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優秀な種

作者: 牛さん

 こちらは訳あり商品になりますが、よろしいでしょうか?店員がマニュアル化された確認事項を淡々と聞いてくるのを機械的にはいと答える。訳ありなだけあって安く種を手に入れられた。僕ははやく育ててみたいのだ。この植物を。僕が育てられたように。

 苗に種を植え、育て方の指南書を見ながら養生剤や日の当たる場所に置く。種はすくすくと育っていった。しかし大きさは平均より下、まあこれが訳ありだという理由だろうな。安い水や日光を嫌がりよく日陰で休んでいたことも影響があったのかもしれない。土も悪かったのかも。すべて安いもので揃えたからなー。

 そして実りの時期がやってきた。実はできたものの腐りやすく、味もいまいちだった。その植物はだれからも必要とされなかった。悲しんだ植物は根から体を引っ張りだし、自分の子孫は絶対にいい種にしようと考えた。優秀と評判な種を買った。すごく痛い出費だったが自分と同じような目にはあわせたくない。苗は安く小さいサイズしか買えず他の物品も安くて粗悪品なものばかりになってしまった。しかし種は優秀なのだ。強く成長するに違いない。毎日遠い湧き水から水を汲み、毎日芽がでることを祈りながら声をかけ続けた。

 そして芽がでてきて言葉を教え、もの覚えのいい我が子といろんな話をした。早くお前が実る姿が見たい。立派な果実を作って、幸せになるんだぞ。そんな会話をよく交わしていた。

 実りの時期がきても芽生えた植物は一向に成長せず小さいままだった。なんだこれは、粗悪なものをつかまされた!騙された!と怒った。

「お前は悪くない売った売人が悪いのだ。この悪行を証明するためにもお前のその姿が必要なのだ。だからお前はその姿でいいのだ。悪行を止める救世主になれるんだ」

そう親は子どもを励ました。

 そこで偶然通りがかった教育家にびっくりされた。「この苗では植物は育つことは不可能なはずです。なにせ土台となる苗が余りにも小さく、根を生やして栄養を吸収できないからです。この環境で芽を出すなんてすごく優秀な種ですね」と言って去っていった。

残された親と子はなにも喋らなかった。

そして、気がつくと子は「今まで育ててくれてありがとう」と言った。親はなにかの言葉をかけようとしたが言葉が見つからなかった。

子はまた土の中に戻るように枯れていき、喋らなくなった。

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