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なにかこっかな?  作者: いねっしー
ラノベだったらプロローグ
5/22

[そこっ触らないでよっ!]

でそのままダッシュ!

「夢咲お前、なんて事を!」

 人気のない校舎裏まで夢咲を連れていき俺は問い詰める。

「別にいいじゃない! 私が小説、それもラノベ書いてるってバレなかったわけだし。まあ結果的には、あんたがあたしを犯したって事で丸く………あれ?」

 あ、このバカやっと気づいた。

「私、あなたに犯されたって事になるの? しかも初めてを?」

「そうなるな」

 …………………………………。

 一瞬の静寂が流れる。と思ったのもつかの間

 夢咲の顔が真っ赤になり目元に涙が浮かぶ。


「この変態! エロ! スケベ! 変態! 十二指腸ぶち撒けろ!」

 言ったのお前だろ! という言葉は直後の夢咲の拳にかき消された。

「お前、すぐ、殴りやがって」

 みぞおちを抱えてうずくまる。

「大体お前がバカなことを、」

「うるさい! バカって言ったあんたがバカ!」

 こいつ、ちっとも可愛くねぇ、可愛いのは外見だけかよ。

「こんな美少女を泣かせておいてバカって言う? 普通心配するでしょ!」

 自分で美少女っていう美少女が何処にいる、前言撤回こいつ可愛くねぇ。

「心配して欲しいのかよ?」

「はぁ? そ、そんなこと言ってないでしょ! このバカ!」

 夢咲はキンキン声で怒鳴るのだが……めんどくせー。

「バカバカバカバカうるせーよ!」

さすがの俺でも切れるぞ、これは。

「そ、そんな、ムキにならないでよ………」

 こいつ急に上目遣いなんて、こいつの事は大っ嫌いだがなあ、やっぱり可愛いのは事実だ、

「ぷっ、なーに見惚れちゃってんのよ、これだからドーテーは……」

「お前こそやった事ないだろ!」

 夢咲は顔をさらに赤くして叫ぶ。

「あ、あ、あんた、何言っちゃってんのよ! セクハラ! きもっ! 死ね! 横隔膜破けろ!」

 ちょ、俺はお前のサンドバッグじゃ——

「ぐはっ、お前また殴りやがって……」

 理不尽だ、あまりにも理不尽すぎる!

「そ、そんな事よりも!」

「そ、そんな事? 今お前俺が殴られた事をそんな事って言ったか?」

 これ軽そうだけど一撃一撃めっちゃ重いからな!

 どれくらいかというと油断したら意識が飛ぶくらいだな。はは、朝の卵が出そうだぜ。

「言ったけど? それが?」

 このアマ!

「だからそんな事よりも、その、わ、私のラノベどうだった?」

 落ち着きを取り戻しながら聞かれる。

「ラノベ? なんだそれ?」

 初めて聞く単語に首をかしげる。

「とぼけても無駄よ! 私が立ち去った後もそこにいた事は由花から聞いてんの!」

 え? 速水さんが俺の事?


「地面に寝転がってる変態がいたって」


 どうやら、俺の恋は終わったようだ。

「そ、そう、か」

「え、そ、そんなに凹まないでよ、冗談よ冗談、正確には地面に北村君が倒れてたって、言ってたわ」

「お前! 冗談にも加減というものがあるんだよ! ついていい嘘と、悪い嘘が…」

「ごめん、北村、そんなに落ち込むとは、」

「はあ、別に良いよ」

 しかし夢咲謝れるんだね。すぐに暴力をふるうのにな。

「ってそうじゃなくて、私のラノベ、読んだでしょ! どうだったって聞いてんの!」

「ごめん、ラノベって?」

 俺が読んだのは[そこっ触らないでよっ!]という小説であってラノベというタイトルでは無かったような…………。

「あんたまさか、ラノベ、知らない?」

 へ? ラノベっていう単語があるのか?

「う、うん」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」


 でかいでかい! 声がでかいよ! これじゃあ何のために人気のないところにきたか、

「あんた、男、よね?」

 は?

「見りゃわかるだろ?!」

「なのにラノベを読んでないの? かぁっ! あんた女よ! もはや女よ!」

その理屈はおかしい! わけがわからないよ! なんでそれで俺は女になるのかな?

「ラノベって言うのは、えーと、そうね、アニメ分かる?」

「は? サ○エサンとかド○エモンとかだろ?」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」

 本日二度目!

「あんた、趣味は?」

「ないけど」

「じゃああんた何のために生きてるの?」

 なかなかな質問をするね。

「うーん、特にはないかな?」

「はぁ? あんた、失望したわ、明らかに顔面偏差値平均以下なのに、ラノベを知らなくて趣味もないってあんた………死んだら?」

 こいつ、俺を殺しすぎだろ。というかさらっとひどいこと言ったな。

「まあいいわ、とりあえず簡単に説明すると、ラノベって言うのは中高生むけの小説ってこと」

 ふーん、じゃあ[そこっ触らないでよっ!]もラノベって事か。

 よく考えたら舞がラノベって言ってたきがするけど、

「まあいいわ、やっと聞ける。ねえ? どうだった?」

「えーと、お前の書いたラノベか?」

「うん、それ以外ありえないじゃない」

「[そこっ触らないでよっ!]だよな?」

 夢咲の顔が真っ赤になる。

「そ、そうよ」

「なあ夢咲、感想言う前に聞いていいか?」

「な、何?」

 まあツッコミたい事はいっぱいあるけどまずは、確認を、

「あの中の女の子たち、際どい事ばっかしてたけど、お前はないんだよな?」

「は? 何?」

首を傾げる仕草が少しグッとくる。

「だから、あの子達みたいな事をした…」

 その後の俺の言葉は空気に消えた。

「が、お前、蹴りは、やばいよ、」

 またもみぞおちを抱えうずくまる。

「あ、ああ、あんたがば、バカみたいなことい、言うからでしょ!」

 まあ容赦なく蹴ってきたと言う事は無いのかな?

まあこれでそういう展開はないことは理解した。

「わ、わ、わわ、私が、裸エプロンとか、お風呂でせ、せせ、背中を洗うとか、」

「分かった分かった、理解した、でもそんなに照れてて大丈夫なのか?」

「は、はぁ? な、何が?」

「だからそんなに照れてて書けるのかって言う、」

「あ、そうね、それは、大丈夫なのよね、夜中になると、私、テンションが、その」

 なるほど、じゃあ深夜テンションノリノリマックスであれを書いてるのか。

「で、どうだったの私の初めては?」

「まず、言うからその言い方を止めろ」

俺の言葉は怒りを誘うだけで何の意味を持たない。

「はあ? なんであんたが私に指図してんの? キモっ! これ以上渋るなら由花に…」

「言う言う! 感想を言わせて下さい!」

何をいうか知らんがそれはやめてくれ! 多分ろくなことになんないから!

「うん…」

 うわっ、夢咲こんな顔できたんだ。

 目をキラキラ輝かせてる、そんなにこの作品に思い入れがあるってことかな。

「最後の方で主人公がメインヒロイン的な女の子とくっ付くだろ?」

「うん………」

「あの告白のシーンはめっちゃ良かったシチュエーションもカッコよかったし『俺は最後まで諦めない、泥臭くバカみたいに頑張ってたお前が好きだった! 俺が側に居てやるから! だから簡単に諦めるなよ! 俺はお前が大好きだ!』って主人公の言葉がもう…」

「……………………」

 は? 感想を言って欲しいって言ったのはお前だよな?

 なんで顔真っ赤にして怒って………。

 あれ? 俺は主人公の言葉を言っただけだけど、これ……側からみたら、

「………」

「待った、待った、感想を、ね、言っただけだから…」

俺の弁解は虚しく宙に消える。

「ぜ、全部言う、ば、バカがど、ど、どこに居るのよ!」

 本日何回目だろう、数えるのを諦め腹に直接食らう。

「は、恥ずかしい事言わないでよ!」

 夢咲は顔を真っ赤にする。

「お前、自分で書いてるだろ…」

「書くのと言われるのは違うの、で、評価は?」

 うーん、夢咲がいくら暴力女で可愛くてもちゃんと事実を言ってやらないとな。

 言ったら殺されるかも知れなかったのに、何故か俺は言っていた。


「正直つまんなかった」


「そっか…」

 夢咲が知っていたと言わんばかりの顔になる。

「良かったところは二つだけメインヒロインとの純愛と…」

 夢咲の顔に光が灯る。

純粋な笑顔だった。

「さっき言った最後のシーンは良かった、かっこよかった。おれは男だけどあそこにいたら主人公に惚れてたかもな」

 舞が聞いたら歓喜しそうなセリフを吐く。

「でしょ! 私結構自信あったのよ!」

 今から思えばここで終わらせておけばこんなめんどくさいことにならなかったかも知れない、けど俺は続けた。

「こっからは悪い点だ」

 おれはこの選択を恥じてなんかいない。

「全体的にリズムが単調で、主人公がなんでモテてるかわからないし、キャラが俺の中で動かなかった…」

 自分でも、何を言ってるかわからなかったが言葉は胸の奥から溢れてきた。

「あとデートが全部博物館は無い、見てて面白く無い、あとエロけりゃいいもんじゃ無いだろ、場面を想像しようにも分かりにくすぎる」

 夢咲の顔が俯き真っ赤になる。

 でもこの赤さは今までの物とは違うと何故かはっきりわかった。

「これが、おまの[そこっ触らないでよっ!]に対する評価だ」

「そっか…」

 ここまで散々言ったから夢咲の顔から雫が落ちる。

「でも…」

 俺はまだ続けた。

「続きを読みたいと思った、最初に主人公メインヒロインの純愛は良いって言ったよな」

「うん…」

 夢咲は顔を上げる。

「あの二人があれからどうしたのか、それは気になった、続きを、読みたいと思った」

 これ全部が俺の今の感想だ。

「そう、そっか!」

 夢咲が涙を拭いながら顔を上げ、とびきりの笑顔をみせる。


「ありがとう! 北山!」


 それは可愛くて、さながら天使のようだった、不覚にも俺はまた見惚れてしまった。

「って言うか俺は北村だ!」

 反論をするが誰も居ない。

 手元にはまだ、[そこっ触らないでよっ!]が残っていた。



プロローグって感じですね

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