仲間集め
俺は号外を見て戦慄した。街中で若い男が声高々に号外を配っているのを何気なく俺は受け取って後悔した。それは受け取ったことではなく今までの軽率な行動についてだ。
魔王軍の新四天王はかつて勇者パーティの僧侶
目を惹く効果的な色使いで書かれている。途端に周囲に注目されている気がして衣類で顔を覆った。むしろ、それで注意を引いたかもしれない。
「四天王を配置することで魔王城を相対的に安全にするらしいよ」
俺の表情と対照的に嬉嬉として話してくる。なんでこの状況を面白がれるんだ。そして、なんで魔王はミカエラに話して俺には言わなかったんだ。
「まあ所詮は魔王の捨て駒のうちの一つってことだから」
近頃はミカエラにからかわれることに慣れて日常となってしまった。むしろ、からかわれないと物足りなさを感じるようになった。って、まずいこいつは……。
俺は恐る恐るミカエラの方を見る。満面の笑みである。腹立たしいほどの笑顔である。楽し気に空中をゆらゆらと浮遊している。
「ふぅん、そうなんだ」
全くの不覚だ。そもそも心読むなんてズルすぎる。プライバシーもへったくれもない。
「でも、この能力でシャルロット戦で勝つことができたんだし。いざという時の連携に重要だよ」
確かにそうなのかもしれない。いや、騙されるな、俺はミカエラの心を読めないじゃないか。ミカエラの悪戯に笑って誤魔化した。
後日、魔王からは連絡不備について軽く謝罪された。
俺は今住まわせてもらっている道具屋まで引き返して、本日限りでここを出ていく旨を報告した。一階に店、二階に住居があって食事も出るので結構気に入っていたのだが残念だ。
俺は階段を上がって自室の散らかった生活用品をかき集めて、リュックに詰め込んだ。出来ればチップでも置いていきたかったが、生憎今はお金が足りない。魔王軍が世界征服した暁には魔王に店主を良い役職につけるように要求するだけで満足してもらおう。
「本当に大丈夫かい、困ったことがあるなら話聞くよ」
代々この店を継いできてもう身体にガタがくるのに、後継者がいない店主には申し訳ないがもうここにはいられないのだ。俺はただ大丈夫です、とだけ言った。
身元も分からない俺のことを雇ってくれた店主には頭が上がらない。その優しさに甘えた挙句突然消えるなんて恩知らずだが、いつか恩は返したい。俺は最後に少し高価な吸血コウモリ用にケージを買って店を後にした。
路頭に迷った俺は冒険者ギルドの前まで来ていた。しかし、俺には正体を明かすことができないため冒険者登録すらできない。
「よお、ここが始めてなのか。案内してやるよ」
筋骨隆々の男に声をかけられて肩を震わせる。もちろん、正体がばれたのかと思っただけだ。
「あの、冒険者登録を済ませなくても任務を行うことはできますか」
「ん、まあやろうことにはできるが怪我をしたときに自己責任になるからお勧めしない」
男は首を傾げながら丁寧に説明してくれた。俺達は建物内に入って、壁に貼られているポスターを眺めた。お尋ね者とかの場合身柄を確保してギルドまたは治安維持組織に持ち込むことで登録せずとも報酬をもらえるらしい。俺はひらめいた。
ハイパー、身長は普通で瘦せ型の男性、ここらで悪さをしている盗賊の長
こいつなんか丁度良いだろうか。
「おお、こいつか俺もついていってやるよ。よく出現する場所があるから教えてやる」
この男の名前はマグナというらしい。役職は戦士でこのギルドでは一、二位を争うほど強いそうだ。
その場には既に十人ほどいて全員同じ獲物を狙っている。ただ俺は報酬以外の目的がある。ハイパーという盗賊の仲間になって寝る場所を確保することだ。都市の城門前に俺達は張り込んでいる。
そのため、ターゲットは俺でも勝てそうな弱い奴でる必要があった。ハイパーの説明には逃げ足が速く捕まえるのが困難だと書かれていた。まさに最適な人選といえるだろう。
「だっさ、そしてせっこ」
ミカエラが呆れるように蔑むように強い口調で言ってきた。その言葉を背に俺は獲物が現れるのを虎視眈々と待ち続けた。
「そろそろ日も暮れる、帰るか」
マグナがそう言った時だった。ハイパーが現れた。




