31. 呪いの家 Ⅱ
タクヤの悲鳴に肩が跳ねた。
次の瞬間には、明来は駆け出していた。
リュウが開かないと言っていたドアが、呆気なく開いたのは覚えている。
それからは、よくわからない……。
泣きながら必死に走り、気が付けば知らない土地を歩いていた。
(……戻らなくちゃ。また戻って、美紀を――)
そう頭の中で声がする。
しかし先程の恐怖を思い出し、ガタガタと震え出した身体が一歩を踏み出せない。
(こうしている今も美紀達は……或いは私を追って近くまで――)
得体の知れないモノが、背後から這いずり近寄って来るような……。
嫌な予感に背筋が冷えた。
そんな明来の横を、一台の車が走り去って行く。
そのライトが照らしたそれを見て、導かれるように足を踏み出した。
◇◇◇◇
突然のチャイムの音に、親父と顔を見合わせる。
時計の短針はとっくに十二を過ぎており、人ん家を訪ねるには遅すぎる時間だ。
嫌な予感をびしびしと感じながら、俺は再びテレビへと目を向けた。
画面の中では、俺の操る勇者がそのステージのボスと向かい合う形で止まっている。
親父は歯磨きも早々に引き上げると、「明日早ぇんだ」と言い残し、寝室へと入って行った。
関わる気の無い親父に向けて溜息を吐くと、仕方無く玄関へと向かった。
テレビには地面に倒れた勇者と、ゲームオーバーの文字が映し出されていた。
「すすすすいませせせん」
玄関を開けたそこにいたのは、まだ若い女だ。
汗をかいて肩で息をしているというのに、女は寒そうにガチガチと歯を鳴らせている。
何があったのかは知らないが、余程怖い思いでもしたのだろう。
リビングへ通して改めて彼女を見る。
靴も片方しか履いておらず、裸足の方には血が滲んでいる。
(――ああ、面倒臭そうだ)
話を聞いている間、玄関を開ける前に親父が小声で言っていた「深追いはするなよ」の言葉が、ぐるぐると頭の中で駆け巡っていた。




