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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
春は出会いと花見酒
28/59

28. 八雲寺


 普段、除霊の仕事は寺の中で行うらしく、南雲家自体はどこにでもあるような普通の民家だった。

 客間でテーブルを囲む三人。何故か旭が真琴側に座り、二人で飛鳥と向かい合う形だ。

 暫く無言が続き、気まずい空気が流れる中、飛鳥が口を開いた。


「旭、お前は席を外すんだ」

「いやだ。俺もさっき桜庭さんの話を聞いて、他人事とは思えな――」

「いいから。お前は霊に関わるな!!」

「ッ!?」


 怒鳴り声に、真琴は身を縮める。

 旭は一瞬、真琴を申し訳なさそうに見ると、渋々退室して行った。

 残された二人に、沈黙が走る。


「……大きな声出して悪かった。だが、アイツをこの世界に巻き込みたくねぇんだ」

「うん。わかった」

「……聞かねぇのか?」


 素直に頷いた真琴に、飛鳥が苦笑を浮かべる。

 真琴自身、知りたくない訳ではなかったが、無理に聞き出す程でもなかったので、曖昧に頷いておいた。


「気を使わせちまったな。で、用は何だ?」

「いや、それが……成仏、できなくて……」


 飛鳥は腕を組んだまま真琴の説明を聞くと、真剣な顔で真琴を見据えた。


「その、片桐っつーのにはもう会ってないんだな?」

「え、うん。見付からなくて」

「会わなくて正解だ。そいつは悪霊になりかけてる……そういえば、安竹家の札にも悪霊の気があったな」


 安竹貴文の依頼で新しい御札を持ち訪問した時、確かに悪霊の気配が残っていた。


(だが、あれは最近なったばかりの気じゃなかったはず……)


 真中太一――除霊師・真中一平の(おい)にもその気があったという。

 そちらが片桐の気だとして、あと一人は……


 考え込んだ飛鳥に、真琴は意を決して話しかける。


「あのっ、片桐さん、助ける事は出来ないかな……?」

「……諦めろ。完全に悪霊になっちまったら、お前も喰われるぞ。関わらないのが一番だ」

「でも……!」

「それより、お前は自分の事だろうが」


 痛い所を付かれ、言葉を呑む。

 「少し待ってろ」と言い、席を立った飛鳥に、真琴は頷く事しか出来なかった。



 ◇◇◇◇



 席を立った飛鳥が向かったのはリビング。

 午前の仕事を終え、昼食中の父・泰三を見付けると事の顛末を話した。


「――それで? お前はどう思ってんだ?」

「悪霊にはなってねぇ」

「普通の浮遊霊って事か?」

「……普通の、とは違う気がすんだよなぁ」


 この場合は素直に成仏するものだ。通常ならば。

 本人が気にしている真中にした悪戯も、それくらいなら許容範囲内。

 現世に対する思い入れも人並みだ。

 だが、成仏していない。


 自分に話していないだけで本当はもっと悪さをしているのかとも考えたが、先の彼女の様子を見てすぐに振り払った。


「――悪さするようなヤツじゃねぇんだよ」

「へぇ? 随分と買ってんじゃねぇか」

「とにかく、一度見てやってくれ」


 飛鳥の言葉に、ニヤニヤとした笑みを向ける泰三。

 責めるように睨む息子の視線に、やっと重い腰を上げた。


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