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懐柔

 いよいよ、魔物の根城に辿り着いたのだが、ここからはミカエラの協力が必須となっている。それは、普通に戦えばコウモリに返り討ちに遭って、仮に退治できたとて魔王に背いたこととなり身体が木っ端微塵になってしまう。

「はぁ、また面倒なことを……」

 ミカエラは溜息をついて愚痴をこぼすが、煙幕魔法を発動してくれる。辺りには黒い靄が現れて、俺達の視界を奪っていく。同行してきた男は魔物の仕業だと考えて、情報に無い行動に慌てふためいている。

 しかし、懸念点が一つだけあった。視力を失った元軍人、彼は腰に携えた剣を強く握りしめて気配を探っている。魔力の発生源がミカエラであるためカモフラージュはされているが時間の問題だ。いくら俺が暗視の魔法を施されているとは言っても身体能力は何も変化していないため、暗殺することも不可能だ。

 人の血の匂いを嗅ぎ分けてコウモリが襲い掛かってくる。間もなく煙幕は引いていき、大勢のコウモリにたかられている俺の様子が現れる。流石に分が悪いと考えたのか他の皆は撤退の判断を下す。

「それでいつまで俺は吸血をされ続けねばならないんだ」

 人がいなくなるのを見計らって、ミカエラにそんなことを尋ねた。ミカエラ考案の狸寝入り戦法が功を奏した。ただ、頭がクラクラして貧血気味になるのがネックだ。

「さあ、全盛期の四天王の形態に戻るまで吸わせてあげたら」

 ミカエラがぶっきらぼうにアドバイスをくれる。勿論そんなの不可能だ。干からびてしまう。

「こっからが契約の本番だからね」

 コウモリと交渉を結ぶ、前が吸血鬼であったからできる作戦だ。肝心の交渉の部分は魔物の声の分かるミカエラ頼りだが、俺は奴らにとっても有益な条件を持ってきたつもりだ。

 コウモリを俺が隠れて飼育する、それが俺の提示する条件だ。人間の町に違和感なく入り込めることのできる俺の立場を利用して、定期的に都市で新鮮な血を吸うことを保証させる。血を吸う時間を取れない場合は俺の血で我慢してもらうことになるが、狭くてジメジメした洞窟で窮屈に暮らすよりかはよっぽど魅力的な生活のはずだ。

「ふぅ、話の分かる相手で助かったよ。無事交渉成立」

 ミカエラはVサインをこっちに向けてきた。ひとまずは落ち着いた。俺は鳥かごを開いて、コウモリをそれに入れる。コウモリはサイズをさせたり、二体が一体に合体したりと不思議な動きを見せていた。これにて一件落着、俺と村と吸血鬼の三方よしの結果におさまった。

 村に戻ると村民全てが俺のことを気味悪がった。自らの力を過信して魔物に挑んで見事死亡した愚か者という印象を持たれていて心外だった。

「あそこからコウモリの大群を一掃できたとはにわかには信じ難いことだが、何かしら実力を隠していたという訳か。はっきり言って、お前の疑いが晴れていないが何か礼はいるか」

 長老までもが俺に怪訝な視線を送ってきた。経験の深さから分かることもあるのだろう。俺は、礼として王国への地図と長老の知り合いの住所を貰って村を出発した。

 これでいざという時にコウモリの大群を解き放つことで臨戦することができるようになったわけだ。少しずつ、都市侵攻の作戦は進んでいる。

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