解散
「本日をもって勇者パーティを解散とする」
私の頭は真っ白になった。戦士のグラントは気難しい顔をして腕を組んで下を向いている。疑問が次々と湧き上がって膨らんでいく。
「ねぇ、なんで」
私、グラント、勇者に囲まれているテーブルを叩いて勇者のことを睨みつけた。勇者カナタは私に睨み返してきたので、少しだけすごんだ。
いつだってこうだ。いつも自分だけで解決しようともがいて、苦しんで、そして今崩壊した。解散の話だって私は一度だって聞いてない。グラントは様子から推測するに事前に相談されていたのかもしれない。確かにパーティで一番の年長者だから相談するのは分かるけど、少しくらいは私に話てもいいじゃない。不満が爆発する。
「まあ、落ち着けシャルロッテ。カナタも考えに考えた末の苦渋の決断なんだ」
グラントはカナタの肩を持って、私のことをたしなめる。
嘘に決まっている。カナタは最後の最後で失態を犯した。魔王のことを仕留め損ねて、僧侶を殺してしまった。かろうじて生き延びた私達は国内では魔王に大きな痛手を負わせたとして称賛された。
戦士が攻撃を引き受けて、魔法使いが敵の動きを制限させて、僧侶がサポート、そこまでは順調だった。勿論パーティの皆はカナタのことを責めなかった。むしろ慰めた。
だけどカナタは負い目を感じたまま、パーティの活動に度々欠席するようになった。確かにカナタはパーティで一番若いから、メンタルが不安定になるのが多いのかもしれない。勇者の才能を持ったただの青年だ。
だけどこんな幕引きは無責任だ。悲しすぎる。私だって勇者パーティで役に立つために研鑽を積んだのに……。
それから、グラントは軍人として活躍しているらしい。勇者は何をやっているかも知らない。いや、知りたくもない。
街灯が淡く灯っている光に一匹のコウモリが照らされた。コウモリは空中を遊泳して私の方に近づいて血を吸おうと小さな牙を剝いた。
やった、吸血コウモリを発見した。あとは近くにあるはずの群れを探し出すだけだ。私は一匹一匹丁寧にコウモリを焼き払いどこから発生しているのかを辿った。
そして、ひどく懐かしい後ろ姿を見つけた。私の目が狂ったのかと思った。自らの命を勇者に託したはずの僧侶がいた。
私は拘束魔法を逃げられないように準備して一歩一歩射程圏内に入るまで忍び寄る。
「ねえ、何であなたがいるの、スペルク」
私は魔法を発動させて、その名を呼ぶ。どうして、ここで魔物を解き放っているんだろう。そして、何で生きているんだろう