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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
夏は花火に海水浴
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36. 神田山へ


「それじゃ、明日……一応迎え行く前に連絡しますので」

「はい……。よろしくお願いします!」


 明来が居なくなった車内に沈黙が満ちる。

 迎えに来た飛鳥は、明来の前でこそ追及して来なかったが、真琴が一緒に居た事に驚いた顔をしていた。


「あ、あのさ、兄さん」

「……なんだ?」


 後部座席に座る二人に目を向けず、運転し続ける飛鳥。

 旭は気まず気に肩を狭める真琴をチラリと見ると、息を大きく吸い込んだ。


「俺が桜庭さんに頼んだんだ。駅前で会って、俺も心細かったし。それに何があったか知らないけど、桜庭さんも小紋時町通るって言ってたから危険だと思って。それに、えっと――」

「分かった分かった。別に怒ってねぇって。それにちょうど桜庭さんに頼みたい事もあったしな」

「えっ、私に?」


 早口で捲し立てる旭に溜息を吐く。

 急に話を降られ驚く彼女をバックミラー越しに見る飛鳥の目は真剣で。旭は言い様のない寒気を感じた。


「兄さん……?」

「旭、もし危なくなったら……分かってるな?」

「ちょっ、ちょっと待ってよ! 何する気なんだよ!?」


 慌てる旭を尻目に、車はあっという間に八雲寺へと着いた。

 降りるのを渋る弟を無理矢理に降ろすと、飛鳥は再び車を走らせた。

 説明も無しに走り出した車だったが、飛鳥は近くのコンビニへと停めると真琴に助手席に来るように告げた。


「……桜庭さんは小紋時町の外交官の家って知ってる?」

「え? 外交官?」

「今日、何か変だと思う事無かったか?」

「そういえば駅前の霊達が――」


 駅前に霊が居なかった事、帰り道で視線を感じた事を報告するが、飛鳥は難しい表情のままだ。


「あっ、子供達が急に泣き出したりも……」

「子供達?」

「うん。さっきまで神田山にいたから」

「神田山か……」


 考えるように視線を彷徨わせる。

 訪れた沈黙に、遠くでクラクションの音が聞こえた。

 コンビニから出たバイクの音が遠ざかって行く。


「その神田山――梅宮洋平の所に連れて行って欲しいんだ」


 真剣な声の飛鳥に、真琴は思わず頷いていた。

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