表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

騙されたらしい

 

 NPC専用職という言葉がリフレインする。


 どうしてかと言うと、さっきチュートリアルが終わったんだけど、そのチュートリアルはどっかの食堂の厨房でさ、下拵えから料理に至るまでの修行だったんだ。

 そんで一通り終わって合格を貰って【料理】を獲得しましたってアナウンスが出て終わったんだけど、そん時に店のオーナーがさ、こう言ったんだ。


『君ならうちでやっていけるね。どうだい、このまま雇われないか? 』


 でも断ったんだ。


 当たり前だろ。ゲームの中で就職するとか、何の意味があるんだよ。

 剣と魔法のゲームで食堂に就職しましたとかさ、異世界に飛ばされた可哀想な人じゃあるまいし、ゲームでやる事かよ。

 それでも気が向いたら来いと言ってくれたので、どうにもならなかったら行く事にはしているけど、何とか戦えないものかな。

 オレは確かにゲームには興味が無いとは言ったが、それは今現在の話だ。

 かつてはあの従妹の姦計にいつも乗せられ、何かしらのゲームはやっていたんだ。

 それが味見を手に入れたせいで、好きだった料理がやれるようになり、自然とゲームから離れたに過ぎない。

 早い話が自分の趣味を見つけて、強制されていた事柄から手を引いたと、ただそれだけの事なのだ。

 なので決してゲームに対する知識が皆無って訳じゃ無いんだ。


 ひとまず宿屋で落ち着いて、ステータスとスキルを確認する。


 このゲームでは職業を決めたら専用スキルが勝手に付いて来るようで、料理人の場合は【下拵え】というのがそうだ。

 チュートリアルで獲得した【料理】の他に、その職業スキルである【下拵え】というスキルがあり、その中に補助スキルがいくつか並んでいる。


【下拵え】-《刻む》《剥く》《削る》《潰す》《絞る》

【料理】-《焼く》《煮る》《蒸す》《揚げる》《和える》


 これが今現在のスキルなんだけど、これでどうやって戦えば良いのだろうか。

 レベルを上げないとスキルは増えないし、増えないとこれ以上の事はやれない。

 しかも聞くところによると、下拵えが無くてもチュートリアルで少し長めにやれば取得は可能と言うじゃないか。

 持っていれば料理の取得が早くなるだけとか、そんな事なら調理師になりたかったよ。

 あいつ、ログインしてから攻略掲示板を見ろとか言ったのはこのせいだったのか。


 とことん下僕一直線にしやがったな。


 そんな騙され感満載なオレだけど、元来ちょっとへそ曲がりなところもあって、何とか戦おうと思っているんだけど、初期装備を見てみるか。


【文化包丁】


 攻撃 1

 耐久 ∞

 料理をする為の包丁なので、攻撃力は限りなく小さい。

 初期装備なので耐久値は減らないものの、これで攻撃は考えないほうがいい。


 うわぁぁぁぁ、騙されたぁぁぁぁ。


 何が初期装備でも戦えるだよ、戦えねぇじゃねぇか。

 そりゃ数限りなく攻撃していれば何時かは倒せるかも知れないけど、こんなので攻撃出来るかよ。


 手持ちの金……単位はリアルとか言うらしいが、それが少ないんだよな。

 初期で300リアルしかないんだ。

 これにも理由があって、どうやら職業で初期の所持金が違うらしい。

 普通にプレイヤーが選ぶ職業は大体1000リアルぐらいでスタートするらしいが、NPCが選ぶようなのは200~500止まりらしい。

 その代わり、他のNPCとの親密度の上がり方が違うらしいけど、はっきり言って殆ど自販機と変わらない取引に何の意味があるのか分からない。


 これも騙されたって事かな。


 そんな大事な情報、事前に全く聞いて無いし。

 そもそも調理師でも問題無かったはずなのに、どうして料理人にしろとか言ったんだ、あいつは。

 オレを苛めて楽しんでいるとしか思えんぞ。


 コンコン……


 あれ、誰だろう。


「はーい、あれ」

『やあ、コウ君、ちょっと味見をしてくれるかな』


 おっかしいな。

 今日初めてこの宿に泊まるのに、妙に従業員が馴れ馴れしいぞ。

 ともかく、食器を受け取って味見を開始する。


 ……おお、これは旨いな。

 何の肉かは知らないけど、味は薄めだけどしっかりとした味だから皆に受け入れられそうな肉料理だ。


『どうだい、お味のほうは』

「美味しいです」

『そうかい、それは良かった』

「薄味なのにしっかりと味が付いているから皆に受けそうですね」

『じゃあ冒険者の人にも受けそうだね』

「イケると思います」

『ありがとう、参考になったよ』


 どうやら突発イベントだったようで、料理の感想を述べるだけでクリアになった。

 報酬は宿泊割引らしく、1泊50リアルのところが半額になるようだ。

 良かった、300リアルしか無いのに1泊50リアルじゃ、何もしなくても6日で終わるところだった。

 それに味見で空腹度がかなり解消されたのも良かったな。


 よし、寝ようか。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ