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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
春は出会いと花見酒
8/59

8. 地元へ

「着いたぁ…」


 新幹線から降りて、一息つく。


 真琴に話しかけてきたあの(血濡れ)女は途中で下車したのだが、その後もひっきりなしに霊が乗ってきた。

 ある者は男が、またある者は子供が。赤ん坊が肩に乗っている者などもいた。


 前の反省から、そういう者には関わらないと決めた真琴は、少しでも存在感を消そうと試行錯誤を続けてきた。そうして逆に目立ち、彼らからの視線を集めていたのだった。


 精神的に疲れ果てた真琴は、隣を歩く飛鳥へと視線を向けた。


 今まで生きてきた中でずっと目にしてきた光景だったのだろう。何事も無かったかのように歩き続ける飛鳥は、真琴の思い違いで無ければ除霊師だった筈だ。何故彼らを祓い、憑かれている人を助けてあげないのかと率直な疑問を投げかけると、心底どうでもよさそうな視線が返ってきた。


「貴方に憑いています。と言って信じるか? 普通」

「あー…そう言われれば」

「大体、今日会った奴らなんて、憑かれて当然みたいな奴らだったみたいだしな。たまたま波長が合ったからっつー理由じゃ無さそうだったぜ?」


 そんな奴ら救う理由なんざあるか?と聞かれ、真琴は言葉に詰まる。

 女を筆頭に、憑いていた者は全員、恨みの籠った視線で彼らを見ていた。


「仕事ならともかく、俺はそんな善人じゃねぇんだよ」

「…そっか」


 しゅんと元気をなくした真琴に、飛鳥は溜息をついた。


「お前は自分のことだけ考えてろ。あと数日しかいられないんだからな。せいぜい心残りのないよう過ごすんだな」

「…はぁい」

「……それで、どこまで付いてくる気だ?」

「お家まで送ってってあげるよ。今は特にしたいこともないし」


 そうして歩いて数十分。

 都会の喧騒から離れ、厳かな雰囲気の寺院の前で足を止めた飛鳥を真琴は不思議そうに見つめた。


「お寺?」

「この中。俺ん家」

「おお、お寺の人だったんだ……見えない」

「悪かったな」


 今時の若者という格好の飛鳥と目の前の寺院とを交互に見て、そう溢す。今までも何度か言われたのだろう。本人も自覚があるようだ。


「じゃ、気を付けて帰れよ」

「ふふ、幽霊に気を付けても何もないんじゃない?」

「馬鹿。霊にも危険な奴だっているんだよ。例えば悪霊、とかな」

「悪霊?」

「ああ。あいつらは他の霊を吸収して力を増していく…。四十九日の間、気を付けて…無事成仏しろよ」

「わかった。気を付ける」

「おう。じゃあな」


 真琴の返事を聞いた飛鳥は、ひらりと手を振るとそのまま中へと入って行った。

 その姿を見送った真琴は、家族が待つ実家へと足を向けた。


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