第4話 血のりまみれの関西生まれ
テスト中なので少し文量は少なめです。
賞に応募するやつもあるので、また、文量が少なくなるかもしれません。
それでも更新はしていきたいと思います。
第四話
「お、男ぉ⁉」
「うっ……ぐすっ……ふぐっ……」
ヘルメットの中から泣き声が聞こえる。
「あ、あーあーあー! す、すまん! ごめんなさい!」
え、えっと……どうしたらええんやろ。東京きてからの初めての友達を泣かせてしまった!
それにしても……男⁉あんな、天使みたいなかわっいい声、女子やと思うやろ!顔も見えへんしなぁ。
でも……友達を泣かせてしまってはあかん!よくない!あたし道に反する!
「ほんまにごめん!」
あたしが手を合わせて謝ると、
「うわあああん!」
と、さらに大きな声で泣き出した。
「どうしよ……」
あたしはハンカチをポケットから取り出してワタワタしながら差し出した。だけども無視。うむむ……ほんまにどうしよ。
あたしがあわあわしてると急に、ウィーン……と宇宙服から音がした。
「ん?わ、わわわわわわわっ!」
ヘルメットがもうすぐで爆発しそうな感じで光り始める。
「なんやなんや、何が起こるんや⁉怖い怖い!もうちょいで爆発する光り方やんそれ!」
「ずどーーん!」
「あわーーーーー!」
うずくまって頭隠さな!
……?
あれ?今の「ずどーーん!」って音、可愛い声やったぞ?
「ぷはははは!おもしろお前!」
「は、え?」
顔をあげてみると泣いていない綺麗な顔が……あれ?
「うっそぴょ~ん!嘘泣きでしたー!ばーか。くそったれ!」
「え、え、え……?」
「関西弁なんてしゃべりやがってあほらし」
……は?
なんや……?どういうことや?
あーもう何からなにまでわからん!全部つっこんでまえ!
「嘘泣きってお前、なんかキャラちゃうやんけ!そんな感じやなかったやろ!さっきまで!なんかもうびっくりしすぎやわ!お前が男ってことにもめっちゃ驚いてるのに、急に意地悪になるってどういうことや!あと、なんでヘルメットのシールドが開いてるのか分からんけど、それにも驚いてるぞ、あたし。すっごい美人さんやんけ!ほんまに妖精かと見間違えるぐらい可愛いぞ!顔も声も!でも男子なん?もう分からへんねんけど!今、あたしの頭こんがらがりすぎて大変なことになってるぞ。ほんま!」
と一気にまくしたてる。
はぁ……いつも通りツッコミしてたら、ちょっと落ち着いたぞ。
「なぁ、なんで嘘泣きなんかしたん?」
「……可愛い?可愛いって言ったね今」
だめやこいつ。話通じひん。
それにしてもなんでやろ。急に誰かに人格を乗っ取られたみたいに喋り方も雰囲気も変わったぞ。
ヘルメットで隠されてた顔の方が輝いてた気いするけどな……?
今はめっちゃ天使みたいな可愛い顔で、悪魔みたいな暗い顔をしている。
可愛い顔が見えるのに、ヘルメットで隠れていたときの明るさはない。いや、人を馬鹿にした嘲りと悲しみと恨みが混ざったような、妙な明るさだけはある。
目の中に暗いなにかを秘めてるかのような……。
「嫌いだ。大っ嫌いだ。そうやって、こいつの事を女呼ばわりしやがって!」
「こいつ?」
すると宇宙はポケットからさっきの果物ナイフを取り出した。憎悪に満ちた可愛い顔でこちらを睨む。
「は? ちょ……やめえよ。ほんまにそれはダメやからな」
ナイフが気味悪くぬらりと輝いた。
やばいやつや。これはやばい状況や。人生トップクラスの大ピンチかもしれん。
「あ、あ…」
怖くて床にへなへなと座り込む。もう無理や。怖くて動けへん。
「死ね」
宇宙があたしの胸にナイフを突き刺す。
「うわあああ!」
ナイフが刺さったとこから赤い液体がドバっと出る。
血が……終わった死ぬんや……あたし。さよなら、おかあ、おとう。みんな……。
ん?
……あれ痛くない。なんでや。
「あれ、生きてる」
「ぷはははは!ばーかばーか!これは柔らかナイフだ!」
そう言って血が付いたナイフをグニグニ曲げる。
「で、でも、あたしの血ついてるやんか!」
「ぷ!ぷぷぷぷ!これ血だと思ってんの!やっぱお前おもしろ!これはケチャップだよばーか!ケチャップを水と混ぜた特性血のりを詰めた袋を割っただけ。あほじゃん。ぷはははは!」
「あ、あ……おまえ……まじ……」
必死に怒りを抑える。
多分なんかしらの事情があるんや。こんなことおかしいんやもん。完全にさっきの宇宙じゃない。
こんなに暗く悲しく恨みを持って人を馬鹿にして笑う人を初めて見た。うん。絶対にこれはさっきの宇宙とは違う明るさや。
「じゃあね!さいなら、関西女。二度と女なんてこいつに向かって言うんじゃねえぞ」
そういって宇宙が立ち去ってゆく。あたしはぽかんとして取り残される。
え、もうわけわからへん。なんでこんなことになってんの?どういうことや。
……
途中で宇宙が立ち止まり、振り返って可愛い顔でこう言った。
「あー、あと、その服に付いた血のり、なかなか落ちないぞ。ぷっはっはっは!」
いったんぽかんとしたあたしだったが、すぐ怒りがわいてきた。
「おまえ!宇宙!なんなんや一体!あと、この服、高かったんやぞ!」
腰が抜けて立てないあたしがめいっぱい大きな声で叫ぶ。廊下に取り残されたあたしはとっても惨めな気持ちになった。宇宙が見えなくなって数分。
我に返ったあたしは、
「血のりまみれの腰ぬけて廊下で座り込んだ金髪少女(関西生まれ)。か……はぁ………どうしよ。ほんまに」
と天井を仰ぎ、呟いた。
読んでくれてありがとうございます!
時間があればぜひ、短編のほうも読んでくれると嬉しいです!