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赤城家のあれこれ

とてもとても、お久しぶりです。

 ・・・・・・ピピピ———ピピピ———カチッ。


 「・・・・・・はぁ」


 あの熱中症?から翌日、安静にするとかいう大義名分で昼寝をましまくった結果、夕飯から目覚ましが鳴り響くこの時間まで眼球カッ開いたまま覚醒が止むことを知らなかった。

 まあ要するに寝れなかった。


 夜更かしって最初はテンションが上がるのに、日の出が近くなるにつれて後悔するくらい眠くなる。

 昼寝って本当に良くない。


 「おはよう・・・・・・」

 「あら、おはよう・・・アンタ大丈夫?なんかやつれてない?」

 「病み上がりだからな・・・朝飯食えば元気になるよ」


 あらそう・・・と半信半疑な声を漏らすお袋を他所に、制服のワイシャツにネクタイを締めた。

 登校の準備にはまだ少し早いが、何かしら動いていないと寝そうになる。今の状態で仮眠を取ろうものなら、間違いなく重役出勤を強いられることは言うまでもない。

 仮眠なんてねえんだよ。


 「ふぁ・・・・・・おはよ・・・」

 「あら、今日朝練の日だっけ?」

 「ううん・・・課外授業・・・・・・」


 こっちまで眠っちまいそうな声を出すこの女の名前は、赤城夏海あかぎなつみ。赤城家の次女かつ二つ下の妹。

 現在中学三年で、高校受験の天王山に差し掛かる手前、思春期を拗らせている。因みに姉妹の名前はどういうわけか柑橘類に統一されているのは言うまでもない。

 子供の名前で遊ぶんじゃないよまったく。


 「慎也シン・・・これ参考書、ありがとね」

 「ああ、持ってていいよ。もう使わないし」

 「あ、そう?じゃあ貰うね」


 思春期と言えど兄妹仲は然程険悪でもない。

 一番ヤバいのは姉貴と両親。ここ最近顔を合わせる度に口喧嘩してる。

 というのも、皆があんまり妹を可愛がるばかりか、その反動で仲が拗れてしまった。


 「今日暑いわよ?送っていこうか?」

 「別にいいよ、小学生じゃないんだし」

 「そう言って、また体調崩したら本番で何が起こるか———」

 「———うるっさいなもう!放っておいてよ!」


 ほらこれだ。先月貧血で倒れたもんだから、過保護に拍車が掛かって余計に埒が開かない。

 たった一言二言の会話で怒号が飛ぶのなんてザラにある。


 因みに俺の時は送り迎えなんて話すら出てこなかったからね。露骨に突き放されるのも良い気持ちはしないぞ。


 「・・・学校なんて大した距離じゃないんだから大丈夫だろ。何なら俺が一緒に行くから。それに今日パートだろ?」

 「そうだけど・・・いいの?任せちゃって」

 「早く起きたせいで時間は余裕だから気にすんな・・・・・・それと学校関係の事は夏海ナツの口から話すまではそっとしておけ。最近ストレスでロクな会話できてないだろ」

 「でも、あの子ったら言われないとやらないし・・・・・・」

 「ああいうのは言われると反発するから逆効果なんだよ。細かいのは俺が言っておくから、とにかく逆鱗に触れるのだけは勘弁してくれ」

 「あぁ、そう・・・・・・?」


 一応、本人には聞かれないようにボソッと伝えた。

 毎度こうしてなだめてはいるものの、実際のところ効果はあまり感じられない。

 心配性なんだか知らんが、何回言ってもその場凌ぎにしかならない。


 こんなやり取りをほぼ毎日していくうちに、当の夏海ナツは家の中に拠り所を失くしかけていた。

 そんな中、当人の思春期事情に大して興味がなかった事を良く思ったのか、ただ静観していただけの俺とはここ最近よく会話をしてくれる。お陰で元から悪くなかった仲がより濃くなった。


 そんなこんなで、今では他の家族とは喋らない日がちょいちょいある。


 以上、朝飯ついでの説明終わり。


 「ごちそうさま、それじゃ行ってくる」

 「はーい、いってらっしゃい。気をつけてね」


 リビング出ただけでも蒸し暑いなクソ。昨夜雨が降ったもんだから、玄関から既に湿ってやがる。


 学校までの距離はおよそ徒歩十分程度。

 年々と上昇の一途を辿る平均気温をこうして肌で感じていれば、親の心配する気持ちも分からなくはない。


 朝のやり取りから、気持ちの落ち着き所が定まらない様子の夏海。到着まで残り半分という距離まで歩いたところで、ようやく口が開いた。


 「ありがとね、さっきお母さんに色々言ってくれたんでしょ?」

 「ん?ああ、別にいいよ。過保護が三人もいる家なんかしんどいだろ」

 「普通にウザい。ウチももう中三だよ?なのに色々言ってきて、もう鬱陶しくてしょうがない」

 「突っぱねたら余計に面倒だしな。高校入ったら少しは落ち着くだろうから、もうちょい辛抱しろ。俺も手伝うし」

 「神。なんで彼女できないの?」

 「放っておけ。ほれ着いたぞ」


 他愛もない会話をしていると、夏海の通う学校に到着した。


 「夏海ちゃん!おはよー!」

 「あ、おはよ!じゃあ行ってくる」

 「あいよ」


 家じゃ基本的に仏頂面だが、学校だと案外明るいらしい。

 まあ大概こんなもんか。友達に会えば多少のゴタゴタくらいどうでも良くなる。


 さて、コンビニでエナドリでも買って、のんびり登校するかな。

お久しぶりです、水川です。


前回の投稿から数年経ったこの春に改めて再開しようと思い、今回執筆に至りました。


というのも、実は休止中に作品の構成や展開など諸々練っておりまして、実は先々のお話も書いていたりするのですが、どうしても本筋が進まない事には僕のデータ容量だけを圧迫してしまう一方なので、えいっという気持ちで投稿させていただきました。


できれば納得のいく結末を迎えるまでは書き続けたい一心ですので、長らくお付き合いくだされば、光栄です。

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