17. 予想外の事態
予定より早く終わった真琴達は、眞弓達の様子を見に行く事にした。片桐曰く、残り二人の精鋭については心配いらないらしい。
弟が虐めていたと聞き、怒りに震えていた眞弓。ストッパーとして藤井を付けたが、心配で堪らない様子の片桐。物凄い速さで移動するものだから、真琴は付いて行くだけで精一杯だ。
◇◇◇◇
大通り沿いの高層マンション。
思わず見上げた真琴だったが、片桐は慣れた様子で上層へと飛んで行く。一度調査の為に訪れたからだと聞いたが、何度来ても慣れないだろうと、足元を見た真琴は感じた。
十二階。目的の家へと着いた二人は、ベランダからこっそりと中を窺った。特に問題が無い様なら、そのまま帰ろうと思っての事だったが、その光景に真琴は目を丸くする事となる。
そこから見えるリビングは、空巣が入ったかの様に荒らされ、足の踏み場が無い程散らかっている。眞弓達は見当たらないが、こうしている間も何かが割れる音が聞こえる為、まだ暴れているのだろう。
「やっぱり……」
「片桐さん、やっぱりって…?」
予想の範囲内だったのか、そう呟いた片桐。真琴が尋ねると、苦虫を潰した様な表情で口を開いた。
「感情が、そのままエネルギーになりやすいみたいなの、幽霊って。器が無い分、感情がダダ漏れというか……だから、今回みたいに怒っている時なんかは特に注意が必要なのだけど……」
「うん?」
「下手したら、弟さん……死ぬわよ」
そう告げた片桐の顔には焦りの色があり、もう一度聞くのは気が引けた。
とにかく、危険だという事を理解した真琴は、何が何やら分からないまま、室内へと足を踏み入れた。
物音と、眞弓の弟である俊の泣き叫ぶ声で、居場所はすぐに判明した。
リビングとは比べ物にならない程散らかった室内。俊の部屋だろうか、床には男物の服が散乱している。その部屋の中央で、俊が泣き崩れていた。
側に立ち、弟を見る眞弓の顔は何故か涙で濡れていて、そこから怒りは見て取れない。だが、今もそこかしこで部屋中の物が飛び交っており、片桐は首を傾げた。
真琴は初めて見るポルターガイストに、思わず部屋の前で立ち尽くした。
「片桐さん……」
「藤井さん、説明して頂戴!」
眞弓を止めきれずにいた藤井が、二人を見付けて駆け寄った。ホッとした表情を浮かべる藤井に、片桐が詰め寄る。
「何で泣いているのよ! 怒ってるんじゃないの!?」
「最初はそうだったのだけど……」
藤井は言い難そうに言葉を濁すが、片桐のあまりの剣幕にぽつりぽつりと話し始めた。




