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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
夏は花火に海水浴
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38. 心配


 溜息混じりに放たれた洋平の言葉に一触即発の空気は消え、飛鳥は肩の力を抜いた。

 怒られた側の真琴は腑に落ちない顔をしているが、飛鳥としては大助かりだった。


 そんな彼の様子も洋平はしっかり察知している様で、伊達に悪霊達のトップ張ってる訳じゃないなと飛鳥は心の中で感心した。


「桜庭さんが言った通り、小紋時町の霊のことだ。教えてくれないか?」

「……気に入らねえ」


 一言。

 洋平が呟くと、苦笑を浮かべた周が真琴を連れて離れていく。


「え、ちょっと、梅さん!?」


 心配そうに声を上げた彼女に、洋平は初めて優しい顔を向ける。


「心配すんな。こいつが本当に話をしに来ただけなら、何もしねぇよ」


 睨むように向けられた視線に飛鳥は頷いてみせた。

 洋平の言葉に、少し安堵した真琴は、今度こそ周に連れられて行った。


 彼女の姿が見えなくなり、二人きりになったこの場を静寂が走る。


 先程切り捨てられた願いを再度どう切り出そうかと飛鳥が悩んでいると、彼が動く気配があった。

 宙を浮いたかと思えば、近くの大岩へと着地した洋平は、そのままゆっくりと腰を下ろす。

 そして――


「さて。男同士、じっくりと話をしようか」


 細められた瞳には、しっかりと侮蔑の色が灯されていた。


(やっぱ、気付いているか)


 彼女に道案内を頼まずとも一人で来れたことも、そして彼女を巻き込んだ理由も――



 ◇◇◇◇



 周に引っ張られ、洋平達の会話が聞こえない位置まで移動した真琴は、目に見えて落ち込んでいた。

 移動中にも周により優しく、しかしこんこんと諭されていたからだ。


「真琴ちゃんが困った人を放っておけない性格だってことは知ってるよ。だからその女の子の為に南雲を連れて来たってことも」

「…………」

「確かに南雲は因縁の相手だけどそれだけじゃなくて、洋平くんが心配して言ってるってことはちゃんと知ってて欲しいんだ」

「……うん」

「じゃあこの話は終わり。皆おいで」


 俯きながらもしっかりと返事をした真琴に周は困ったように笑い、木影から覗く子供達に声をかけた。

 途端、駆け寄って来る山の子供達。

 場の空気を察してか、いつもの元気はなく眉が下がった顔で顔色を伺っている。


「……ごめんね、心配かけたね」

「ううん、わたしたちはへいき! 夜におねーちゃんいるのはじめてだから、嬉しいよっ」

「そうだよ! ね、梅さん来るまで遊ぼうよ!!」

「じゃあ鬼ごっこするか! 俺が鬼。皆逃げろー!」


 周の言葉にキャッキャと嬉声を発しながら走り出した子供達。


「ほら、真琴ちゃんも早く逃げて。捕まえるよ?」

「えっ、あ……うん!!」


 遅れてやっと逃げ出した彼女にひとつ息を吐く。


「ほんっと、手がかかる……」


 その顔には優しい笑みが浮かんでいた。



更新遅くなってすみません。

熱でダウンしています。

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