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moment  作者: しん
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第三十四幕

ナナーside


あの後、追いかけてきた晋作さんと何故か鬼の形相をした慎太さんに捕まって寺田屋に戻った。


「全く、夜中にナナちゃんを連れ出すなんて、龍馬さんは何を考えているんだか」

慎太さんはまだ怒っているみたい。

「心配かけてごめんね、慎太さん」

「いえ、龍馬さんには俺からキツく言っておきますから」

龍馬さんごめんなさい。と心の中で謝る。

「すまないね。折角の水入らずのところを…」

「あ、いえ!お気になさらず」

「まあ、わたしも君に会いたかったんだけどね」

「こ、小五郎さんっ」


慎太郎ーside


何か、桂さんとナナちゃんの距離が前より近くなっている気がする。

「ねえ、以蔵くん。ナナちゃんと桂さんってあんなに仲良かった?」

「はぁ?そりゃあ、一週間も一緒に過ごしてたんだから、多少は仲良くもなるだろ」

「あれは、多少って感じじゃないんだよ」

「気になるんなら本人に聞けばいいだろ」

以蔵くんはああ言ったけど、こんなこと本人に聞けるわけないじゃないか。

どうしたものかと考え込んでいると…

「慎太さん?」

「へ?あ、何ですか?」

「考えごと?」

「い、いえ別に」

「そう?何かあったらいつでも言ってね」

「はい…」

ナナちゃんはそのまま龍馬さんのところへ行ってしまった。

わかってる。わかってるんだ、もう俺の入る隙なんてない。

だけど…

ぐいっ。

「ゴクッ、ゴクゴク」

慣れない酒を一気に飲み干す。

「お、おい。慎太、焼酎は飲めないだろ」

以蔵くんが止めるのを聞かずに杯を仰ぐ。

「ど、、して。俺じゃ…メな、だ」

いつの間にか目の前が真っ暗になった。


「さん、慎太さん」

体を揺すられて目を開ける。

「ん、うん」

「慎太さん、気分はどう?」

「大丈夫です」

「よかった。お水持ってくるね」

パタパタと台所へ向かっていくナナちゃんの背中を見送る。

飲み過ぎて倒れたのか…

「かっこわる」

「何がカッコ悪いの?」

水の入った湯呑みを手渡しながら聞いてくる。

「酒に飲まれるなんて男らしくないですよね」

「ふふっ。慎太さんはカッコいいよ」

「誰よりも真っ直ぐで、努力家で、女の子が旦那さんにしたい人ナンバーワンだよ!」

「ナナちゃんもですか?」

「え、?」

「ナナちゃんも俺のこと旦那さんにしたいと思いますか?」


ナナーside


慎太さんが目を潤ませながら聞いてくる。

しっかりしてるから忘れちゃいそうになるけど、確か、慎太さんってまだ十五歳だよね。

思春期で悩みも色々あるのかも。

「うん、思うよ」

そう言って頭を優しく撫でる。いつもなら、子供扱いしないで下さいって怒られるけど、寝ぼけているのか素直に撫でられたままだった。

ふふっ。可愛い〜

「何かしてほしいことある?」

「あ、いえ大丈…」

と言いかけて思いとどまる。

「ひ、膝枕してほしいです」

「いいよ。はい、どうぞ」

差し出した膝の上にそっと頭を乗せてくる。

「ふふっ、今日は甘えたさんだね」

そう言いながら、髪を優しく撫でる。

「ううん〜」

子どものように、腰に腕を巻きつけて抱きついてくる。

か、かわいいっ!

どうしよう、母性本能が大爆発だよ!

「よしよし」

慎太さんの背中をトントンとリズムよく叩く。


龍馬ーside

あれ、ナナさんはどこ行ったかの。

わいわいと酒盛りが続いている宴会の中を探すが見当たらない。

「中岡も居らんのぉ」

「慎太なら酔いつぶれて隣の部屋にいるぞ」

「何じゃ、珍しいの」

「俺も止めたんだが聞かなくてな」

「少し、様子を見てくるち」

そう言って腰を上げる。


「中岡、入るぞ」

スッと襖を開けると、ナナさんが居った。

「あ、龍馬さん」

「おまん、ここに居ったがか」

覗くと中岡がナナさんの腰にしがみ付いておる。

「慎太さん少し飲み過ぎたみたいで」

「ほうか」

しっかし、いくら何でもくっ付き過ぎじゃ。

中岡を離そうと引っ張るがビクともしない。

「り、龍馬さん?」

「おまんの膝が痺れるち、布団に寝かせるぜよ」

「え、でも」

「こんのっ、離れんか!」

ぐぐぐっ。

「龍馬さん、わたしなら大丈夫ですから」

「しかしの」

「きっと、甘えたいんですよ。まだ十五歳なんですし」

と、愛おしそうに中岡の髪を撫でよる。

なんじゃ、気に食わんの。

「こちらは大丈夫ですから、龍馬さんは宴会に戻ってください」

「わかったぜよ」

トボトボと宴会の席に戻る。

「どうしたー坂本?変な面してるぞ」

「別になんちゃーない」

「ナナはどこだ?」

「隣で中岡を看てるぜよ」

「はーん、そう言うことか」

ニヤニヤと高杉さんがこちらを見てくる。

「何ぜよ高杉さん」

「いい気味だ!わっはっはー!」

そう言って、嬉しそうに酒を飲んで腹踊りを始めた。

明け方になってようやく宴会が終わった。


「ん、んん..」

目を覚ますと、もう昼をとうに過ぎとった。

ナナさんを探しに台所へ行くと女将しか居らんかった。

「女将、ナナさんはどこ行ったが」

「ナナはんなら中岡はんと昼餉の買い物に行ってもらってます」

「ほうか」

それなら、帰ってくるのを待っとるかの。


慎太郎―side


「慎太さん、お買い物に付き合ってくれてありがとう」

「お安い御用です」

ナナちゃんと二人で出掛けるのは久しぶりだ。

「甘味屋に行きませんか」

「最近、新しいお店が出来たんですよ」

「そうなの?行きたい!」

「こっちです」

ナナちゃんの手を引いて歩く。小さくて滑らかな手だ。

ずっとこの手を握っていたいな。


甘味屋に着いて、団子を2つ頼む。

「おっ、慎太坊じゃねぇか」

「おじさん、こんにちは」

「この娘かい?この前、連れてきたいって言ってたのは」

「はい、ナナちゃんです」

「はじめまして」

「エライ、別嬪さんじゃねぇか」

「いえ、そんな」

「ナナちゃんは可愛いですよ」

「ひゅう~。メロメロだなぁ」

「今日は店の奢りだ。たくさん食べて行きな!」

「ありがとうございます」

「いただきます」


「ご満足いただけましたか?」

「うん!とっても美味しかった!連れてきてくれてありがとう」

「喜んでもらえてよかったです」

「何だぁ?他人行儀な話し方だなぁ」

「え、そうですか?」

「もう少し砕けて話さねぇと、距離も縮まらねえぞ」

「敬語じゃなくてもいいよ」

「そ、それじゃあ。帰りま、じゃなくて帰ろうか」

「ふふっ。うん」


店を出て歩いていると、道端で男の子が泣いていた。

「ふぇぇ〜〜んっ!!」

「どうしたの?」

「うっ、さっき転んで、うっ」

「怪我しちゃったんだね、ちょっと待ってね」

そう言ってナナちゃんは手ぬぐいを巻いてあげていた

「ねぇ慎太さん、この子を家まで送ってもいいかな」

「いいですよ。よいしょっと」

男の子を背中に乗せて家まで送って行く。


「ごめんくださーい」

男の子の案内で着いた家の門を叩く。

「はい」

人の良さそうな主人が出てきた。

「何用でしょ、、与一!?」

「とと様!」

「どうしたんだお前」

「道端で転んだようでしたので、勝手ながら送らせていただきました」

「そうでございましたか!これは、うちの倅がご面倒をお掛けしました」

「どうぞ、上がっていってください」

そう言われてお茶をご馳走になった。


そろそろお暇しようかと腰を上げたとき、

ザァーザァー

ゴロゴロピッシャーン!

「きゃあっ」

「降り出してきましたね」

当分は止みそうもないなぁ。

「よかったら今日はこちらにお泊まりください」

「部屋も余っておりますし」

「では、お言葉に甘えさせていただきます」

お風呂をいただき、みんなで夕餉を食べる。

ご主人から夕餉のあとにお酒を勧められて少し頂く。

案内された部屋に入ると枕が2つ並べてあった。

「こ、これはっ..!」

「確実に勘違いされてるね」

「ご主人に部屋をもう一つ用意してもらいます」

「い、いいよ!そんなの悪いし、それに雷が怖いから一緒に居てくれると嬉しいな」

仔犬のような目で見つめられる。

「で、でも」

「慎太さんが嫌ならしょうがないけど」

「嫌じゃないです!!」

「本当?よかったぁ〜」


灯を消して布団に入る。

「大丈夫ですか?」

「うん、慎太さんがいてくれるから平気」

ドクン、ドクン。

落ち着け、俺の心臓。

「ねぇ慎太さん」

「は、はい」

「また敬語になってるよ」

「まだ、慣れていなくて」

「ふふ」

「眠れないの?」

「…うん」

ゴロゴロガッシャーン!

「きゃああっ!!」

「ナナちゃん、大丈夫?」

「っう、ひっく…」

布団を出てナナちゃんの側に駆け寄る。

「落ち着いて」

「う、っく」

宥めるように背中を優しく撫でると、ナナちゃんが俺に抱きついてきた。

「っ!!!?」

「な、ナナちゃん?、」

「少しだけ…このまま、ひっく」

「うん」

震える背中を優しく抱きしめる。

「…ごめんね、もう平気……。慎太さん?」

「守るよ。俺が必ず」

「ありがとう」

手のひらで頬に触れると、安心して目を閉じる。

「ナナちゃん…」

桜の花びらのような唇を壊れないようにそっと親指で触れる。

頭の奥でずっと警報が鳴ってる。

ゆっくりと顔を近づけていく。

触れるか触れないかの口づけをひとつ落とす。

腕の中で、驚いて目を大きく開ける。

「慎太さん..?」

「…この雷が止むまで」

ギュッと抱きしめる。


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