冬の朝はきつい
前話が長かったため、今回は短めです。
残酷な描写が若干ありますので、苦手な方はご了承ください。(そんなに残酷じゃないんですが、念のため)
何かに急かされるようにして、はっと目を覚ました。外はまだ薄暗く、少し霧がかっている。
隣で寝ていたリーシャは裸身を起こし、毛布を引き上げて身体を隠していた。そして、窓の外を見ながら険しい表情をしている。
「この嫌な感覚って・・・・・・」
「ええ、何かが探知魔法の範囲内に入ったわ」
「距離は?」
「走って1分くらいかしら。早く様子を見に行くわよ」
リーシャと僕は急いで服を着て外に飛び出た。
雪は降っていないものの、やはり朝は冷える。
『体温上昇』
リーシャが魔法を唱えると、身体が一気に温まっていく。
「ありがとう、助かる」
リーシャは黙って頷き、虚空から剣を取り出して腰に下げた。
「私が先行して状況を確認してくるわ。何かあったら援護をお願い」
「了解」
『走行補助』
言うが早いか、リーシャは霧で視界の悪い中を走っていった。身体強化の魔法をかけたリーシャは、僕より早く動ける。
やっぱり魔法って便利だよな。野草にも身体強化できる魔力を持つものはあるが、後々副作用が出るからあまり使いたくはない。
旅の途中で、副作用のない野草を見つけられると良いのだが。
「こっちよ、旦那様」
リーシャを追いかけて走っていくと、岩場の陰から様子を伺っている彼女を見つけた。
僕も身を潜めて向こうを覗いてみる。
霧ではっきりとは見えないが、2台の貨物馬車が停まっていた。
「多分行商人ね。ちょっと話を聞いてくるわ」
「待った」
すくっと立ち上がり、馬車に近づいていこうとするリーシャの腕を引き、再びしゃがませる。
「どうしたの?」
「何かおかしいぞ。魔物もいるような平原のど真ん中で立ち止まるなんて、普通しないだろ」
少し考えるそぶりを見せてから、神妙な顔で頷く。
「分かった。確認してみるわ」
リーシャは目を閉じて魔法を発動した。
『鳥瞰』
鳥瞰を発動すると、遠くのものをはっきり見ることが出来るらしい。視界の悪い時にも使えるので汎用性の高い魔法だ。
「・・・・・・マズイわね。何人か殺されてるわ」
「マジかよ・・・・・・」
悪い予感が当たった。
恐らく片方の馬車は盗賊のもので、行商人の荷物を強奪しているのだろう。
生存者がいるかは分からないが、助けに行けるなら行きたい。
「敵は何人いる?」
「5人よ。リーダーみたいなやつが指示を出してて、残りは積荷を自分達の馬車に積み込んでいるわ」
相手の力量は分からないが、油断しているならなんとかなると思う。
「僕は助けに行きたい。リーシャは?」
「下っ端4人は片付けるから、奥にいるリーダーをお願い」
リーシャは最初から行くつもりだったらしい。僕に指示を残すと、『走行補助』を発動して敵に突っ込んでいった。
僕は横から回り込み、リーダーと思しき大男の前に躍り出る。
「なんだ貴様ら!」
大男は僕に気がつくと、巨大な斧を肩に担いで言った。
「僕らはただの旅人だよ。それより、これは一体どういうことだ」
「ふんっ。愚かな行商人が俺様の縄張りに入ったから狩ったまでだ。貴様らに何の文句がある!」
大男は悪びれもせずにわめき散らした。
「そう言えば小娘が無謀にも攻撃してきたようだが、あれは貴様の仲間だろ? そろそろ俺様の手下が取り押さえた頃だな。貴様を半殺しにした後、目の前であの小娘を犯してやろう。俺様にたてついたことを、地獄で後悔させてやる!」
大男は気持ち悪い笑い声をあげ、斧を振り回しながらこちらに向かってきた。
僕はため息をつきながら、大振りな斧の斬撃をバックステップでかわす。
大男はニタニタと笑みを浮かべながら、斧を避け続ける僕を追撃した。
「はっ! 逃げ足だけは一人前じゃねぇか!」
「お前も、口だけは一人前だな」
「クソガキが! 調子に乗るんじゃねぇよ!」
大男は何度も懲りずに突撃してくるが、僕は全て軽々と避けていく。
リーシャを犯すとまで言ったこいつをどう倒してやろうかと考えていたが、正直勝負にすらならない。とりあえず、捕縛してしまうか。
こちらに突っ込んできた大男の足元に、草弾を3発撃ち込む。力だけは強いみたいだし、念のため多めに撃った。
「クソッ! なんだこれ!」
発動した草弾から伸びる太い蔦に足を取られ、大男は無様にすっ転んだ。さらに、蔦が全身に絡まり、身動きが取れない状態になっている。
「終わった?」
そこへ、血まみれの剣を片手にリーシャがやってきた。一見普通の表情だが、殺気があふれんばかりといった様子だ。
「ああ。そっちは?」
「敵は全員殺した。行商人と護衛らしき人達もいたけど、手遅れだったわ」
「そうか・・・・・・」
遅かったか。彼らも命の危険があることを承知で行動しただろうし、僕らが助けなきゃいけない理由はない。
だが、こんな下衆どもに殺されたのだと思うと、やるせない気持ちになった。
「リーダーは一応捕まえておいたけど、どうする?」
「個人的な悪感情抜きで答えるなら、王国の騎士団に突き出すのがいいでしょうね。そこで適切な罰がくだるだろうし、いくらか報奨金も貰えるわ」
「分かった」
僕は大男の前に立ち、雷弾を腹部に撃ち込んだ。
大男は耳障りな悲鳴をあげ、やがて絶命した。
「・・・・・・良かったの?」
「ああ。僕もこんな下衆生かしておくつもりなんて無いよ」
リーシャは複雑そうな表情をしていたが、
「ありがとう」
と言ってその場を後にした。
馬車の方を見にいくと、それはもう酷い有様だった。護衛の冒険者は3人だったようで、見るも無惨な姿に成り果てている。
僕らは死んだ行商人と冒険者達を埋葬し、被せた土の上に彼らの所持品を載せた。
簡易的な墓だが、ないよりはマシだろう。
「問題は、積荷をどうするかよね。街に戻って騎士団に報告するのが妥当だけど・・・・・・」
騎士団とは、国直属の軍隊だ。身分が高く、実力のある者しか入団できないエリート集団である。
「いや、それは・・・・・・」
もちろん、こういったことはすぐにでも騎士団に知らせ、後処理をしてもらうべきだ。
しかし、そうなれば僕らも取り調べを受けることになる。その時に、僕が魔力無しであるとバレる可能性は十分あるのだ。
まず、本名を言った時点でバレる。あと公的機関には魔力を用いた個人照合をする装置があり、それを使われてもアウト。
騎士団と関わりを持つのは、僕にとって好ましくないのである。
「そうね。私たちはすぐにここを離れましょう。でも、馬車の荷台は一応調べておきましょ。旦那様は行商人が乗ってきた方をお願いね」
「分かった」
もしかしたら、積荷の陰に潜んでやり過ごした人がいたりするかもしれない。ほとんど可能性はないけれど、確認しないわけにもいくまい。
だが、馬車の荷台にはほとんど物が無かった。どうやら盗賊たちは、略奪をおおむね完了していたようだ。
奴らが出発する前に僕らが間に合ったのが、唯一の救いか。
「旦那様、ちょっと」
創作すべき場所はほぼ無かったので、僕はすぐに馬車から出る。すると、盗賊達の馬車からリーシャが顔をのぞかせた。
「どうした?」
「それが・・・・・・」
リーシャは僕を荷台の奥まで連れて行く。
そしてそこにいたのは、鉄の檻に入れられた、幼い少女だった。
なろう作品を同時並行で色々読んでいると、最新話が更新された時に「あれ? これってどんな話だったっけ」ってなるのが悩みです。
私だけかもしれないんですが、次話から前書きにあらすじを書いておこうと思います。内容を忘れてしまった場合、読んで頂ければ幸いです。