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31.公爵の部下side

 困った事になった。

 いや、そんな言葉では言い表せない事態だ。


「伯爵、宰相閣下は例の計画を実行されるのだろうか?」


「そうでしょうな」


 私の問いに即答した伯爵だったが、その声色はどこか不安そうだ。それも無理はない事だろう。何せこの計画が成功しなければ王家どころか国そのものが危機に晒されるのだ。それこそ失敗したら、などと考えるだけでも恐ろしい事になる。


「なにしろ宰相閣下が乗り気なのですからな。止められる者はいない」


 伯爵の言葉通り、宰相の計画は実行に向けて急速に進められていた。もちろんそれは計画の中心人物達の意志は全く考慮されていないが。むしろ邪魔をされないように秘密裏に行動していた。


「あの宰相閣下が陛下に何も言わずに独断で進めている計画。上手くいくのだろうか?」


「それは心配あるまい。今の陛下に宰相閣下を止める事などできないのだからな。それに……大公家が計画の中止など許さないだろう」


「大公家……そうですね。彼らが計画の中心ですからね」


「ああ、まさか宰相閣下が陛下を見限られるとは思いもしなかった」


 伯爵の声色がより一層暗く沈んだものに変わっていく。それは私も同様だった。


「あれほど国王陛下に忠義を尽くされていた方が、こうまで変わるのかと思うと正直言って恐ろしいです」


「まったくだ。人とはああも変わるものなのかと思わされるよ。だが、宰相閣下にとっては国王陛下に起こった出来事はそれほどまでに衝撃的だったのだろう。恥ずかしい話だが私も少なからず動揺してしまったからな。人の事をとやかくは言えないのだが……まさか……まさか陛下の魔力が枯渇するなんて……想像もしなかった」


 魔力枯渇。それが現在の王国の最大の問題であった。そしてそれは王家だけの問題ではない。場合によっては国家存亡の危機すらあり得る。それほどまでに国王陛下における魔法の存在は絶対なのだ。


 今は未だ混乱は起きていない。

 王領における結界も宮廷魔術師達が総力を挙げて取り掛かったので民衆はおろか貴族にすらバレてはいない。あれほど迅速な対応を取れたのは宰相の危機管理能力の高さを物語っていた。


 だからこそ解せない。


 私だけではない。

 閣下の部下達も驚きを隠せなかった。

 あれほど王家に、国王陛下の危機に対応した宰相閣下が大公派に寝返るとは――



 夢にも思わなかった。


 それはきっと陛下も同じだろう。

 忠臣に裏切られるなど。

 しかも王太子時代から苦楽を共にした信頼する家臣に。


 宰相閣下は王家と言うよりは国王陛下個人に忠義を尽くしていた。

 結婚相手も陛下のために公爵家に婿入りしたようなものだ。家庭を顧みず陛下に尽くし続けた年月を思えばあり得ない事だろう。



 誰もが考えつかない事態。

 

 それは多くの者の運命を変えたのである。

 

 



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