営だからどうしても上の人の給料の割合が多いのさ。でも個人性の郵便なら金額全部を自分のものにできるんだ!それに普通の郵便は結構送れないものも多いんだよね。そういうのを送りたい人にうってつけなんよ」

「ふーん。結構よさそうだね。でも仕事は自分で取りにいかないとなんでしょ?」

 そういうと山田は待ってましたと言わんばかりの顔をして高らかに宣言した。

「お任せ下さい!仕事はこちらで紹介いたしましょう!」

 その声の大きさに周りの客や店員さんがジロッとみてくる。その冷ややかな視線に「あ、いや、なんでもないです」と言って首をすくめた。

「視線が冷たすぎてお前にお冷かけられたかと思ったわ」

「伏線回収⁉誰がうまいこと言えと」

 一息ついて山田が聞いてくる。

「で、よさそうなのあった?」

「うーん今のところだと配達が一番よさげだけど…。ちなみに厳正な審査に落とされたバイトっていうのは?」

 山田は手帳を取り出してチラリと見て言った。

「そうだねえ…。夜道で猫を探すバイトとか、マグロ漁船で行う長期バイトとか?」

「なんでそんな怪しげな奴なんだよ…。ていうか夜道で猫を探すバイトってこの前ツイッターで流れてきたぞ⁉」

「うわwもう時代はXなんだけど?いまだにツイッターとか言ってんの?懐古厨?」

「ほんとにぶんなぐってやろうか」

 山田はヤダ~こんなオシャレなカフェで物騒なこと言わないでちょうだいよぉ~とクネクネしながら言ってきた。

「まぁ、配達のバイト、しようかな」

「はいよ。まかせんしゃい!じゃあまずはこの人に仕事もらってるから、早速行ってきな~」


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