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百合好きが百合に目覚める話  作者: 焔摩下広鬼
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出会い

pixivで投稿したものを再掲した話です。

 とある本屋。

 そこでユキとりりかは出会った。

 秋葉原にある大型書店の百合コーナーだった。

 買うものは決まっていた。

 その目的の百合漫画は棚に平積みされていたのですぐに見つかった。

 それをユキは手に取ろうとして、誰かの手と重なった。

「あ、ごめんなさい」

「いえ、こちらこそ」

 目の前のその人に視線を向けると凄い美人がいた。

 大学生くらいだろうか。

 黒髪ロングストレートで綺麗な瞳、整った顔だち、豊かに膨らんだ胸、すらりとしたウェストや長い脚などモデルと言われても信じてしまいそうな美女がだった。

 ユキは百合好きだがノーマルのつもりだ。しかし、そんな彼女からしても一目惚れしてしまいそうな美人だった。

「まるで百合漫画みたいね」

 美女がそんなことを言った。

 そこは普通少女漫画みたいね、とかではなかろうか。

 こんな台詞が出てて来る時点で彼女も百合オタクなのかもしれない。

「百合好きなんですか?」

「好きじゃなかったら百合コーナーに来ないとも思うけど」

「確かにそうですね。愚問でした」

 りりかの言葉にユキが答える。

「ねえ、どんな作品読むの?」

「うーん、基本どんなのでも読めますけど、友情系が特に好きです」

「へえ、友情系なんだ。わたしは恋愛系。わたしも基本なんでも大丈夫かな。18禁なのも大丈夫」

「私は18禁なのはちょっと……」

「そうなの?」

「はい、なんか百合って感じしないんですよね」

「あ、なるほど、そいうこと」

「別にエッチなのが苦手とかそういうんじゃないですよ」

 百合というコンテンツは結構人によってカテゴライズの仕方がわかれるジャンルなので同じ百合ファンでも解釈が変わることことがある。

 ユキは百合以外のコンテンツでも好きな作品は多いが、18禁自体に抵抗はない。しかし、百合に関しては綺麗さが重視というのがユキのスタンスで、生々しいのは好きじゃないのだ。だからといってセックスシーンが全般にダメというわけでもない。モザイクがかかるような作品は苦手である。

「あなた、名前は?」

「ユキです」

「話あいそうだし、連絡先交換しない?」

「喜んで」

 美女とユキはQRコードで読み取ってline交換した。

 ユキのスマホに「りりか」という名前の垢が表示された。

「りりかさんですか」

「うん、よろしくね」

 それからユキとりりかの交友が始まった。

 その時ユキはりりかがまさか自分と同じ高校生で同い年だなんて思いもしなかった。


 ある日の放課後。

 ユキはりりかと約束していて落ち合う予定だった。りりかと約束して会うのはこれが初めてである。

 集合場所は通っている学校の最寄駅の近くにある喫茶店だった。

 ユキは自転車通学なので自転車でその場所に向かう。

 目的地に到着し、店の前にある駐輪場に自転車を止める。ちなみに駐輪場は無料だ。

 lineを確認するとりりかから中で既に待ってるという内容のメッセージが来ていた。

 中に入り、りりかを探すが中々見つからない。


 line


「どこですか?」(ユキ)

「もうみえてる」(りりか)


 あたりを見まわすがりりからしき人は見当たらない。

 困惑していると誰かに肩を掴まれた。

 驚いて振り返るとりりかがいた。

 だがそのりりかは制服を着ていた。

 黒いセーラー服と膝下にかかるかかからないかくらいの長さのスカートは清楚な雰囲気があった。

 ユキは驚愕していた。

「まさか高校生だったなんて思ってませんでした」

「よく間違われるのよね、何故か知らないけど」

 ユキの言葉にりりかは本気で言ってるのか冗談で言ってるのかわからない感じで答える。

「ねえ、ユキは何年?」

「二年です」

「同学年じゃない、タメ語でいいわよ」

「そ、そうだったんだ。わかった、そうする」

「何月生まれ?」

「二月」

「へえ、わたしの方が年下だわ。わたし三月」

「え!?」

 ユキは再び驚いた。

 まさかユキの方が年上だと思わなかったのである。

「お姉ちゃんって呼んでいい?」

 りりかが悪戯ぽく微笑む。

「いやよ」

「即答ね、じゃあお姉様は?」

「うぐっ」

 百合好きとしてその響きはユキにとって来るものがあった。

 しかし、ギリギリで思い止まる。

「駄目よ、普通に呼んで」

「ユキ」

「よろしい」

 ユキが仁王みたいに片手を腰に当てて言った。

「ふふ」

「なによ」

「いや、あなた結構面白いわね」

「馬鹿にしてる?」

「そんなつもりはないわ」

「ならいいけど……」

「なんにせよこんなとこで立ち話もなんだし、席に向かいましょ」

 ユキが席がある方を指して言った。

 二人は通路で話していたので、このままここで話すのは他の客の邪魔になってしまうかもしれない。

「おっけー」

 ユキがりりかの提案に答えた。


「……」

 りりかは席に着いてから、暫く何も発さず真顔でユキを見ていた。

「なに?」

「うん、なんでもないよ」

「いや気になるんだけど」

「いや、ユキって可愛いなって思っただけ」

「そ、そう、ありがと」

 ユキも女子だ。可愛いと言われて嬉しくないはずがない。というか普通に嬉しかった。だが真正面から真顔で黒髪ロングの超絶美人にそんなことを言われると心臓に悪い。

「そういえば言ってかなんだけど、ユキって呼んでいい?」

「今更ね。別にいいわよ、そんくらい。そのかわり私もりりかって呼ばせてもらうから。というか今さらといえば私たちお互いの本名知らないのだけど」

 ユキとりりかはお互いlineの垢を交換して以来ずっとlineのユーザーアカウントで呼び合っていたのでいまだにお互いの本名を知らなかった。

「そういえばそうね。なんていうの本名?」

「遠藤よ。したの名前のユキは本名。読みも一緒よ」

「わたしもだいたい一緒かな。苗字は藤堂。下の名前はlineと一緒よ。ただわたしの場合はりりかの部分が漢字表記なんだけどね」

「そうなの。なんて書くの?」

「ちょっと待って」

 そう言ってりりかはスマホで何やら打ち込む。

「line確認してみて」

 りりかの言うとおりユキはlineを確認する。

 りりかの垢を開くと「梨々花」と漢字で送信されていた。

「なるほど」

「そういえばわたしたちどっちも藤原氏の末裔ね」

「なにそれ?」

「知らない?」

「歴史の話?」

「そう」

「私歴史あんま詳しくないし」

「『藤』の字がつく苗字は藤原氏の末裔らしいよ」

「ということは私たちは遠い親戚みたいな感じね」

「そうね、お姉様」

「やめて」

「そう言って結構まんざらでもないでしょ」

「そんなことないし」

 りりかの言葉にユキは否定する。しかし、反対にユキのその表情は赤く紅潮し、説得力にかけていた。


「このあと本屋行くんでしょ?」

「うん」

 このあとユキとりりかは電車に乗って秋葉原まで百合作品を求めて行く予定だった。


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