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魔法使いvs僧侶

 俺が王国について一ヵ月ほど経った頃、いつものごとく吸血コウモリに食事を摂らせていたのだが背後から声をかけられた。

「誰の事でしょうか」

 俺は落ち着いた調子で振り返って声の主を確認した。しかし、その存在を認識する時には俺は身動きを制限されてしまう。杖と魔法帽子など身にまとっているもの全てが上質な素材だった。ただの魔法使いが持っていていい代物ではない。

 相当な手練れか金持ちの令嬢かのどちらかだ。そして、高貴な身分の者はこの時間帯に外に出ることなどない。犯罪件数が昼の数倍もある夜中に。

「あんたとぼけるのもいい加減にしなさい。生きているなら、何で私達に連絡を寄越さなかったのよ」

 あぁ、そうかこいつは勇者御一行の魔法使いか。生前の僧侶が死ぬ直前に見た光景の中にこいつもいたことを思い出した。僅かにこの身体に残った僧侶の記憶を辿ってみる。名前は確か……。

「シャルロットよ、魔法の腕は王国内随一だから、私の闇魔法もどこまで通用するかあやしい」

 ミカエラが耳打ちをしてくれた。情報通りだとしたらこれは絶体絶命なのかもしれない。

「きっと人違いですよ」

 必死に弁明するが焼石に水だろう。煙幕をここら一帯に充満させたとしても、拘束魔法のせいで意味をなさない。

「じゃあ、魔物を都市ばらまいている罪で問答無用で殺すわよ」

 魔法使いの手の平には高出力の魔法が溜まっていっている。あんなの喰らったら即死に決まっている。ここは一度僧侶であることを認めて、隙を突いて逃走でもするか。

 それから飲み屋連れていかれて、愚痴をたんまりと聞いた。拘束魔法は人に見られないように透化させることが可能らしい。全く便利な魔法だ。

 俺はなるべくシャルロッテの気分を良くさせて酔わせることに徹した。しかし、酔えば酔うほどにシャルロッテは饒舌になっていつまでも話が終わらない。勇者パーティのいざこざなんて興味ないし、勇者パーティーに戻るなんてもってのほかだ。ただ、生前の記憶の補完ができたことが唯一の成果だった。

「それで、何で犯罪行為をしていたの」

 シャルロッテの声は低く重くなって、眼光は俺のことを貫く。そう簡単に逃げることはできないか。ミカエラにアイコンタクトを取って、拘束魔法の解除方法を編み出したことを確認する。流石堕天使なだけある。人と繋がり(物理)を引きちぎることも朝飯前だ。

「ここじゃ人目がある、外で話す」

 俺たちは最初に出会った場所に戻って、対面する。

 拘束魔法は一定距離離れた時に、具現化されて二人の距離を固定化させる。目に見えないステルス状態では触れることもできないため解除することができない。まず、シャルロッテから離れて具現化させてから、それ以上の強度の魔力をぶつけて壊すシンプルな作戦だ。シャルロッテは最初こそ警戒して魔法の強度を高めていたが、酔っぱらったり、俺を攻撃能力のない僧侶だと話すうちに油断したりと強度はミカエラが壊すことのできる程度には落ちているらしい。

 俺はダッシュで離れる。ピーンと糸が張るように魔法が見えるようになってミカエラがそれを破壊する。シャルロッテは呆気にとられていたが、少しして戦闘態勢に移行する。奇襲はうまく成功したがここからが本番だ。

 俺が振り切ろうと逃げたところで徒労に終わる。魔法使いが飛行魔法で距離を急速に詰めてくる。定期的にミカエラが援護をしているが状況は改善しない。

「ねえ、何で逃げるの。あなたは一番神様への信仰心も深くて悪事を許せない性格だったじゃない」

 シャルロッテは訳が分からないようで問い詰める。しかし、手は緩めずに俺のことを攻め立てる。間一髪のところで回避をするがいつまでこれが続くのか分からない。

「あなたがいなかったせいで、カナタはどれだけ追い詰められていたか考えたことある」

 張りつめていた気持ちが緩んだように、感情を露わにして話し続ける。夜の闇で顔は見えないが泣いているのかもしれない。先ほどよりも強く、激しく自らの想いをぶつけるように魔法が俺に襲い掛かる。

「あっ、」

 背後から迫る火の玉に気付くのが遅れた。その炎は近づくにつれて大きくなって50㎝くらいのサイズになった。もう何もできない。

 シャルロットの顔にも驚きを見て取れた。決して殺すつもりなんてなかったのだろう。勇者パーティから勝手に消えた非情な仲間を説得しようと熱くなりすぎただけだった。驚きから絶望の色に顔が染まっていく。

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