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さくらのはな  作者: 日縒 千夜
春は出会いと花見酒
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1. 終わりと始まり


 半分に折れた飛行機の機体が、ゆっくり海へと沈んでいく。



 ――ハイジャックだった。


 途中まで上手くいっていたそれは、止めに入った従業員を撃ち殺したことで一変した。


 機体に穴が開き、バランスを崩した飛行機は海へと墜落。その衝撃でぽっきり、といったところである。




 沈みゆくそれを()()()いる者は、皆一様に暗い表情で。大声で泣き喚いている者もいるほどだ。

 彼らは落ちた衝撃で投げ出されたという訳ではない。半透明な状態で宙に浮いているのだ。

 思いもかけず命を落とした彼らは、未だそれを受け入れられてはいなかった。




 そんな中、悲しんでいる様子もなく、未だ幼さの残る顔でそれを見下ろす女――桜庭真琴さくらばまことは異彩を放っていた。とは言っても、皆自分のことで精一杯で、それどころではない者が多いのだが。


「うわぁー……」


 どこか他人事のように呟いて、周囲を見やる。

 時間が経つにつれて増えていく宙に浮かぶ人間達。

 今となっては痛いはずなどないのに、頭を押さえて屈みこんでいる者や、己の身体を水の底へ行かせまいと、必死に向かって行く者達。

 機体の周りには、未だ中で苦しんでいる人々を助ける為の救助船が、慌ただしく動き回っている。


 真琴は彼らから視線を外すと、透けている自分の手を見つめた。


 幽霊というものは白い服を着ているものだと思っていたが、今の自分の恰好は死ぬ直前まで着ていたもので、えんじ色のワンピースに白のカーディガンという“普通”の恰好だった。



 海面へ墜落した衝撃で即死、だったのだろう。大して痛い思いをした記憶がない。打ちどころが悪かった――いや、良かったのかもしれない。

 何にせよ、苦しい思いをしなくてよかった、と今まさに救助されたばかりの血まみれの身体から抜け出した男を見て感じた。


 そのまま、自分の体や、未だ生きている人を乗せた機体が完全に海へと沈むのを見届けると、実家の方向へと向き直した。



 ◇◇◇◇



「こっちだよね?」



 真琴の問い掛けに、海面に漂うようにして浮いている“人だったもの”が頷く。

 生きていた頃から地理は苦手だったが、どこかしこに幽霊ってものはいるようで聞く人には困らなかった。

 彼らに尋ねながら、真琴は着実に実家の方向へと進んでいた。


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