夏っていえば
で、約三十分が経った。
全く加奈が出て来る気配がない。何してんだ?
俺は微妙な生姜焼きを完食してチラシを隅々まで見てからスマホをいじっていた。
「悠哉ー! まだいる?」
なんだその質問!
「いるに決まってんだろ! お前が待ってろって言ったんだから!」
「そっか良かった」
加奈の言葉と共にドアが開けられる。
その瞬間俺は息を止めた。
いや、正確には息を吸えなかったと言おう。
呼吸を忘れたのだ。
さて、こいつが夏祭りに行こうと言った時点で俺が気づくべきだったのだが、
加奈は浴衣を着ていた。
綺麗な花火柄の青を基調とした夏らしい浴衣。
私服を始めて見たときに絶句した俺が加奈の浴衣を見たらどうなるか………。
まあ死ななかっただけマシだとしよう。
「何、ジロジロ見てんのよ。美少女のあたしが模擬の彼氏のあんたの為に浴衣を着てあげたのよ、何か言いなさいよ」
「あ、ああ」
人ってのは予想外の物を見た時には本当にこれしか出ないのか。
自分に呆れながらまじまじと加奈を見る。
「可愛い?」
加奈の質問を受けるが生憎俺の思考は完全停止していた。
つまり俺はこいつを見た時に感じた、死ななかっただけまし、を口にしていた。
「殺人的なまでに」
「どーゆー意味よコラっ!」
加奈の攻撃が命中する。
いつもの俺ならここで我に帰るはずなのだが、
残念ながら殺人的なまでに可愛い加奈のお陰でなかなか我に返れなかった。
流石に不思議に思ったのか加奈が、
「えーと、大丈夫? 死んでない?」
と口にするが俺には天使の囁きにしか聞こえない。
重症だなぁ、と感じながら加奈を見る。
「えーと、もうそろそろ見るのやめてくんないかな? 恥ずかしくなってきたんだけど」
加奈の顔が少しずつ赤くなっていく。
「あ、ああ」
加奈は本当に可愛かった。
「さ! 悠哉! アホヅラしてないで早く行くよ!」
加奈の後を何も考えずについて行く。
加奈家を出ると俺に向かって手を振っている。
俺は加奈の姿を急いで追いかける。
二人の距離は少しずつ、少しずつだが確実に近づく。
「えーと、悠哉? 大丈夫?」
加奈が後ろに下がった時。
「えぇ? わぁぁぁぁっ!」
俺の前で加奈が転んだ。
せっかく着た浴衣がはだけ家の前であられもない姿で倒れる。
ここでやっと俺は我に返る事が出来た。
「えーと、加奈? 大丈夫?」
俺はさっきまでの熱が冷め本気で心配したのだが。
「こっちみんな! 変態! エロ! スケベ! 肝臓ぶちまけろ!」
よく見たら下着が少し見えていた。
「み、見てねーよ!」
俺はこう言うしかなかった。
加奈は立ち上がり少し汚れた浴衣を叩く。
「あ、あのさ浴衣って普段着ないから動き慣れてないのよね。だ、だから」
加奈は顔を赤らめながら続ける。
「手、繋いでくんない?」
加奈の予想外の申し出に動揺する。
「えーと、お前は今、俺に対して、模擬の彼氏に対して手を繋ごうと………」
ここまで俺の話を聞いてくれた人なら大体予想はついてるよな。
まあ殴られたよ。
「あたしが繋いでって言ってんだから、大人しく繋ぎなさいよ!」
はいはい、こいつはすぐ暴力を振るよ。
さっきまで惚れてた俺を殴りたいよ。
でも可愛いのは本当だからどうにもやりにくいんだよな。
動揺してるのを隠して冷静のフリをしながら手を繋いだ。
加奈の手はほんのりとあったかくて、柔らかかった。
今にも消えそうで弱々しい手。
その存在を確認したかった。
少し強く握ると強く握り返された。
俺は負けじと手の力を強くしようと思った。
そんな淡くて切ない時間は突然の終わりを告げる。
蹴りが俺のすねを襲ったのだ。
「はぁ! お前! だから、なんで、そうなんるだよ!」
怒りと共に放った一言は見事に無視される。
「めっちゃいいムードだったじゃねえかよ! このまま、このまま!」
淡行くばがありそうなムードだったのに!
「このままなんなのよ!」
加奈は顔を真っ赤にして反論する。
「えーと、それはだな」
俺は口ごもる。
「だって! あんた! 何なのその手の繋ぎ方っ!」
「は?」
予想外の言葉に反射的に言葉が出る。
俺はてっきり手の力のことを言われると思ってたんだが、
「だ、だから」
加奈の顔がまた真っ赤になる。
「なんか問題あったかよ」
繋ぎ方に問題は無いはずだ。
俺はちゃんと加奈の手を掴んでいた。
「問題ありありよ! あんたとあたしは恋人同士なのよ!」
まあ模擬だけどな。
「なのに、その繋ぎ方はないでしょ! こ、ここ、恋人なら、こ、恋人繋ぎでしょっ!」
ああ、そう言うことか。
なんだ簡単じゃ無いか。
俺は加奈の手を掴もうとする。
その時加奈の言葉を思い出す。
「え? お前、俺と、恋人繋ぎをしたいのかよ!」
あ、やっちまったと思ったね。
いつもの流れだよくそったれ、俺は覚悟を決める。
が今回は殴られなかった。
なかなか来ない制裁が気になり俺は目を開ける。
その時、加奈は俺の手を引ったくった。
「これで、満足した?」
恋人繋ぎが良いって言ったのはお前なんだけどな。
なんて野暮なことを言う俺じゃ無い。
俺は加奈の悪戯な微笑みを見つめ返す。
加奈の柔らかい指の感覚が俺の指と混じった。
「うわー、人がいっぱい居るね!」
加奈の身長は俺よりも少し小さい。
なので加奈が俺の事を見上げる形になる。
そんな些細なことも気にしてしまう。
「あ、ああ、そうだな」
ショッピングモールの外で行われている夏祭りにしては大量の人が集まっていた。
あちこちに友達と来てる人や子供連れやカップルがいた。
まあつまりリア充ばっかって事だ。
かなりの人混みなので俺と加奈の手を握る力は強くなる。
人混みに押され加奈の肩と俺の肩が触れ合う。
鼻腔をいつか感じたシャンプーの香りがくすぐる。
周りから見たら俺は加奈に釣り合ってるかな、なんて事を考える。
「ねぇ! りんご飴食べたい!」
加奈は無邪気に笑う。
こいつの中身は純粋だったなと思い出す。
「えーと、一つ三百円だって」
俺は店頭に出ている値札を見て加奈に伝える。
しかし加奈は動かない。
「おい? 加奈?」
こいつまさか俺に奢らせる気か?
「? 早く買ってよ」
やっぱりそうきたか!
でもまあこいつに奢ってやってもいいかという気にはなる。
「は? なんで俺が奢らなきゃなんねーんだよ!」
だが一応反論はしておく。
なんかスラスラいくのが癪に触ると言うか何というか…………。
「あんたあたしの彼氏でしょ?」
「模擬だぞ!」
まあ人間簡単にはいかないんだ。
なんかいつかもこんなこと思ったなとか考えながら反論する。
いつのまにかこんな言い合いも日常になっていた。
それも全て今日で終わりと思うと寂しくなる。
「はぁ、そういうと思ってたわよ」
加奈は引っかかったわねと言いたげな表情になる。
そんな些細なことも思い出になるのかな、とか思っていた。
「右手、見て」
俺は自分の右手を見る。
その手は加奈と恋人繋ぎをしていた。
その手は強く握られていた。
「私見て」
俺は加奈を見る。
加奈は浴衣を着ていた。
加奈は少し自慢げだ。
………………………あれ?
「つまり、お前が言いたいのは」
俺は今の状況を整理しながら言う。
すると加奈は俺の言葉を遮りながら言った。
「模擬の彼氏の冴えないあんたのためにあたしは浴衣を着て、仕方なく恋人繋ぎをしてあげてるのよ」
加奈の顔は悪戯っぽく笑う。
「あんたが感謝してあたしに奢るのは当然の事なのよ!」
と自慢げに言った。
「あんたドキドキしちゃってドーテー臭!」
加奈はつらつらと続けた。
………………………………………………………………………………。
俺は今の状況を必死に整理する。
つまりこいつは俺に奢らせるためだけにわざわざ浴衣を着て、恋人繋ぎをして、わざわざ恋人みたいな事をした。
ということか。
つまり恋人繋ぎをした時に見せた悪戯な笑みはこの作戦がうまく言ってるから見せた笑みということなのか。
ここでやっと全てを理解した。
「くそったれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
俺の人生最大の雄叫びだった。
「うわっ! ビックリした」
加奈が驚く。
一度でも可愛いと思った俺がバカだった。
あとこんな事するこいつもバカだ!
何よりドキドキした俺もバカだった!
というか今すぐ死にたい!
どっかにピストルは売ってないのかぁぁぁぁ!
「あんたまさか、信じちゃってた?」
脇から加奈の声が聞こえる。
こいつとは、あくまでも取材の関係という事を完全に忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「それは悪いことしたわね」
加奈の声には今回ばかしは反省の色が見えた。
はあ、もう自分で買えよ。
そう言おうとする俺をさらなる衝撃が襲う。
「あたし、今日お財布持ってきてないのよね」
「りんご飴二つ下さい!」
俺は反射的にそう言ってたね。
「痴話喧嘩か? 大事にしろよ、可愛い彼女さんなんだから」
余計なお世話だ!
という言葉を飲み込み、
「大事にしますよー」
そう言った。
「ねえ悠哉! 金魚すくいやる!」
一応純粋な加奈が喜びながら言う。
何人かが列に並んでいる。その後ろに加奈が並ぶ。
俺は加奈に三百円を渡し金魚すくいをしている人を見る。
水槽の中に居る赤い物をポイで追いかける数人の人達。
あれは俺の血の色か?
なんて事を考えながら赤い物を見る。
しかし金魚のはずの赤い物は全く動かない。
「ってあれ?」
俺は少し離れると屋台の名前を見る。
そこには[ミニトマトすくい]と書いてあった。
ミニトマトかよ!
確かに赤いけどさ、さすがにそれで三百円は高いって。
ちょうど加奈の順番になり「ミニトマトなの!」という言葉が聞こえてきた。
「ねえ、食べる?」
俺は加奈のすくったミニトマトを貰い口に運ぶ。
「まさかミニトマトだとは思わなかったね」
「うん、そうだな」
この後、射的やらくじやら綿あめやらを食べたりなんだりして俺の財布は薄くなる一方だった。
こいつに遠慮という言葉はないのかね?
「ねえ! 夕飯食べよっか」
加奈がお腹をさすりながら言う。
「お前、あんなに食べた後で良く言えるよな」
俺は呆れながら言う。
「あ、あたしの食事事情に口突っ込むな!」
俺は浴衣姿の仮にも美少女にぶん殴られた。
周りには痴話喧嘩にでも見られてたりすんのかな、なんてことを考えながら何を食べたいか聞く。
「あたしは焼きそば、あ! 席取ってるね!」
そういいながら、加奈は近くの椅子に座る。
「あいつ、一人で休みやがって」
俺は焼きそば屋に並ぶ。
めんどくさいから俺と焼きそばにするかなんてことを考えながら列に並ぶ。
えーと、三っつくらい買えるかな?
でもこーゆーとこの焼きそばってイマイチなんだよなぁ。
にしても浴衣姿の女の子も以外と多いよな。
加奈ばっかりに気を取られてたから気付かなかった……………………あれ?
なんか見た事ある花柄でオレンジ色をした浴衣だなって思ったけど、俺の前に並んでるりんご飴を舐めてる女の子ってまさか…………。
「おい、お前……………」
俺は目の前の少女の肩に手を当て話しかける。
「ん? なんで………………………え?」
少女が振り向きざまに驚きを口にする。
その仕草は加奈とは違いう意味で可憐だった。
一応自分の兄妹なのだがもしそうでなかったら心を撃たれていたかもしれない。
「なんでここにいんの? バカ兄貴?」
「お、お前こそなんでいるんだ?」
実の家族だ、兄妹なのにこいつの顔と服装をなかなか直視出来ない。
舞が髪をかきあげる。
その些細な仕草にドキッとしてしまった。兄妹なのにな。
「何? 私のことでも気になるの?」
舞は悪戯っぽく笑う。
浴衣を着ているせいかわからないが性格はいつもより少しだけ大人しい。
「いや、別にそんなんじゃないんだがな」
俺は焼きそばを焼いている人を見る。
「こっち、ちゃんと見てよね」
舞は少し背伸びをすると俺の顔を掴み自分へと向ける。
こいつ、なかなか大胆なことするな、なんて事を考える、とりあえず何か言わないとそう思ってさっきの質問をもう一度言う。
「お前、なんでここに居るんだ?」
舞は手に持っていたりんご飴を少し齧りながら言う。
「私は普通に友達と来てるだけ、私が焼きそば買って席とりとか飲み物とかで今分かれてるの、バカ兄貴こそなんで?」
舞は首を少し傾げる。こいつ、わざとやってるんじゃ無いだろうな?
「俺は…」
答えようとするが、一応彼女と来ているわけでそれをそのまま言うのは色々まずいな(主に茶化される、舞と親に)と考え直し友達と言おうとするが、
「まさか、バカ兄貴彼女でも出来たの?」
俺より少し早く舞が言う。
「は? お前! 何を! 言って」
俺は一応動揺を隠せていると信じたかった。
「ふふっ、まあいっか」
焼きそばはあと少しで舞の番になる。
そこで俺が今会った時からずっと思っていたことを口にする。
「舞、浴衣、可愛いな」
妹に放つセリフでは無いがどうやら舞は満足したようで屈託のない笑みを浮かべる。
「ありがと、バカ兄貴、やればできるじゃん」
そう言って焼きそば受け取ると夏祭りに消えていった。
俺は結局焼きそばを二つだけ買い加奈の待つ席へと行く。
「ほら、お望みのブツだぜ」
そう言いながら加奈に焼きそばを渡す。
「ん、あんがと」
そう言って俺の手から焼きそばを引ったくり食べはじめる。
「ねぇ、さっきのオレンジの浴衣の女の子誰?」
加奈に突然質問をされ少し戸惑う。がすぐにピンと来る。
「あれは、俺の妹だ」
その瞬間加奈は焼きそばを食べる手を止めた。
「本当に?」
「本当だ」
なかなか綺麗なおうむ返しだな、と自分を褒める。
「顔面偏差値平均以下のあんたの妹?」
残念ながらこれを返す気にはならない。
「ああ、そうだよ」
仕方なく適当に相槌を打つ。
「マジか、めっちゃ可愛かったじゃん」
まあ自分のことでは無いのだが妹が褒められると少し嬉しくなる。
「にしてもなんかこの焼きそばべちょっとしてない?」
加奈が食べかけの焼きそばに文句をつける。
「文句付けんなら食うな、こーゆーとこの焼きそばはこんなもんだよ」
「何カッコつけてんの? キモっ! 自意識過剰乙! 心臓壊れろ!」
こ、こいつ!
「はあ、早く七時になんないかなぁ」
加奈が呟く。
「なんかあんのか?」
「ふふっ! 内緒」
まあ俺は鈍い主人公じゃないからわかる。
夏祭りで夜に行われることといえば、高確率で花火だ!
しかもこいつ花火柄の浴衣着てるしな。
こいつ多分花火楽しみなんだろうな、本当に子供みたいで純粋だよ。
そんな事を考えながらバックに手を突っ込む。
「加奈、いいもん見せてやるよ」
俺はバックから加奈に貰ったチラシを見せる。
「これが、どうしたの?」
俺はチラシの右下を指差す。そこには小さい字が書いてあった。
「? えーと………注意、今年から花火は予算の都合で無しになりましたぁぁぁ!」
途中で加奈が声を荒げる。そこまで荒げたらお前の声は枯れるぞ。
「マジ?」
「そう書いてるな」
「そ、そんな~」
加奈は持っていた割り箸を落とす。
どうやらこいつのラノベのシーンは一つ減ってしまったようだ。
「おのれ、楽しみにしてたのに~」
やっぱり普通に楽しみにしてたんだな。
俺はずっと隠していたブツを出す。
どうせお前のことだから確認してないんだろうと思って買ってきてやったぞ、花火」
俺は手持ち花火を見せる。
「別にかっこよくないから! しょぼっ! 打ち上げ買えよ!」
「お前、それは無いだろ。まあいいけどさ」
せっかく気を遣ってやったらこの態度だよ、可愛くねぇよな。
俺が渋々花火を片付けようする。
「何片付けてんの?」
加奈が不思議そうに聞く。
「は? お前やらないんじゃないのか?」
「いや、やるけど」
「なんなんだよ!」
という事で今俺と加奈は河原で花火をしている。
大体の花火は終わり残っているのは線香花火だけだった。
「加奈ー、やるかお前?」
線香花火は一つしかなかった。
「一つしかないって、これ絶対一人用よね」
なんて事を言いながら加奈は俺の手から線香花火を取る。
こいつの心は一応子供みたいに純粋だからな。
「ねえ、あたし線香花火ってなかなか切なくて嫌いなのよね」
そんな事を言いながら線香花火に火をつける加奈を眺める。
ここで俺は出会った時から聞こうと思っていた疑問を口にする。
「なあ、お前なんでラノベなんだ?」
加奈は何を言ってるんだという顔で固まる。
「なんでって?」
「お前、スポーツとか出来るし外見も良いだろ」
加奈は褒められて線香花火のお陰で赤く見える顔をさらに赤らめる。
「言わなきゃ、ダメかな?」
線香花火を持つ手が震えている。
「いや、言わなくて良いや」
確かに気になりはするが、それで加奈を傷つけるのならわざわざ聞きたくない。
「そっか、優しいね」
加奈は声を絞り出す。
線香花火のチリチリという音が辺りに響く。
その音以外何も聞こえない。
「ありがとね付き合ってくれて」
加奈はいつかのような眩しい笑顔を向ける。
「じゃあ別れよっか」
線香花火が震え、小さくなる。
こいつと過ごした約一週間は物凄く楽しかった。
取材の為の模擬カップルだったがその一週間は確かにカップルだった。
スカイツリーに行って、膝枕して、家行って、手料理食って、夏祭り行って。
ここでは語りきれないが、プール行ったり、映画行ったり、ゲーセン行ったり、カラオケ行ったり、いろんな所に行った。
こんな充実した夏休みは絶対もう無いだろうな。
絶対と言い切れるくらい楽しかった。
もう出来ないと感じると途端に切なくなる。
いつか終わる事は分かってても切なくなる。
でも、後悔はしてない。
一週間足らずで終わることが分かってたからこんなに楽しかったのだ。
不思議とそう言い切れる。
湿っぽいのは性に合わない。
だから俺は全ての気持ちを込めて一言こう言った。
「ああ、ありがとな」
線香花火は地に落ちた。




