第三話 ちょっとした問題と領主の対面
門番が金が入った袋を持って出て行った後、ジールはフジンとまた話しながら、持っていった門番の様子を見る。
二つの事ができるのは『多数人格』の能力によるものだ。
多数人格は苦しむことで生まれる闇、つまり『闇』の能力。
(う〜ん、どうやら領主の館には行っているように見えるが)
門番は門番室を出た後、大通りを通って領主の館に向かっているように見える。
(あれ?脇道に入ったぞ)
いきなり門番は脇道の薄暗い所に入っていった。
(うん?誰だコイツら?いや、そもそも初めてここに来るんだから知らなくてもおかしくないか)
そこにはチンピラのような人が3人。
「土産もんだ。受け取れ」
先程の好青年であり、兵士らしい口調もあった門番が目の前にいる人達のようなチンピラ口調をしている。
受け取ったチンピラは
「なんて大きさの金なんだ?」
「どこでこんなもんが?」
「あぁ、門番の仕事で手に入ったんだ」
ジールの予想通り売り出そうしている。
(ここまでは持ってかれてしまう。対処しておこう)
そこで門番に張り付いている忍者を使う。
「な、なんだ。おい、大丈夫か?」
門番は驚いている。
それは忍者によって目の前の三人が一瞬にして気を失われたのである。
殺してもいいが、殺傷行為はなるべく少なくしたい。
(これで門番に暗示をかけて)
ジールは今度こそ門番が領主の館に行くように暗示をかける。金を拾い、門番は領主の館に向かう。
その後、無事に領主の館に着き、領主に問い合わせる。
すぐに手続きが済み、門番は領主の所に向かう。
門番は領主がいる部屋に入る。
「金を持っていました」
「あれ?それを持ってきたという男はどうした?」
「ジールという方ですか?別に会いたくはないと言っていました」
「そうか」
領主はジールがいない事に不満に思っていた。
(何故、来ない。権力者と関係を持つ事を願わない一般人なのいるのか)
こんな事を思っている領主は危険な方の権力者ではないか。
そもそもジールを一般人と呼べるのか。
「確か、入街許可証を所望だったな。これを渡せ」
「こ、これは無期限の許可証⁉︎」
基本、許可証は期限ありで何ヶ月や何年といくつか許可証があり、門で門番にとりあえず三ヶ月許可証を貰い、更新する場合や期限変更は衛兵所に行けば変えて貰える。これは期限は切れれば罰金を払い、外を出た途端に無効となる。
無期限は二種類あり、一つ目は住民票で最低でも一年は滞在しなければならない。二つ目は領主から貰え、滞在制限もないから街の外から帰ってきてもこれを渡せばいつでも入れる。領主からという事もあり、目にする事も少ない。
(これでしばらくは滞在してくれるはずだ)
無期限にしたのは領主の作戦らしい。
(どんだけこの人は僕を取り込みたいだ〜)
ジールは忍者の目から領主を見て、そう思ってしまった。
「これで用はないはずだ」
「あ、あの〜、いいのですか?ここに呼ばなくて…」
「あんまり許容するべきではないと思ったからだ。ほら、早く渡してこい」
「は、はい、わかりました」
門番は慌てて部屋を出り、門番室に向かう。
(最終的にこの領主は悪くはないかな。それでもこの街にいる間は厄介そうだ)
ジールはこの後起きるであろう事に思い悩むのであった