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63.王子side

 結果としては、私はぺーゼロット公爵令嬢と婚約する事は無かった。


 内々に決まっていた婚約に待ったがかかったのだ。

 これは嗤える話だが、私と娘の結婚に拘っていた宰相が反対意見を述べたのだ。


『この未曽有の危機に際して王族同士の結束が必要です』


 そう言い、宰相は大公家の令嬢との婚姻を進めてきた。



 何が王族同士の結束だ!!

 よりにもよって大公家の娘と結婚だと?!

 大公家が王位を狙っている事は私でも知っている!!

 そんな家の娘と結婚すると?!

 とんでもない!!!



 父上も顔を顰めた。

 それでも宰相の意見を覆す事はしなかった。いや、できなかった。この頃、父上はベッドから起き上がる事が困難な状態にあった。何故か父上の強大な魔力が突如枯渇したからだ。



『大公家の御令嬢は()()()()()()()()()()だということです。王家の権威を高めるためにも宜しいかと』



 あれは悪魔の囁きだった。

 父上も光魔法の言葉に気持ちがぐらついた。

 大公はいい歳だが子沢山だ。恐らく孫娘の誰かが光魔法の持ち主なのだろう。その時はそう思っていた。きっと父上も同じだった筈だ。まさか、大公の実娘との婚約など誰が思うか!!!

 


 しかも何だ?あの娘は?

 まともにマナーを学んでいないのではないのか!?

 本当に大公の娘なのか?詐称しているのではないのか?


 それほど酷かった。


 確かに美しい少女だ。

 金髪に金の目。


 だが、美しい少女など貴族階級には掃いて捨てるほどいる。


 こんな知性の欠片もない優雅さなど無縁のような女を妻にしろというのか?



『さ、宰相……彼女は本当に大公の息女なのか?……その……随分と若いのだが……』


 ベッドから起き上がれるようになり、大公家の娘との面会に応じた父上であったが流石に無作法すぎる女に疑問を持ったようだった。無理もない。


『はい。今まで市井で暮らしていたらしく少々マナーに問題はありますがそれはおいおい覚えていくとの事です。貴族階級の事にも疎いため殿下が色々と教えて差し上げるのもよろしいのではないでしょうか。婚約者同士ですし、将来の妻を導くのも夫の務めかと愚行致します』

 

『そ、そうか……』


 父上も引き攣りながら笑みを浮かべていた。

 私はただただ呆れ果てるばかりだった。

 これが次期国王になる予定の男の妻となれるか?……答えはNOだ。

 しかも何だ?

 この女を導いていけだと?

 冗談ではない!


 何が「素朴な少女を一流の女性に成長させるのは男のロマンと言いますから」だ。

 そんなバカな話があるか!!!



 王家にとって好ましくない婚約者である。

 それでも大公家と宰相のゴリ押しで、粗野な大公女との婚約が決まった。



 



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