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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
春は出会いと花見酒
27/59

27. 八雲 旭


 八雲寺の入口、山門の前で、真琴は長い事行ったり来たりを繰り返していた。


 四十九日を過ぎても成仏出来ていないという事実と、インターネットの検索結果から真琴は焦っていた。

 お手上げ状態の真琴が彷徨った先に、それはあった。

 ”心霊関係でお困りの方、歓迎します”と書かれた八雲寺の案内看板。その言葉に引き付けられる様に足を運んだのだが、飛鳥に最後に会った時の会話を思い出し、一歩を踏み出せずにいたのだ。


「ううう……どうしよう。いきなり来ても迷惑、というか今悪霊だし……いきなり祓われたりして……怖いのは嫌だなぁ」


 祓って欲しいのに、それが怖いという矛盾。

 真琴は唸り声を上げながら、山門を睨み付けていた。


 ――八雲寺の僧侶、八雲(やくも)(あさひ)は戸惑っていた。

 桜の花が散るこの季節、毎日行う掃き掃除を終え、中へと戻ろうとしていたのだが、山門の前にいる女の霊を見付け、戻るに戻れなくなっていたのだ。


「気付かないふり……でも何か困っているみたいだし……駄目だ。兄さんにも霊には関わるなって言われてるし」


 ここは気付かないふりで通そう。

 あからさまに視線を外し、足早に通り抜ける。

 しかしそれに気付いた女の霊――真琴が今が好機とばかりに前に立った事によって、その決意は無駄になる事となった。


「すみません! 南雲さん、えっと、南雲飛鳥さんいますか?」


 戸惑いつつも足を止め、そちらを見る。女は門を潜り、旭のすぐ側へと寄って来ていた。


(門潜れているし……悪い霊だったらわざわざ除霊師に会いに来ないよなっ)


 警戒しながらも、大分柔らかくなった表情で、改めて見た女は、どこか思い詰めた顔で本殿を見つめていた。



 ◇◇◇◇



「あの、何でにい――南雲さんに会いに来たのか聞いてもいいかな?」


 八雲寺の敷地の隅。飛鳥の住む家までの移動中、旭の言葉に首を傾げた。

 飛鳥と旭。顔が似ていた事から、親戚だとは思ったが、どうやら兄弟のようだ。

 言いかけたのを直すあたり、隠す必要があるのだろうが、そっくり過ぎてあまり意味を成していないように感じる。


「実は――」


 ここに来た経緯を話して聞かせる。

 話の中で二人は同い年だという事が分かり、着く頃には最初の緊張感などなかったかのように、すっかりと打ち解けていた。


「……おい」


 当初の予定など忘れ、家の前で話し合っていた二人に、静止の声が掛けられる。

 何時までも入って来ない二人にしびれを切らしたのだ。


「兄さん! あっ、違っ、南雲さん!」

「お前なぁ……」


 言ってしまった! と、ばつが悪いといった顔の旭と、何も聞いていないふりをする真琴。話している内に何度か完全に言い切っていたのだが、気付いていないようだ。二人を見て溜息を吐いた飛鳥は、とにかく家の中へ入るように促すのだった。


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