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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
夏は花火に海水浴
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40. いざ決戦へ


 空の色が藍から群青へと変わる頃。

 小紋時町の外交官の家――西園寺家の窓から、外を眺める少女がいた。

 硝子は割れ、錆びた嵌め込み式の格子は今にも崩れ落ちそうだ。


 腰まである濡羽色の髪は着物と同じ赤い色のリボンでハーフアップにされていて、横顔が朝日に照らされている。


 手入れのされていない庭の木に、雀等の小鳥が集まり、赤い実を啄んでいるのを見て微笑む。


「ッ、ぐ……うっ」


 清々しい朝に相応しくない男の呻き声に眉を顰める。

 次の瞬間には男の意識は再び沈み、静かな呼吸音だけが聞こえるようになった。



 ◇◇◇◇



 日がさす時間、特に朝が除霊に適した時間だと言われている。

 見えない事を恐れる人間(ヒト)は、暗い場所にこそ畏を生み出す。恐怖心は動きを阻み……隙を生む。

 対して日の登る朝は、一日の内で一番空気が澄んでおり、澄んでいる場所には不浄なモノは存在する事が出来ない。

 そう、人間は無意識の内にイメージが植え付いているからだ。


「だっつーのに、ここは……」


 一番澄んでいる時間ではないが、完全に登った太陽は燦々と輝き庭の緑を照らしている。

 それなのに陰鬱さを感じさせるこの場所に、飛鳥は背筋が冷えた。

 きっと、早朝に来たとしても同じだったのだろう。

 来たばかりだというのに既に帰りたい衝動に駆られるが、後ろに依頼人の明来が控えていることでぐっと堪えた。


「美紀はっ……大丈夫でしょうか」

「……ここは危険な場所です。先程も言いましたが、友達を見つけたらすぐ撤収。危険だと思ったら一人で逃げること。いいですね?」


 不安から尻窄みになる明来。

 飛鳥はそれには答えず、身の危険を感じたら一人で逃げるように念を押した。


「お邪魔しますよーっと」


 無意識に出た言葉に苦笑する。

 昨夜の洋平との話を思い出したからだ。

 靴も脱ぐべきかと一瞬悩んだが、非常時のことも考え靴のまま上がることにした。


 雨戸に遮られ、午前中だというのに陽の光が入らない室内を懐中電灯を手に進んで行く。

 明来が飛び出したドアは何故か閉まっていた。

 ドアノブに手を掛け、明来へと目配せすると、勢いよく開いた。

 

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