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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
春は出会いと花見酒
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7. 取り憑く者

 無事、三人を成仏させた飛鳥は、帰りの新幹線に乗っていた。隣に真琴を連れて。



 あの後、山田の最期の言葉を聞いた上田部長は、その瞳に涙を浮かべながら何度も感謝の言葉を述べていた。

 突然の仕事に疲れた飛鳥だったが、明日にはまた別の仕事が入っている。 一息つく暇も無く、帰路についたのだが。


「まさか地元が一緒なんてねぇ」


 話しかける真琴の言葉には答えずに、目を瞑る。


 本来ならば新幹線など利用せずとも帰ることのできる真琴だが、行先が一緒と知り、折角だからと道中共にすることにしたのだ。

 付いて来られた飛鳥としては迷惑そのものである。


 しばらくそうしていただろうか。いつの間にか眠りについていた飛鳥を夢から引き戻したのは、肩を揺すられる感覚だった。


 目を開け、揺らした本人の真琴を見ると、何か怖ろしいものを見るような目で前方の席を見つめていた。


「南雲さん、南雲さん。あれ…」

「見るな」


 彼女が指差す先を見ると、血まみれの容貌で男を睨み付けている女の姿があった。

 関わらないのが得策だろう。

 一瞬の内、そう判断した飛鳥は、隣にしか聞こえないように小さく呟くと再び目を閉じた。


「わっ!? やばいやばい、南雲さん! 目が合った! 近付いて来たよ!」


 真琴の言葉通り、女の近づいてくる気配を感じた飛鳥は狸寝入りを続けることにしたようだ。

 瞳を閉じたまま、微動だにしなくなった飛鳥にしがみ付き、隠れる様に小さくなるとぎゅっと目を瞑る。


(来ないで…!)


 そんな願いも虚しく、その気配が二人の前で止まるのを感じた真琴は、恐る恐る目を開いた。


「こ、コンニチハ…」

「……あなたも…、その男に殺されたの……?」

「え?」


 その言葉に、彷徨わせていた目を彼女へと向ける。

 女の顔は、先の怨みの篭った表情ではなく、悲し気だ。

 …それはまるで仲間を見るかのような。


「い、いや私は事件に巻き込まれて…」

「そう。私はね、あの男に殺されたの。…もう三年になるかしら」

「………」

「憎くて憎くて…。何度この手で殺してやろうかと考えたわ。でもそれもあと少しの辛抱。だってあの人もう治らないもの。あと少し…あと少しで……」

「病気、ですか?」

「ええ。既に全身に広がっているわ。気付いて病院へ行っても手遅れ。楽しみだわぁ…」

「そ、そうですか…」


 狂ったように笑い出した女は、真琴のことなど忘れ去ったかの様に、再び男の元へと戻って行く。

 解放された真琴はほっと息をつくと、未だ狸寝入りを続ける飛鳥を小突いた。


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