思い出の欠片【エピローグ】
俺の名前は宮野静樹。
どこにでもいる平凡な高校生だ。
今何しているのかって?
一人さみしく公園でI LOVE SOMMERのロゴが入ったTシャツを着て夏空を眺めながら缶コーヒーを飲んでいるところだ。
俺はいつもこの緑の絵柄の入った缶コーヒーを飲む。
いや、正確に言えばこの缶のコーヒーに思い出があるから無意識にこれを選んでしまうのだろう。
昔、大人ごっこでコーヒーをどれだけ多く飲むことができるか友達と勝負したことを思い出す。
そしてこの後味の苦み。
今でもこの苦みはあの頃の甘いようで苦い思い出を脳裏に鮮烈によみがえらせてくれる。
その話を少しだけ話をしようと思う。以下、これは俺の独り言である。
それは俺がまだ小学校に入学するかしないかぐらいの事だった。
俺には赤ん坊のころからの幼馴染、三条美玖に電話で話があると言われ、学校近くの神社に呼び出され
た。
俺が待ち合わせの場所の賽銭箱前に到着した時そこにはやけに気合の入ったリボンのついた箱を持った美玖がいた。
「おまたせ!」
「遅いよ!もう来てくれないのかと思った」
美玖は少し安心したで顔をしてこっちを向いた。
「本当にごめん!来るの遅くなった」
「いいよ!そんなに謝らなくても。それより・・・」
美玖は少し間をあけてから
「はい!これ!」
美玖は俺の方にさっきの気合の入った箱を俺の方に突き出した。
「え?」
俺は突き出された箱を凝視したまま思考停止していた。
すると美玖は不安そうな顔になり、
「え?シズ君、今日誕生日じゃなかったっけ?」
「そうだけど・・・・え!!これ俺の誕生日プレゼント!?」
俺は今まで女子から誕生日プレゼントをもらったことがなかった。この時は驚き以上に喜びが勝っていた。
「開けてみて!」
俺はゆっくりと丁寧にそのプレゼントを開けた。
「お守り?」
「そう、お守り!」
俺のこの時の心情は喜びもあったがほんの少しだけ微妙な感じがした。
それが顔に出ていたのだろう美玖は
「もう!不満そうな顔して!結構かんがえたんだよ」
「いやいや、別に不満とかじゃなくて単純に嬉しかったからすこし緊張して・・・」
「・・・変なの」
「ありがとう、大切にする」
俺はそのお守りを箱に戻した。
そのとき美玖の方をチラリと見るとやけにもじもじとしていた。
俺は「みーちゃん?どうかしたの?」と問うたが彼女は何も答えずにすこし俺から目線をそらしていた。
俺は話す話題がなくて困っているのだと思い、素直に帰ろうと石段を下り始めた。
そのときだった。
「シズ君!!」
俺はその声で振り返った。
「実はね、もう一つ。プレゼントがあるの。」
「え!もう一つ?二個もくれるの?」
「うん、でもね少し準備があるからうしろ向いててくれる?」
「分かった」
俺は胸を躍らせながら後ろをむいて待っていた。
数秒後、美玖が「いいよ」と答えた。
すると考えてもいなかったことが起こった。
「な!お・・・おい、やめろ!恥ずかしいから」
なんと美玖が俺の胸に抱き着いてきた。
そして彼女は何も言わず、俺を放そうとはしなかった。
そして美玖はゆっくりと口を開いた。
「あのね、私たち今年で六歳になるよね」
「そう・・・だな」
「ねぇ、知ってる?あと十二年たったら何ができると思う?」
俺はこの時、幼いながらも何かを悟っていたのだろう。
しかし俺の答えは「知らない」だった。
「じゃあ、教えてあげる・・・十八歳になったらね・・・」
美玖が話し始めてから彼女の顔に少し恥ずかしさとうれしさが混じり、赤面した。
「大丈夫?顔すごい赤いけど・・・」
「なんでもない、それより私が変な事いっても絶対に笑わないって約束してくれる?」
「分かった!絶対に笑わないし馬鹿にしない。」
すると美玖は俺から手を放し、大きく深呼吸をしてまっすぐな純粋な瞳で、
「将来!・・・・私と・・・・」
結婚してくださーーーーい!!!!!!
(俺は美玖の自分の気持ちをさらけ出した言葉とその勇気にたいしてどのような返事をしたのだろうか?
いや・・・そもそも今でも美玖は俺が転校するまでの事を覚えてくれているのだろうか?
そういえばあれからもう何年も連絡していない。
そんなただの幼馴染を彼女は覚えているのだろうか?
今、俺が言えることはあの日の返事はまだ彼女に伝えることができていないということ・・・・それだけだ。)