俺にかかれば一億人力さ!
舞台は速水さんが去るのを見送った数秒ご、です!
「くそったれぇぇぇぇぇぇぇ!」
大声で発狂したかった、でも俺は堪えた。
ゆっくりと立ち上がり涙ながらに学校の近くの駅に行き電車を待つ。
「なんか、色々あったな」
曲がり角で夢咲とぶつかりこの[そこっ触んないでよっ!]を得て[税金ってなんなのかなぁ?]を失った。
俺は提出物を結局出せなかった。
明日絶対怒られるな先生に。
そう考えると足取りは自然に重くなる。
にしても、これ本当に夢咲が書いたのかな?
俺の手には例のブツがあるタイトルは言わなくてもわかるだろう。
夢咲って俺は好きじゃないけどモテモテでスポーツも出来てこう言うの書いてる柄じゃないよなぁ。
しかし表紙には確かにドリーム咲と書いてある。
うーん、このネーミングは無いな。
俺はスマホを立ち上げブラウザを開く。
えーと、ドリーム咲と。
検索するが出てこない。
まだまだ新人って事なのかな?
一人で解釈するが俺はまだ大事なことをしていない。
そう、中身の確認だ。
このタイトル[そこっ触んないでよっ!]酷いけど以外と内容は違ったりして、
淡い期待を持ちながら表紙を開ける。
まあ常識的に考えてこのタイトルでバトル系なわけがないけどね。
開こうとしたが丁度電車が来た。
乗ってる時に読むか、一応夢咲が書いたから電車内で読んでも大丈夫だよな。
この時俺はライトノベル、という物を知らなかった。
さてと、早速読むか。
表紙を開くとそこにはピンク色の世界が広がっていた。
「次は~終点……」
はっ あまりの過激で刺激的で甘々な内容に意識が飛んでた!
夢咲がタイトルを確認した時に赤面したのも頷ける。
だけど、これ書いたの夢咲だよな?
なんで書いた本人が、照れたのか?
まあ細かいことは気にしなくて良いか。
丁度来た折り返しの電車に乗る。
しかし、この内容はないだろ。
これが俺の恋を暗雲に染めた(破綻してないと信じたい)[そこっ触らないでよっ!]なのか。
なんと言うか、全体的に際どい。
終始甘々だった。
なんでモテてるか分からない主人公が可愛いヒロイン達とイチャイチャする。
内容を簡単に説明すると…。
山川高校に通っている冴えない主人公が数々のヒロインを攻略(まあ悩み事を聞いて解決する)という垢でベッタベタな展開だった。
まあベタなだけなら全然いいのだが、何よりムカついたのは主人公の決め台詞、[俺にかかれば一億人力さ!]正直何を言いたかったのかよく分からない。
というか理解したくない。
だけど主人公とメインヒロイン的な子との純愛はなかなか良かった、まあデートが全部博物館だったのが分からなかったけど。
本当にあの内容を夢咲が書いたのか疑いたい。というか疑っている。
なかなか簡単に信じられる事実じゃないぞこれ。
駅から家までは歩いて数分なので考え事をしていればすぐに着く距離だ。
両親は共働きで夕方はは基本家には居ない。つまり楽園パラダイス!
「たっだいまぁ!」
「黙れ! クソ兄貴! 今お楽しみ中なんだよ!」
とはいかないのだ、俺の部屋の隣にはクソ妹がいる。
年は三つ下の中二だ。
「夕飯!」
今日は俺が夕飯を作る日だ、なかなか自分の時間が持てない。
さて、妹の舞のお楽しみ中というのは確実にBLゲーのことだろう。
というのも舞はいわゆる腐女子なのだ(まだ中二なのに!)。
『この前電車の中でBLもんの漫画落としちゃったの、そしたらわざわざ余計なお世話なのにリーマンっぽい男が拾って顔引きつりながら落としましたよってマジ最悪!』とこの前涙ながらに俺に語っていた。
今日俺は人前で[そこっ触らないでよっ!]を読んでいたわけだが、舞の気持ちが少し分かった気がした。
「舞! お前大変だったな!」
この前の返答をしたつもりだったが舞には、
「う、うるさい、バカ兄貴……」
としか言われなかった。
なんかいがいとよんでくれたのでつい出しちゃいました