2. 家族との再会
海から陸へと上がる。真琴の生まれ育った町だ。
意地の悪い霊に道を尋ねてしまったために、随分と遠回りをしてしまった。
小高い丘の上に建つ実家が視界に入ると、自然と安堵の息を吐いていた。
ここまで来る間に分かったことは、普通の生きている人間に幽霊は見えないが、幽霊同士は見えるということ。
生きた人間のようにはっきりとではなく、半透明に見える彼ら。普通は驚くのだろうが、同時に死んだ人間が沢山いたため、真琴が慣れるのは早かった。
身体の濃さは人それぞれのようで、もしかしたら死んでから経った時間等も関係するのかもしれない。
「ただいまー」
遠回りしたとは言え、空を飛んで来たから意外と早く帰り着いたななんて考えながら、真琴は玄関の扉を通り抜けた。
いつも通り出迎えに来た飼い犬のモコに笑顔を向ける。
よく世間で言われているように、犬には生きていないモノも見えているようだ。
撫でて撫でてとお腹を見せて喜んでいるけれど、今ばかりは触れられないこの手がもどかしい。
「ごめんね……?」
様子が変なことに気付いたのか、心配そうな顔を向けてきた愛犬にもう一度口を開こうとするが、リビングの方から聞こえてきた泣き声によって掻き消された。
何事かと急いでリビングへ向かうと、テレビの前で泣き崩れる母と、呆然と立ち尽くす父の姿が。
「真琴ぉ! なんで……なんでよぉ……!!」
「あいつは……本当に、これに乗るって言っていたのか?」
「そうよ! お昼には着くって……ッ」
テレビに写し出されていたのは、つい先程まで真琴が見ていた風景。
画面下には乗客の名前がテロップで流れている。
そこに“桜庭 真琴(23)”の文字を見つけた二人は、それからは話すこともせずにただ泣き続けた。
「姉ちゃんはっ!?」
ドタバタと音を立てながら凄い形相で帰ってきた真琴の弟、優希。リビングに入るなり放り投げたショルダーバッグから、大学で使っている教科書やノートが散乱する。
「姉ちゃんが死んだとか、ウソだよな!? なあ!」
「……優希」
「昼までには帰るって言ってただろ!? なんでまだ帰ってきてねぇんだよ!!」
いや、帰ってきているよ。なんて突っ込む真琴の声が聞こえることはなく、優希は泣きながらずるずるとその場に座り込んだ。




