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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
夏は花火に海水浴
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43. 小さな背中


 埃被った家具の間に屈み隠れる飛鳥は、何故こんなことになったのか考えていた。


 「遊ぼう」と言ったゆり乃に対し、馬鹿正直に首を縦に振った真琴。

 明来達と共に外に出た旭に彼女達を寺へ連れて戻る様メールで伝えたため、そちらの心配はないが、かれこれ一時間は”隠れんぼ”をしている。


 飛鳥や真琴が鬼の場合は割とまともだが、ゆり乃な鬼となれば勝つ手はない。

 唯でさえ地の利があるゆり乃が人の気配が分かるときたら、飛鳥は負けが確定したも同義だ。

 しかも――


「……ゴホッ……ックシ」


 長期間放ったらかされていた家の中は、埃やカビの臭いが充満していて彼の鼻を刺すのだ。特に、隠れるのに相応しい場所においては顕著だった。

 霊には効かない攻撃を密かに受け続ける飛鳥は満身創痍だ。

 西園寺ゆり乃を祓うよりはずっと楽ではあるが、これはこれできついものがあった。


「みぃつけた」


 子供独特の高い声と共に、白い顔が家具から覗く。

 よく心霊番組等にあるシチュエーションだ。心臓が弱い方は注意だ。

 尤も、彼女がその番組を見たことはないだろうから、意図してしたものではないが。


 見つかったからといって、特に何かある訳ではない。ただ鬼になって埃だらけの家の中で二人を探し回らないといけないだけだ――


 飛鳥は諦めにも似た息を吐くと折っていた手足を伸ばし、大きく伸びをした。



 ◇◇◇◇



「凄く楽しいけど、そろそろ帰らなきゃ」


 真琴がそう切り出したのは、既に日が傾いた頃だった。

 昼前からずっとゆり乃と遊んでいたことになる。

 いつもより早く帰ると言う彼女に飛鳥は不思議に思うが、この遊びから早く解放される為に口には出さなかった。


「えぇ〜!? 私、もう少し遊びたいです」

「ごめんね、今日は弟の誕生日だから早く帰ってお祝いしないと」

「……たんじょうび?」


 長時間一緒に遊んだことで、すっかりゆり乃を手懐けた真琴。子供の扱いはお手の物だ。

 だが、家族の誕生日と聞くと顔が曇る。


「うん。二つ下の弟がね。誕生日のときは皆で祝ってて、今回も私の分があるみたいだから参加しないと」

「…………」


 嬉しさの溢れる真琴の顔に、ゆり乃も笑顔を返そうとするが、失敗に終わった。

 俯き泣き出したゆり乃に真琴が焦る。


「……十歳の誕生日に殺されたんだよ」

「ええっ!? そんな……ごめん!! 嫌なこと思い出させたね」


 悪意はなかったとはいえ傷口を抉った自分が慰めていいものかと、ゆり乃の背中を撫でようとする手を彷徨わせる。

 その手を背中に置いたとき、怯えるように彼女の肩が跳ねた。


(こんなに――)


 こんなにも、小さかったのだ。

 そんな二人の姿に、飛鳥は何とも言えない感情を感じた。


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