堕天使の理由
「で何でついてきて来てるんだ?もう俺は僧侶の役割を果たせない。とっとと女神様の所にでも戻ってやったらどうだ」
あんなにからかわれてきつく当たってしまう。もうミカエラなんか適当にあしらって後は一人で旅をしようか。口だけ達者で聖職魔法も使えない天使なんか放っておこう。
「えっと~、その~、なんていうか~」
ミカエラはさっきまでの勢いは何処へやら、途端にきまり悪く話し始める。顔をかいて、目線があっちこっち行ったり来たりしている。
「多分、私女神様に見捨てられちゃった。てへっ」
「はぁっ」
思わず大声で突っ込んでしまった。到底「てへっ」じゃ相殺できない事実が今明かされた。ミカエラは恥ずかしそうにもじもじしているが、現状は思った以上に深刻だ。
魔王との最終決戦でも全てが順調に進んでいった。四天皇を一体一体倒していき、コツコツと実力を伸ばし、あっさりと魔王のもとに辿り着いた。
勇者パーティの誰ひとり油断していなかった筈だった。いや、油断していなかったと思いたい。
「これで終わりだ」
勇者は光り輝く大ぶりな剣を振りかざす。戦士が相手の攻撃を受け、僧侶がサポートし、魔法使いが相手の動きを妨害して作り出した隙に勇者がとどめをさす。誰もが正義の勝利だと思った。勇者の顔には爽やかな笑みが溢れていた。
「危ない!!」
突然勇者の前に僧侶が飛び出した。いきなり僧侶は転移魔法を勇者たちにかける。サポーターの役割上常に冷静さ保っていた僧侶の焦った表情をその時が最初で最後だった。
「えっ」
その時、僧侶以外には何が起こったか分からなかった。急に、僧侶は視界遮断、鈍足、麻痺、毒数え切れないほどの魔法がかかって悶えて大声を上げた。聖職魔法の使い手が状態異常に苦しんでいるその様子は現実のものとは思えなかった。
「今すぐにそこから撤退しなさい。もう彼はダメです。これ以上そこにいるとあなたにも影響が及びます。」
ミカエラは女神から撤退命令を出されていた。それは、僧侶スペルクに生き残る可能性はないと女神に判断された瞬間だった。
「女神様!!そんなのあんまりです。あんなに女神様を信仰して、慈悲深い御方なのに……。私はここに残ります。最後まで僧侶様、スペルク様に尽くします!!」
ミカエラはたとえ自分がどうなろうともスペルクのことを必死に守り抜いた。それが、女神の命令に背くことになったとしても……。ただ、結果僧侶は死んだ。
「で今は女神様に反抗して気まずいから俺についているというわけか。でも、ただいじってくるだけだからな~」
「ひどい、こんな感動のストーリーを話したのに!!」
ミカエラは涙を浮かべながら上目遣いで見つめてくる。だが俺は知っている、これは演技だ。だから俺はそんなの無視して歩を進める。
「あ~あ、本当にいいの?私がいると闇魔法をた~っくさん使えるのに」
ミカエラが挑発的に話しかけてくる。あれっ、さっきの涙はどこにいったんだ?あと、闇魔法を使えるとか堕天使通り越してもはや悪魔じゃん。
「まあ、ミカエラと一緒でもいい気がしてきたな~」
わざとらしく演技をする。こいつに頭を垂れて一緒に来て下さいなんて言うのが癪だからだ。
「素直になればいいのに。あと闇魔法は魔王の魔法くらい過ぎて魔法が変異したのかも?まあ、スペルク様の体に乗り移れたことに感謝しなさい」
ミカエラにちょっかいをかけられていた時、すすり泣く声が聞こえた。声から察するに子供の年齢だと思われる。
「あそこの方だと思うよ~」
これには流石のミカエラも人助けに協力的だ。まあ、腐っても天使というわけか。
数分してフィーレという名の女の子を見つけた。フィーレは薬草をとりに行っている時はぐれて村に帰れなくなったそうだ。しかし、もう日は沈みかけている。今から帰っても村に到着できないだろう。
「今日はもう遅いし野宿しないか」
なんかミカエラがニヤニヤしながら見てくる。視界の片隅にいるだけでも主張が激しいし鬱陶しい。
「いや~まさかそんなに大胆だったなんて」
「いちいちうるさい!」
ミカエラの絡みに嫌気がさして強い口調で言ったが、フィーレが体を震わせた。
「ごめん、ごめん。こいつがうるさくて」
しかし、フィーレはまだ俺に怯えている。いや、むしろさらに警戒されたかもしれない。一体何が起こったんだ?
「あーそういえば私は君以外には見えないよ(笑)」
お、お前狙ってるだろ。って、今俺はいきなり怒鳴って、その後急に優しくなってイマジナリーフレンドを紹介している奴ってことかよ。
「まあ、やろうと思えば実体を出したり、大人の姿になったりできるけどこの状態が一番消費魔力少ないしね。まあ、精々頑張ってね~」
というわけで第一印象最悪で俺たちの野宿が始まった。
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