第1話:異世界召喚…のはずが、そこは迷宮図書館!?
「待って、危ないってば…!」
私――名前はヒカリ。ごく普通の大学生( のはず )が、突然トラックに轢かれそうになった女の子を庇ったところまでは記憶にある。
……が、次に目を覚ましたら、そこは病院の白い天井ではなく、見慣れない薄暗い空間だった。
床に手をつき起き上がると、埃まみれの空気と、古い紙とインクの匂いが鼻をつく。高い天井まで続く巨大な書架が迷路のように並び、まるでファンタジー世界の図書館に迷い込んだみたい。
「ここは…どこ?」
目を凝らして周囲を見渡すが、人の気配はまるでない。あるのは、朽ちた机と大量の古めかしい書物だけ。しかも書かれているのは、見たことのない文字ばかり。
(…まさか、私、異世界に来ちゃったの?)
最近流行りの“異世界転生”とか“勇者召喚”とか、そんなイベントに巻き込まれたのかも…!? と、ちょっとだけテンションが上がった。しかし現実は甘くない。あたりに魔法陣やら誰かの姿やらは全く見当たらず、ただ大量の本があるのみ。
「もしもしー!? …誰かいませんかー!?」
静寂。返事はない。と、その時、書架の奥からかすかに光が漏れていることに気がついた。引き寄せられるように近づくと、そこには妙に豪華な革表紙の本が鎮座していた。
他の書物とは明らかに違うオーラを放つその本のタイトルを見て、私は思わず首を傾げる。
「迷宮図書館のSEO攻略:禁断のアルゴリズム…? なんじゃこりゃ」
私の“異世界ライフ”の始まりは、どうやら思った以上に地味かもしれない。