1.フランパート【1】
アレックスとナタリーを見送ると、フランはひとつ息をついた。
「……行こうか」
誰にでもなく呟いて、見取り図を片手に東館へ向かう。これだけ荒廃した屋敷だと言うのに、一般的にイメージする蜘蛛の巣がほとんどない。蜘蛛が苦手なフランとしてはありがたかった。何に対する感謝なのかはよくわからないが。
◇東館[書斎]
書斎のドアは重厚な上に蝶番が錆びついている。フランの腕力では敵わず、思い切り体重をかけて開けることになった。
「……かなり傷んでいるな……。見た限り、ほとんどの荷物をそのままにして引っ越して行ったみたいだ。一刻も早くこの屋敷から出たかった……ということかな」
本棚の本はほとんど背表紙が日焼けして、埃によって薄汚れているため不潔な印象だ。手がかりとなる本があるかもしれないが、できれば触りたくない。
「確かに嫌な空気ではあるが……。まあ、調査してみよう」
【調査開始】
《 フランが気になった箇所に印がつきます。
Eキーで調べてみましょう 》
*電話*
フラン
「…………」
*本棚*
[本棚1]
経営学の本が並んでいる。
[本棚2]
自己啓発本が並んでいる。
[本棚3]
オカルト雑誌が並んでいる。
[本棚4]
様々な図鑑が並んでいる。
[本棚5]
いかがわしい本が隠されている。
[本棚6]
民俗学の本が並んでいる。
[本棚7]
様々な物語の本が並んでいる。
[本棚8]
フラン
「……これは……家族写真、かな。
主人のフォルテオ・パーシーさんと、奥さん……か。若い頃の写真みたいだな……。
赤ん坊の写真が2枚ある。それぞれ違う子のようだな……たぶん。まあ、普通に考えて子どもがふたりいるのだろう。着せられている服は女の子用に見える。
……書斎で得られる情報は限られているな。アレックスは当てにならないし、ナタリーが何か一家の情報を得ているといいんだが……」
*チェスト*
フラン
「……特に何もないな」
*机の上*
フラン
「……散らかっているな。
これは……手紙、かな。子どもが父親に宛てた手紙のようだ。
パパへ……ドロシーより……。
『今日ね、リサがお喋りしたんだよ。パパ大好きって。ママのことも大好きだって』
可愛い子どもの手紙まで置いて行ってしまったのか……。よほど、この屋敷から離れたかったと見える。何があったのだろうか……。
……これは……探偵事務所?
……。……要約すると、この屋敷のことを調査したが、何もわからなかった……ということだな。
……何を調査したのだろうか」
*カレンダー*
フラン
「10年前のカレンダーだ……が、表紙しかない。他のページは切り取られた形跡があるな」
フランはもう一度、ぐるりと部屋の中を見回す。歩き回って物に触れていたせいで鼻が痒くなったが、窓を開けるとより埃が舞って大惨事になることは間違いない。ここは堪えるしかなさそうだ。
「……これ以上は、何も情報はなさそうだ。特に有力な情報はなかったな……。他にも部屋がありそうだったな」
見取り図によると、もうひとつ奥に別の部屋があるようだ。他の部屋も気になるが、二階はアレックス、西館はナタリーが調べているはず。心配する必要はないだろう。
◇東館[広間]
見取り図を見た限りでは、リビングスペースは台所の近くにあるらしい。広間にはテレビと向かい合わせのソファがあり、部屋の一角には暖炉がある。くつろぐための部屋のようだ。
「……荒れているな。歩いているうちに床が抜けたりしないかな……」
床は一歩を踏み出すごとにギシッと軋む。こんな埃だらけのところで床が抜けたら、鼻も服も無事では済まないだろう。大声を出すのは得意ではないため、そうなったとしても十五時にアレックスとナタリーが探しに来るのを期待するしかない。そうならないのが理想的なのだが。
*電話*
フラン
「…………」
*ソファ*
フラン
「……6人くらい座れそうだな。……革だったら、これほどまでに埃が染み込むこともなかっただろう」
*テーブル*
フラン
「……汚い」
*チェスト*
フラン
「……特に何もないな」
*植木鉢*
フラン
「……何が生えていたんだろう」
*棚*
「……趣味の良いティーセットだな。
……ん? ここに何かへこみが……」
カコッ
フラン
「……どこかで何かが動いた音がする」
『キャ――――!』
突如として響き渡った悲鳴に、フランは顔を上げる。
「ナタリーの声だ……!」
弾かれたように広間を転がり出る。尋常でなく埃が舞ったが、この際、気にしている場合ではない。ナタリーは何もなく叫ぶことはない。ナタリーの身に何かが起こったのだ。埃など気にしている場合ではない。たとえ、あとでくしゃみが止まらなくなったとしても。