41. ドアが回る音
短めです。
飛鳥はドアを開けてすぐ、部屋の明るさに驚いた。
割れた窓から、陽の光が射し込んでいるためだ。
「美紀っ!!」
部屋の奥、薄汚れたカーペットの上に転がされた三人を見付け、明来が駆け寄る。
すぐ横にある執務机にいる少女には気付かずに――
「いらっしゃい」
少女らしくない優雅な微笑みを湛える彼女――西園寺ゆり乃の視線は、駆け寄って来た明来ではなく飛鳥へと向けられている。
「南雲の家の人、貴方がここに来るのは初めてね。私を祓いに来たのかしら?」
「……危害を加えるつもりはない。その三人を返してくれないか?」
「ふふっ、返せだなんて……おかしなことを言うのね」
小さく笑った彼女。しかしその瞳は冷たい色を灯したままだ。
「人の家に無断で押し掛けて物を盗むのは、立派な犯罪ではありませんの? 相手が死人なら許されるとでも?」
「そのことは本当に申し訳なく思っている。彼等にも二度としない様、よく言って聞かせる」
「南雲さん! 美紀が起きないの!!」
明来の悲痛な叫びにそちらに目を向けると、三人の顔は土気色になりぐったりと四肢を投げ出していた。
「引っ張って外に出すんだ! ……彼女達に何をした?」
「私達霊は叩くことも出来ませんので」
「……内側からか!」
幻覚を見せ、精神を内側から蝕んでいく。
その影響は膨大で、それをされた者は廃人になった者も多い。
苦虫を噛んだ表情になった飛鳥に満足したのか、ゆり乃が楽しそうに笑う。
「社会復帰、出来るかしらね」
「もう充分だろ。三人は報いを受けた」
「……そうね、三人はね」
あと一人いるじゃない。
表情が抜け落ちた顔で指をさしたのは、美紀を引っ張りドアを目指す明来の姿。
革張りの椅子から立ち上がったと思えば、一瞬の内に彼女の傍へと移動した。
「逃げろ!!」
金縛りにあったかのように明来の動きが止まる。
恐怖に引き攣る彼女の耳元へ顔を寄せ、何か囁こうと口を開き――ゆり乃は動きを止めた。
「……今日は随分と賑やかね」
「な、にを……」
ゆり乃の視線が向かう先――飛鳥のすぐ後ろで、ゆっくりとドアノブが回る音がした。




