手元の元凶
はい、一応新章
さて、そんなこんなで嵐のように過ぎ去ったその数日後。
これで晴れて俺も平凡な日常だな、と思ったがそうはいかなかった。
なぜなら………。
俺の手元には[そこっ触らないでよっ!]が残っていたからだ。
あれから数日……で言ってもまだ二日しかたっていない。
その間に夢咲は俺に全く話しかけようとしなかった。
俺の手元の原稿用紙は夢咲には必要無いのか?
それとも俺が嫌われたか、もし嫌われていたとしてもあの笑顔はなかなか忘れられるものではない。
それにあんなに頑張って書いた原稿をいくら上手くなかったとはいえ捨てるようには見えない、それ程までにラノベへの情熱を感じた。
俺が嫌いでも我が子のように可愛がっていたラノベを見捨てるのか?
そんな事を一人で考えていてもなんの解決にもならない。
……よし、夢咲に話しかけに行くか。
そう決めて家を出て、そのまましばらくして学校に着くとこの前のように夢咲に話しかける覚悟を決める。
……いや、無理だな。
だってなあ……めっちゃ話しかけづらいじゃん。
あいつ……いわゆるいけてる系(あれ? 死語か?)だぞ、はあ、こっちのメンタルがなぁ……。
……いや覚悟を決めよう……このままじゃ俺のモヤモヤは消えない。
よし……今度こそ、話しかけ——
「なあ悠哉、お前——」
「お前は黙っとけ!」
「酷いなお前は!」
はあ、俺が必死こいて悩んでるってのにこいつは変わんねえな。
「なあ悠哉、お前いつの間に夢咲さんと——」
「それはもう良いだろ!」
「お、キレが……凄いな」
はあ、夢咲の処女事件(クラスの男子からはそう言われてる)はあの後誤解を一応は解いた(もちろん夢咲が隠したがっていたラノベの件は伏せた)のだが……なんかなぁ、
「だから、何度も言っただろ」
「ああ? 夢咲さんとの出会いか?」
思い出したくもないね! ってこんなやつの相手をしてる場合じゃなかった。
「お前今絶対酷いこと考えただろ!」
とにかく今は夢咲に話しかけないとな、[そこっ触らないでよっ!]について、
俺が今度こそと、心を決めたその時——
「おーい、ホームルーム始めるぞー」
担任が乱入してきた……わけだ。
……はあ、酷いタイミングだな。
「えーと、別に今日決めるわけじゃないけど修学旅行がそろそろあるから……行動班を決めといてくれー、合計は五人で内訳はなんでも良い」
……ああ、そろそろ修学旅行か。
「なあ悠哉、同じ班になろうぜ!」
今年は確か……京都だっけ? あれ? 日光か?
「おーい、聞いてるか?」
まあ良いか……出来れば速水さんと同じグループになりたいな。
「あのー、悠哉くん? 北村クーン?」
まあ良いか……今はとにかく……この[そこっ触らないでよっ!]だ。
「聞いてる? 聞こえてないの? ねえ、わざと無視してるのかな⁈」
まあ今日は無理だったが明日の朝こそ、話しかけよう。