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冒険者ゴートの一生  作者: ケバブ
二章
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セカの街の下級冒険者4

組合に着くと、珍しく受付にガイさんが居たのでその列に並ぶ。心なしか他の列より捌けるのが早い。風貌は関係ないことを祈ろう。

程なくして俺の番になるとガイさんが機嫌良さそうに話し出した。


「ゴートやるじゃねえか、早くも指名依頼が来るなんてよ。昨日よっぽど真面目に働いたんだな。労働系の依頼とはいえ指名が入ることは一定の評価に繋がるから良いことだぞ。昨日のうちに今日の分の契約内容のおおよそのところは聞いたと思うが改めて依頼を確認してくれ。一応断る事も出来るぞ。その様子だと受ける気満々みたいだけどな」 


・農作物の積み降ろし 十時から一七時まで 日給一万三千エル 昼食有

 ※指名 九級冒険者 ゴート

 

特に問題がないことを確認して依頼書をガイさんに渡す。


「大丈夫みたいだな。労働系とはいえ記念すべき初指名依頼だ、しっかりやれよ!」


ガイさんに肩を叩かれながら組合を出て依頼場所に向かう。二回目なので特に迷うこともなくすぐに着いた。


「ネルさんおはようございます。今日もよろしくお願いします!」


「ゴート君今日もよろしくね」


挨拶もそこそこに早速作業に移る。作業二日目で慣れたのもあり一切の問題なく進んでいき、あっという間に昼食の時間。昨日と同じ様にネルさんの奥さん特製具沢山スープとパンを皆で輪になって食べる。相変わらず美味しいスープだ。

少し遅れてきたネルさんが輪に入ると少し安心した様子で話し出した。


「このペースで進めば大丈夫そうだ。ゴート君、皆も本当にありがとう。午後もよろしく頼むよ。そうだ、もしよかったらこの串焼きも食べてくれ」


ネルさんの串焼きの差し入れを皆で食べる。鶏肉に塩をふって焼いたシンプルなものだが身が柔らかくてとても美味しい。これは午後の作業にも力が入るぞ。



「皆お疲れ様!一時はどうなることかと思ったけど、なんとかこのピンチを乗り越える事が出来た。今月の給料は期待してくれていいぞ!ゴート君も本当に助かったよ。今回みたいなアクシデントはこれっきりにして欲しい所ではあるけど、また何かあったらよろしく頼むよ。」


午後の作業も小休止をとりつつ順調に進んだ。四時を過ぎる頃には遂に終わりが見えてきた。みんなの顔にも笑顔が浮かんでいる。

最後の積み荷を乗せた馬車が無事出発したのを皆で見届けたのち、ご機嫌のネルさんから完了証明を貰う。


「こちらこそ色々と勉強になりましたから。お疲れ様でした!」


この二日間依頼を出す側の考え方も少し知ることが出来たし、かなりの鍛錬にもなった気がする。思わぬ形での初指名依頼だったけどいい経験になった。


俺は満足して冒険者組合へ戻るのだった。



-----

久しぶりの修羅場を乗り越えた夜、一人酒を飲みつつこれまでをふりかえる。



うちの商会は親父が行商人として資金を貯め、俺の代で設立した若い商会で、運送業を主として運営している。従業員もそこまで多くはないし、まだまだ駆けだしだが、ここ数年で資産も少しずつ増えてある程度軌道に乗りはじめていた。


そんななかお得意様から芋の運送を依頼され、準備をしていたら先方の手違いで三倍の量が届いた。それ自体も中々大変な事態だがそこまではどうにかなった。ただうちの若いのが急な怪我や病気で働けなくなったのは大きな誤算だった。すぐさま知り合いをあたり何人かは確保したが、如何せん急な話だ。人手が足りるか微妙なところだった。いざとなれば大きな借りを作ることにはなるものの、商業組合に頭を下げる事も考えていた。他にも何か良案はないかと親父に相談すると冒険者組合へ依頼を出すことを勧められた。どんな冒険者が来るかわからないが真面目な冒険者が来てくれれば相当な戦力になるらしく、直ぐに依頼を出した。


翌日依頼を受けて来てくれたのはゴートという少年だった。冒険者というだけあって結構体格もよく少し話してみるととても真面目そうで安心した。これなら戦力になってくれそうだ。予想は良い意味で裏切られた。いざ働き始めると体格以上の力強さと凄まじいスタミナで、1人で相当な量を積み込んでいた。俺は直ぐに次の日指名依頼を頼めないか交渉しようと心に決めた。ゴート君が来てくれるなら多少の出費は安いものだった。次の日も運良く指名依頼を受けてもらうことができ、修羅場はどうにか乗り越える事が出来た。一人の力は限界があるものだがそこは冒険者。うちの従業員とは基準が違うのかもしれないな。



お気に入りの干し肉を噛り酒を飲む。

ふと昔親父に言われたことを思い出す。大きい商会になるには信頼の置ける冒険者の友人が重要だと。当時は実感がわかなかったが、なるほどその通りだと今なら思う。ゴート君はなにか問題が起きない限り、中級までは順調にいくだろう。今度隣町まで護衛を頼むのも良いかもしれないな。そんなことを思いながら、修羅のように働くわりに、話してみると何処にでも居るおのぼりさんな不思議な少年に思いを馳せた。


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