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化け猫と信じない君【それでもうちの配達物は変である】

あたりは薄暗くなり始め、俺がいつも登下校時に通っているこの商店街もぼちぼち街灯がつき始めていた。

 今日は一週間の苦労が報われる祝福の金曜日だ。


「はぁ・・・やっと一週間が終わった。でもなぁ、まぁた月曜数学の小テストだぁ・・・小テストっていうけど内容が小じゃねぇんだよな。

 俺勉強するの嫌いだし!」


 ぶつぶつと独り言をつぶやきながら俺は商店街を今年で3年になる愛車の自転車を押して歩いていた。

 その時の表情は苦からの解放と未来への不満を混ぜたような感じの表情だった。

 簡単にいうなら無表情、無感情に近いものだろう。

 そんなかんじで足を進めていると何やらいい匂いがしてきた。


「・・・肉屋コバチか、久しぶりになにか買って帰るか。家で俺が作るのも大変だし・・・」


 俺の家庭には諸事情があり、中二の妹宮野玲みやのれいと衣食住を共にしている。

 妹は基本家事はまったくせず、すべて俺任せだ。しかし、妹と一度肉じゃが対決をしたときはレベル差が大きく惨敗だった。


「おじさん、今日のおすすめ何かある?」


「おう!しずき君じゃないか!いらっしゃい!」


 このあごひげ面の黒ぶちメガネの中年体系のおっちゃんは、この肉屋コバチの店長である。

 たしか商店街の人からは「肉屋のコバさん」と言われ親しまれている。


「さっき、メンチカツ揚げたからよ、これ持っていきな!できたてアツアツだからよ」


 注文もしていないのにおっちゃんは四つ包んでくれた。

 俺はしかたねぇかと代金を払おうとレジ横に代金を置いた時、おっちゃんが俺の顔をじっと見ていた。


「なんだよおっちゃん。俺の顔に何かついているのか?」


「しずき君、君・・・・」

「顔いろ悪いよ。大丈夫か、まるで死んだ幽霊みたいだな」


「幽霊はもう死んでいるし、俺は幽霊でもねぇ。まだピチピチの十代だ」


「はは、こんだけ口が利けるなら死なねぇか。まぁ顔色からして疲れているのはまちがい・・ないな?」


「なぜ疑問形なんだよ。まぁ疲れているのは事実だ。心配してくれてありがとう」


 俺は嫌味気に言い代金を払い袋に入ったメンチカツをとって自転車にまたがり漕ぎ出した。

 商店街を抜けると分かれ道が出てくる。いつもならこの道を右に帰るが今日は左から少し遠回りして帰ろうと思った。

 薄暗いなか自転車をこいでいるとあたりに緑が多くなってきた。

 思っていたより遠回りだったため俺は一休みしようと近くの神社の椅子で座って休憩していた。

 すると生暖かい風が吹いてきた。


「風が出てきた・・・夕立でも降るのか?あ、洗濯物出しっぱなしだ。」


 俺は急いで自転車にのり、家に最短距離で自転車を進めた。

 そんな急いで自転車をこいでいる少年を神社の屋根からこっそりと見守る影があった。





 俺は急いでマンションのチャリ置き場に自転車を止めて、三階までの階段を上り洗濯物を取り込んだ。

 そして朝食の洗い物を済ませたころ、夕立が降ってきた。


「こりゃあ、早く帰ってきて正解だったな」


 俺はチャリでの疲れをいやすためにソファに寝ころびスマホを見ていた。

(ピンポーン・・・)インターホンが鳴った。

 俺はだるそうにインターホンに出た。「はい・・・宮野です」


「白猫宅急便でーーーす。ご注文された商品を配達しに来ました」


 俺は自分が何か商品を注文したか思い当たるふちがなかった。

 俺はまた玲が無断で買った漫画かと思って少し腹を立てながらドアを開けた。

 ドアを開けたそこには背丈が190㎝ほどある深く帽子をかぶった配達員が冷蔵庫並みの大きさの段ボールをもって立って

 いた。

 配達員が段ボールを床に置き、何かポケットの中を探している。

 俺はこの時床に置かれた段ボールを見て不思議なことに気が付いた。

(宛先が書かかれていない・・・?)


「すみません。たぶんこれうちのじゃないです。」


 しかし配達員は俺の声が聞こえていないのだろう。ボールペンを差し出してきた。

 小さな声でぼそぼそと


「・・・・ここにサインを・・・・」


 俺はこの配達員のただならぬ気迫に負け、サインしてしまった。


「・・・・ありがとうございました・・・」


 配達員は帰っていった。


「はぁーーー、これ絶対変なの買わせれたよ。もうーーー」


 俺は膝に手をついてため息をついた。


「しかたねぇ、とりあえず中に入れるか・・」

「うわ!重っ!何が入っているんだこれ」


 俺は玄関まで引っ張って入れた。


「とりあえず中身確認するか・・・」


 俺はカッターでガムテープを切り、箱を開けた。


「さてと何がはいっているのか・・・・な?」


 そこには見てはいけないものが入っていた。

(おいおい、ちょっとまてこれ)

 俺はもう一度中身を確認した。

(人形じゃねぇ・・・よな)

 そのとき箱の中身の奴が動いた。

 いや動いたというより転がったと言った方がいいのか。俺は目の前の状況が呑み込めなかった。

(おいおい、これ他人がみたらこれ誘拐じゃねぇか!どうすんだよこいつ!!!)

 中に入っていたのは背丈が中学生、いや小学生くらいの金髪の少女だった。

 俺はこれからこいつをどうするか焦っていた。

(交番に迷子ですって届ける?いやいや、なんて説明すればいいんだ。箱をあけたらこの子がいました?無理無理!絶対信じてくれない)

 俺はその場でぐるぐる回り頭をフル回転させていた。

 そしてある事を思いついた。

(見なかったことにしよう。運がいいことにこの少女も目覚めていないことだしこのまま児童施設の前に置くか・・・)

 そんな人間として最低な考えに陥った俺だったがそれは数秒で儚く消えた。

 少女が急にむくっと起き上がったのである。


「み・・・・ず・・・水がほしい」


 俺は健気な少女の言葉に言われるがままに冷蔵庫から2リットルペットボトルのおいしい天然水を差し出した。


「はい・・これ」


 少女は水を見ると勢いよく俺から水を奪い取りゴクゴクと飲み始めた。


「うっうっうっぷふぁーーーー!かたじけないのじゃあ。おかげで生き返った」


 その少女の口ぶりは体系からは想像つかない老人口調だった。

 (それにさっきまでの健気な少女を返せよ。まるでおっさんじゃねぇか。)

「どうしたんじゃ、人間。そんなに童の方を見つめて」


「いや、なんでもない。水、気に入ってくれてんならいいんだ」


 俺はペットボトルをかたずけにキッチンに戻った。

 背後から足音が聞こえる。


「あのう、なんで後ろをぴったりとついてくるんですか?」


「なんじゃだめなのか?」


「いや、だってここ俺の家なんだけど・・・」


 すると少女は俺の言葉を無視してリビングの方へ走っていった。


「おおお!なんじゃこれは!」


 少女はつけっぱなしにしていたテレビを見て興奮していた。


「なんじゃ、この板のようなものは絵が動いておるぞ!」


(なんだこいつ、テレビ見たことないのか?)


 すると少女はテレビに流れた映像を追うようにペタペタ画面を触り始めた。


「おいやめろ。汚れる!」


 俺は急いで少女をテレビから引き離し、リビングのソファに座らせた。


「いいか、ここでおとなしく待ってろ」


 少女はコクリとうなずいた。

 俺はコップにオレンジジュースを入れ、菓子を何個か戸棚からだしお盆にのせリビングに運んだ。

 

 「くかああああああああああああ。」

 少女はソファでいびきをかきながら寝ていた。

 俺はほっぺたをつついたがおきる気配がなかった。

 起こすのをあきらめ自然に自分から起きるまで待つことにした。 

 俺は持ってきたお盆を机に置き俺はせんべいの袋を開けた。

 すると少女はいきなり起き上がりこっちをむいた。


「な、なんだよ。そんなにこっちを見るなよ」

 

 少女はずっと一転凝視でこっちを見ている。

(なぜ俺を見ているんだ?)

 俺はせんべいを口にほおりこんだ。


 少女は物欲しそうな声を漏らした。

 俺はこのとき確信した。


「せんべい食うか?」


 少女は勢いよく首を縦に振った。

 袋からせんべいをとりだし、まじまじと見ている。


(なんだろな少し可愛い・・・・)


 ぱりっ、せんべいのいい音がリビングに響き渡る。

 少女はとてもおいしそうにせんべいを食べている。


(なんだろな、こういうのをみるとすごくほっこりするんだよな)


 少女は新しい袋を開けて口にいれた。


「うっ!!!!!!!」


 急に顔色が悪くなり少女の様子がおかしくなった。

 そして次の瞬間・・・・・


「ペッ!!!」


 少女は先ほど口に入れた菓子を吐き出した。


「なんじゃこれは!お前さんさては童に毒をもったな!」


 少女は俺をものすごく睨んだ。

 

「何言ってるんだ。そんなわけないだろ?」

 

 俺も少女がさきほど食べた菓子を食べた。


「なんだマカダミアナッツのチョコレートじゃないか。普通においしいぞ」


「お、お前さんこんなのよく食べれるな。信じられん!」


「はは苦いの苦手か?そんなに心配しなくても死なねぇよ」


「いや童はこれを食べたら絶対に死ぬ!ぜっっっっっったいに食べたら死んでしまう!!」


「大げさだな、チョコ食べて死ぬのは猫ぐらいだぞ」

 

 少女は再びせんべいを食べ始めた。

 するとさきほどとは違う落ち着いた表情で独り言のように言った。


「あ!そうじゃった。童は・・・・・・・・・猫ぞ」


「はは、猫って嘘つけ」俺は笑ってごまかした。


 せんべいを一口かじって「嘘ではない。童は本当に猫である」


 俺はその言葉につられて「名前は?」と聞いた。


「リーラ・シルビア」


 俺はてっきり「名前はまだない」くらいくるのかと思った。


「で?本当に猫なのか」


「だから童はれっきとした猫種じゃ」


「じゃあ聞くけど猫なら尻尾と猫耳があるはずだ。でもリーラって言ったっけ?見た感じ猫というより人間ぽいけど?」


「ああ、これは人間の世界では違和感しかないと思ったからじゃ」


 そういうと少女はふんっと体に力をこめると髪の毛の金髪より少しだけクリームっぽい色の毛のある猫耳としっぽが少女に生えた。


「これでわかったじゃろ。童はれっきとした猫じゃ。もっと妖気をこめたら完全な猫になれるが、この体の方が何かと便利だからの。まぁ昔は化け猫ともいわれていたのじゃが、今じゃこういう猫耳の生えた娘の事を・・・・・・なんと言ったっけ?」


 少女は思いだせないのか頭を掻いている。そしてやけになったのか、少女はオレンジジュースを一気に飲み干すと、


「おぬし名は?」


「しずきだ。宮野しずき」


 少女いや、リーラ・シルビアは少し微笑むとこう言った。


「しずき殿。童からひとつだけ頼みがあるのじゃが・・・・・・」


「なんだ?頼みって」

 

「童をこの家に住まわせてくれないか」


「え?・・・・・えええええええええええええええええ!?」

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