27. 八雲 旭
八雲寺の入口、山門の前で、真琴は長い事行ったり来たりを繰り返していた。
四十九日を過ぎても成仏出来ていないという事実と、インターネットの検索結果から真琴は焦っていた。
お手上げ状態の真琴が彷徨った先に、それはあった。
”心霊関係でお困りの方、歓迎します”と書かれた八雲寺の案内看板。その言葉に引き付けられる様に足を運んだのだが、飛鳥に最後に会った時の会話を思い出し、一歩を踏み出せずにいたのだ。
「ううう……どうしよう。いきなり来ても迷惑、というか今悪霊だし……いきなり祓われたりして……怖いのは嫌だなぁ」
祓って欲しいのに、それが怖いという矛盾。
真琴は唸り声を上げながら、山門を睨み付けていた。
――八雲寺の僧侶、八雲旭は戸惑っていた。
桜の花が散るこの季節、毎日行う掃き掃除を終え、中へと戻ろうとしていたのだが、山門の前にいる女の霊を見付け、戻るに戻れなくなっていたのだ。
「気付かないふり……でも何か困っているみたいだし……駄目だ。兄さんにも霊には関わるなって言われてるし」
ここは気付かないふりで通そう。
あからさまに視線を外し、足早に通り抜ける。
しかしそれに気付いた女の霊――真琴が今が好機とばかりに前に立った事によって、その決意は無駄になる事となった。
「すみません! 南雲さん、えっと、南雲飛鳥さんいますか?」
戸惑いつつも足を止め、そちらを見る。女は門を潜り、旭のすぐ側へと寄って来ていた。
(門潜れているし……悪い霊だったらわざわざ除霊師に会いに来ないよなっ)
警戒しながらも、大分柔らかくなった表情で、改めて見た女は、どこか思い詰めた顔で本殿を見つめていた。
◇◇◇◇
「あの、何でにい――南雲さんに会いに来たのか聞いてもいいかな?」
八雲寺の敷地の隅。飛鳥の住む家までの移動中、旭の言葉に首を傾げた。
飛鳥と旭。顔が似ていた事から、親戚だとは思ったが、どうやら兄弟のようだ。
言いかけたのを直すあたり、隠す必要があるのだろうが、そっくり過ぎてあまり意味を成していないように感じる。
「実は――」
ここに来た経緯を話して聞かせる。
話の中で二人は同い年だという事が分かり、着く頃には最初の緊張感などなかったかのように、すっかりと打ち解けていた。
「……おい」
当初の予定など忘れ、家の前で話し合っていた二人に、静止の声が掛けられる。
何時までも入って来ない二人にしびれを切らしたのだ。
「兄さん! あっ、違っ、南雲さん!」
「お前なぁ……」
言ってしまった! と、ばつが悪いといった顔の旭と、何も聞いていないふりをする真琴。話している内に何度か完全に言い切っていたのだが、気付いていないようだ。二人を見て溜息を吐いた飛鳥は、とにかく家の中へ入るように促すのだった。




