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moment  作者: しん
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第四幕

今日は朝からみんなで長州藩邸に来ている。

「おお〜!!お前また来たのか!」

「晋作、年頃の娘さんにお前は失礼だよ。すまないね、ナナさん」

桂さんが高杉さんを嗜める。

「あ、いえ」

「ナナ!えげれす語が出来るらしいな!」

すごい勢いで高杉さんが詰めてくる。

「は、はい一応」

「そうなのかい?ぜひ、ご教授賜りたいな」

「なんか、えげれす語を教えろ!」

なんかって…無茶ぶりだな。

「んー、そうですね。それじゃあ、Nice to meet youなんかどうですか?」

「よろしくだろ!それくらいは分かる!もっと難しいのを教えろ!!」

「じゃあ、えげれす語で知りたい言葉があればそれを教えますよ」

「お!いいなソレ!そうだなー、じゃあ『好き』はえげれす語で何て言うんだ?」

「好きは『I like you』です。愛してるなら『I love you』です」

「あいらいきゅーと、あいらぶゆーだな!覚えたぞ!」

嬉しそうに教えたばかりの単語を子どものように繰り返す。

「博識だね」

「そんなことないです。」

「君さえ良かったら、定期的にえげれす語を教えてくれないだろうか?」

「わたしで良ければ」

「本当かい?助かるよ。送り迎えはちゃんとするから心配しないくていいよ」

「はい、ありがとうございます」

障子を開ける音がする。

「待たせたな」

大久保さんが部屋に入ってくる。

チラッとわたしを見て

「何だ、居たのか」

「寺田屋に一人にしておくのはと思うての」

龍馬さんが答える。

「ふん、それより先の件はどうなっている?」

「はい、万事上手く進んでいます」

慎太さんがハキハキと答える。

「そうか、では桂くん同盟の件は」

「はい、あの内容で問題ありません」

「なら、このまま進めるが構わないな高杉君」

「おう!男に二言はない!!」

ドンッと胸を叩いて大声で言うが、少しむせる。

「ゴホゴホ、ただ一つ条件がある」

「条件…?」

場が静まる。

「ああ、そのときの話し合いはナナも参加してもらう」

「え?」

みんなの視線が一気に集まる。

「理由は?」

「理由は決まってるだろ!面白いからだ!!!」

と胸を張って言う。

「晋作…」

桂さんは呆れてしまっている。

大久保さんも眉毛をピクピクさせている。

怒ってるんだろうなぁ。

「どうする?」

挑発するような目で高杉さんは大久保さんを見る。

「ふん、構わん!好きにしろ」

「さすが、大久保さんだ!」

高杉さんは嬉しそうに笑っている。

「して、武市君のはどうした?」

「以蔵なら少し用で出とるぜよ」

「あの者は腕は立つが、あまり頭は切れないとみえる。会合には連れてくるなよ」

「いつ新選組に見つかって口を割るかわからん」


プチッ。わたしの頭の中で何かが切れた音がした。


「今の言葉、取り消してください」


気づいたら口から出ていた。

「何?」

「以蔵さんがみんなを裏切るようなことは絶対にありません!取り消してください!」

「ナナさん…」

泣きそうになるのを必死で堪える。

「以蔵さんは、毎朝素ぶりをしているんです。雨が降っても毎日」

「以蔵さん言ってました、『俺はみんなみたいに頭が良くない。だから俺は俺の出来ることをする。俺には剣しかない。誰よりも強くなってみんなを守るのが俺の役目だ』って」

「そんな以蔵さんがみんなを裏切るはずありません!!!」

場がシーンと静まりかえる。

ハッとなって謝る。

「す、すみません!わたしなんかが口を出して」

障子が開く。

「以蔵さん…」

以蔵さんが立っていた。

「大久保さん、俺が信用出来ないならそれで構わない。だが、俺は決してみんなを売るようなことはしない」

そう言って以蔵さんが帰ろうとする。


「取り消す」


大久保さんが言う。

「先の言葉を取り消す。わたしの間違いだったようだ。」

「大久保さん」

この気まずい空気を変えたのは晋作さんだった。

「よし!なら仲直りの宴会だ!!酒を持ってこい!」

「お前はただ飲みたいだけだろう」

桂さんが呆れたように言う。

「飲みたいときに飲む!それが人生よ!」

酒や料理が運ばれてくる。

さっきまでの空気が嘘のように楽しい宴会になる。

「勝手に話すな」

以蔵さんが隣に座って言う。

「すみません。我慢出来なくて」

「全くお前ってやつは。今回は許す」

フッと以蔵さんが笑う。

「ありがとうございます」

「…以蔵でいい」

「え?」

「さん付けはやめろ。それと敬語も使わなくていい」

「じゃあ、以蔵」

「何だ」

「あ、呼んだだけ」

「用もないのに呼ぶな!」

「あははは」

「ふっ」

二人で笑い合っていると

「お前たちなにイチャついてやがる!?」

「イ、イチャ?」

「バカなことを言うな!」

以蔵が顔を真っ赤にして怒る。

「わはははは!以蔵が茹でダコになったぞ!」

高杉さんはゲラゲラと笑いながらお酒を飲んでいる。

「晋作、からかうのは止めなさい。ふふ」

止めに入った桂さんも笑っている。

「以蔵、これしきのことで赤くなるな」

武市さんが言う。

「先生~」

以蔵は泣きそうになってる。

「にしし。以蔵は女子には免疫ないからの」

「そうですね。あんなに真っ赤になって」

龍馬さんと慎太さんも笑って見ている。

「ふん」

大久保さんもチラリと見て口の端を持ち上げる。


暗い夜にみんなの笑い声が響き渡る。


「長居したな。帰る」

そう言って大久保さんが帰っていく。

「俺たちもお暇しましょうか」

「ほうじゃな。ほれ、以蔵しゃんとせんか」

ベロンベロンに酔っ払った以蔵が慎太さんに担がれている。

「全くだらしない」

といいながら、武市さんの足元は少しふらついている。

「お邪魔しました」

帰ろうと玄関へ向かうと

「ちょっと待った!!」

高杉さんに腕を掴まれる。

「ナナは残れ!」

「へ?」

「何言うてるがしゃ、高杉さん」

「俺はまだコイツのことをよく知らん!だから今夜は泊まっていけ!」

強引に引き寄せられる。

「な!高杉さんそれは困るぜよ」

龍馬さんがわたしの手を掴んで引き寄せようとする。

「何故困る?一日だけだ」

「じゃが…」

龍馬さんは困ったような目で見つめてくる。

「わたしなら大丈夫ですよ!桂さんもいますし」

「おい、何でそこで小五郎なんだ!」

高杉さんがツッコむ。

「おまんが嫌じゃないならえいんじゃが」

龍馬さんが心配そうに言う。

「わたしももう少し高杉さんと桂さんにお話したいんです」

「ほうか、なら明日の昼に迎えにくる」

「はい」


玄関まで見送り、宴会をした部屋に戻る。

片付けようとお盆にお皿を乗せていると

「いいよ、あとは藩邸の者がやってくれるから」

「そうだ!ナナは客人だ!雑用なんかしなくていい」

そう言って高杉さんはわたしを目の前に座らせる。

「で?」

「え?」

「だから、お前のことを聞かせろ」

「えっと…」

「急にそんなこと言われたら困るに決まっているだろう?」

「そうか、なら生まれはどこだ?」

「東京です」

「「東京?」」

二人とも首を傾げている。

「どこだ!そこは!」

「え!東京は東京ですよ」

「勉強不足かな、聞いたことがないね」

「うそ…」

東京を知らないってありえるの?

「東京はどんなところなんだ?」

「えーと、ビルがたくさんあって人もいっぱいいます」

「ビルっていうのは?」

「建物です。会社やお店が入っていたりします」

「ほう。どうやってここに来たんだ?」

「京都には新幹線に乗って来ました」

「新幹線?」

「すごく速い乗り物です。その後、護国神社にお参りに来たんですが気づいたらここにいました」

「なるほど」

「わかったぞ!!!」

急に高杉さんが勢い良く立ち上がる。


「さては、お前未来から来たな!」


いや、ドヤ顔されても

「突拍子もないことを」

「そうですよ」

「だが、東京なんてところ俺は知らないし、ビルや新幹線なんて乗り物見たことないぞ」

「まあ確かに」

桂さんも考えて納得する。

未来…だけどそれなら全部説明がつく。

着物を着た人たち、道路も車も走ってない。電柱さえ立っていない。こんなところわたしは知らない。そして、坂本龍馬、中岡慎太郎、武市半平太、岡田以蔵、高杉晋作、桂小五郎、大久保利通

もしかしてわたし、幕末にタイムスリップしちゃったの?

「ナナさん?」

はっと我に返って

「大丈夫かい?」

心配そうに顔を覗き込む桂さん。

「はい」

「まあ、そうだとしても大丈夫だ!何かあったら俺様に頼れ!」

仁王立ちして高杉さんが言う。

「はい」

不安は消えないけど、頼ってもいいと言ってくれる人たちがいる。なんて心強いんだろう。

「もう夜も更けた」

「そうだな。よし今夜は俺様が添い寝してやる」

「え!?」

「何言ってるんだい!お前はまだやることがあるだろう」

「明日やるから今日は」

「ダメだ」

「くそ~」

桂さんに引きづられていく。

「ナナさん、ちょっと待っていてくれるかい?」

「あ、はい」


少しして桂さんが戻ってくる。

「待たせたね」

「高杉さんは?」

「机の前に縛り付けておいた」

「縛…」

これ以上は聞かないでおこう。

桂さんについて部屋に案内される。

「今夜はここで休んでもらえるかい?」

「はい」

「それと、君さえ良ければ明日少しえげれす語を教えてもらえるかな?」

「はい、わかりました」

「ありがとう。今夜はゆっくり休むといい」

「はい。おやすみなさい」


部屋は一人部屋にしては広々としている。布団を敷いて慣れない畳の匂いを嗅ぎながら眠りに落ちる。


朝、桂さんが起こしに来てくれて三人で朝餉を食べた。その後に、桂さんとえげれす語の勉強をする。高杉さんも参加したがっていたけど、桂さんに止められていた。

「じゃあ、このtoと言うのは『~へ』という意味なんだね」

「はい、他にも意味はありますがだいたいこの意味で使われることが多いです」

「なるほど、勉強になったよ」

桂さんは冊子のようなものにサラサラと文字を書いていく。

「邪魔するぜよ」

障子が開く。

「あ、龍馬さん」

「迎えに来たぜよ」

「悪いね、わざわざ来てもらって」

「いんや、構わんちや」

「じゃあ、高杉さんに挨拶してから」

「いや、晋作にはしなくていいよ。きっと帰したくないって駄々をこねるだろうからね」

「それは困るぜよ」

「わたしのほうから言っておくから」

「ではお願いします」

「ああ、色々とありがとう」

「こちらこそ、お邪魔しました」

「あの件、頼んだよ」

「はい」

「あの件?何のことぜよ?」

「二人だけの秘密だよ。ね?」

桂さんがウインクする。

「はい」

「気になるぜよ!」

「ほら、早くしないと晋作に見つかってしまうよ」

「それは困る!さ、ナナさん帰るぜよ」

「はい、桂さんまた」

「ああ、気をつけて」

小走りで藩邸を出る。


「何か困ったことはなかったがか?」

「いえ、お二人とも良くしてくださいました」

「ほうか、なら良かった」

少し歩いて

「ほうじゃ。この近くに美味しい甘味屋があるんじゃ。ナナさん、甘いものは好きかの?」

「はい!大好きです!!」

「なら決まりじゃ!ちくと寄り道するぜよ」

道を逸れて、竹林の中を進んで行くと小さなお店が見えてきた。

「団子二つ頼むぜよ」

座って待っているとお茶と団子が運ばれてくる。

「ここの団子は絶品なんじゃ!食べてみ」

「いただきます」

パクッ

「……!!!美味しい!」

「そうじゃろ?」

優しい甘みとモチモチとした食感がたまらない!

龍馬さんも美味しそうに団子を食べている。

左頬に団子のタレが付いている。

「龍馬さん。ココ、タレ付いてますよ」

自分の頬を指差して教える。

「ここかの?」

逆の頬を拭う龍馬さん。

「ふふ。ココです」

そう言いながら、頬のタレを指で拭って舐める。

「……!!!」

「甘いですね。…龍馬さん?」

何故か固まって動かない龍馬さん。

「龍馬さん?どうしました?」

ハッとしたように

「あ、いやそのなんじゃ…」

歯切れの悪い返事が返ってくる。

「あ、わたしお金持ってない」

「大丈夫じゃ。わしが奢っちゃる」

「でも」

「面倒見るち言うたじゃろ?」

「ありがとうございます」

「お勘定」

「ありがとうございました~」

お店を出て、寺田屋へ向かう。

「龍馬さん、ごちそう様でした」

「おう。また食べに行こう」

「はい!」


寺田屋に着くと、玄関の前で以蔵が立っていた。

私たちを見つけると

「遅い!!!」

と怒鳴られる。

「そんなに怒るな。近所迷惑ぜよ」

「誰が大声出させてると思っているんだ!!」

「以蔵、どうしたの?」

何故怒っているのか聞いてみる。

「いや、龍馬がお前を迎えに行ってからだいぶ経つがなかなか帰ってこないから、何かあったのかと」

顔を逸らして答える。

「心配してくれたの?」

「別に!お前のためじゃない」

「ありがとう」

「以蔵は優しいのう」

「うるさい!さっさと中に入れ!」

寺田屋に入ると武市さんと慎太さんが部屋にいた。

「ナナちゃん、おかえりなさい」

「高杉さんに変なことされなかったかい?」

「添い寝されそうになりましたけど、桂さんが止めてくれました」

「「「「添い寝!?」」」」

四人がハモる。

「高杉さんに近づかせてはいけない」

「そうですね。」

「何かあってからでは遅いぜよ」

「……」

口々に言い合う。

「っと…そろそろ時間です」

「もうそんな時間か」

「ナナさん、帰って来てそうそうすまんが、わしらは少し出にゃいかんが、大丈夫かの?」

「以蔵は置いていくから何かあってら以蔵に言うといい」

「わかりました。行ってらっしゃい」

玄関まで見送って部屋に戻ると

以蔵が腕をさすっている。

「腕、痛いの?」

後ろから声をかける。

「少し痛むだけだ。すぐ治る」

「ちょっといいかな?」

以蔵の腕に触れる。

「な、何をする!!?」

「マッサージだよ」

「ま、まさー?」

「いいから、力抜いて」

少し困りながら力を抜く。

「うわー、すごい凝ってるね」

腕を揉みほぐす。

「いつもこんなもんだ」

「ダメだよ!ちゃんとほぐさないと!」

「そうなのか?」

「そう!素ぶりが終わったらマッサージしてあげるから」

「ああ」

反対の腕も揉みほぐす。

「上手いな」

「そう?よくお父さんの肩とか腕をマッサージしてたんだ」

「そうか」

ふと、そのときのことを思い出して寂しくなる。

「どうした?」

「ううん、何でもない」

「……俺は龍馬や先生のように助言はしてやれないし、慎太みたいに明るく話もしてやれないが、グチや弱音を聞くくらいなら出来る」

「……じゃあ弱音聞いてくれる?」

「ああ」

「わたしね、遠い遠いところから来たみたいなの」

「ああ」

「どうしてなのか理由はわからない。だから帰る方法もわからないの」

「そうか」

「どうしたらいいのかな、わたし」

「…どうもしなくていいんじゃないか?」

「え?」

「無理に何かしようと思っても、出来ないものは出来ないんだ。なら何もしないほうがいい」

「何も?」

「何も」

「…わかった!じゃあわたし何もしない!」

「そのほうがいい」

「ありがとう、以蔵」

マッサージを終えて少し話をする。

「ねえ、わたしも以蔵みたいに強くなれるかな?」

「剣を振りたいのか?」

「自分の身は自分で守れるようにしたいの」

「いい心掛けだな」

「でしょ?」

「なら、俺が教えてやる」

「いいの?」

「ああ、でも途中で辞めるのはなしだぞ」

「わかった!よろしくお願いします!以蔵先生」

「先生はやめろ」

「じゃあ、師匠?」

「先生以外なら何でもいい」

「師匠!」

立ち方、剣の構え方、基礎的なことから丁寧に教えてもらう。

「うん、なかなか筋がいい」

「本当?」

「ああ、俺より強くなるかもな」

「それはないよ」

あははは、と笑いながら稽古する。


「お疲れさまでした」

ヘトヘトになって倒れる。

「お風呂入ってくるね」

「ああ」

お風呂から上がると、

バシャバシャと庭のほうから音がする。

何だろ。

不思議に思って庭を覗くと

「きゃっ」

以蔵が上半身裸で井戸で水浴びをしていた。

「なんだ、もう上がったのか」

「うん、次に以蔵が入るかと思って」

「そうか」

と言ってそのままこちらへ歩いてくる。

「い、以蔵!着物着て」

「?ああ」

着物を着たのを確認して顔を上げる。

び、びっくりした~

「そういえば、腕はどう?痛くない?」

「ああ、かなり良い。すごいな」

「へへ。いつでも言ってね」

玄関の方から声が聞こえてくる。

「ただいま戻りました~」

「あ、慎太さんだ」

玄関へ迎えに行く

「おかえりなさい」

「ただいまです」

「ナナさん、以蔵にいじめられなかったがか?」

「そんなことするか!子どもじゃあるまいし」

後ろから以蔵が反論する。

「子どもかと思ってたぜよ」

「わたしからすればまだ赤子だ」

「先生まで」

「ふふ」

「お腹空きました!夕餉にしましょう」

「そうじゃな」

「わたし準備してきますね」

「頼むぜよ」

台所へ向かう。


夕餉を食べながら、以蔵に剣を習ったことを話すと

「ほお~。以蔵がのう」

「珍しいですね」

「何だ」

「いんや別に」

「そういえば、以蔵。先日から調子が悪いと言っていた腕は良くなったか?」

「あ、はい。ナナにマッサージしてもらったらだいぶ良くなりました」

「まっさーじ?」

「何じゃ、その助平な響きは!!」

「ナナちゃんに何かさせたんですか!」

「何勘違いしてる!腕を揉んでもらっただけだ」

「なんじゃ、紛らわしい」

「お前らが勝手に勘違いしたんだろ」

「ナナさんはそういうのが得意なのかい?」

「はい、よく父親の肩などを揉んでいたので」

「そうか」

「よかったら、肩お揉みしましょうか?」

「いいのかい?」

「もちろんです」

武市さんの後ろに移動して肩に手を乗せて、マッサージする。

「ああ、すごく気持ちいい。このまま眠ってしまいそうだ」

「武市、おんしだけズルいぜよ!」

「そうですよ!俺だってナナちゃんに揉んでもらいたいのに」

「みなさん順番でマッサージしますよ」

「えいんかの?」

「はい」

順番にマッサージしていく。

みんなのマッサージが終わり、

「はぁ~たまらんぜよ」

「至福のひとときって感じでした」

「肩が凝ったらいつでも言ってくださいね」

「ぜひ頼むよ」

夕餉の片付けをして自室に戻る。


「はぁ~。何もしなくていいかぁ」

何だかそう言われて心が軽くなった。

明日は明日の風が吹くってね。

そのまま眠りにつく。



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