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第39話

 スケルトンナイトの鋭い剣筋が閃くと、ヘイデンとロゼッタは持っていた武器を落として地面に突っ伏した。


「ヘイデン! ロゼッタさん!」


 ルミが叫ぶ。そして彼女はふつふつと感じていた。今対峙しているモンスター達は、今まで戦ってきたそれとは質が全く違うことを。

 ヘイデンもロゼッタも信じられないといった表情で、眼前のスケルトンナイトを見つめていた。自分達の攻撃がまるで効いていないのだ。

 後方からモンスターと化したアシモフが悠然と近づいてくる。


「イーサン……。冥土のみやげにいいことを教えてあげましょう」


「何だと……!?」


「もし、あの時貴方が皇帝になることから逃げずに帝位に就いていれば、弟のパルパレオス様は死なずに済んだでしょう」


「どういうことだ!?」


 イーサンは不審そうに訊いた。

 アシモフは続ける。


「無能な貴方が皇帝になっていれば、私は貴方を傀儡に政治の実権を握り、この国を私の理想通りに作り替えるつもりでした。しかし、貴方の代わりに皇帝となったパルパレオスは私の野望を見抜き、私を政治の表舞台から降ろそうとした。……だから暗殺したのですよ。この手でね」


「な……なんだって!?」


 イーサンは驚愕の表情を浮かべた。それと同時に激しい怒りが沸き起こった。


「それじゃあ、お前がパルパレオスを殺したのか!? アシモフ!!」


 アシモフはニヤリと不気味な笑みを浮かべると、首を横に振った。


「いいえ、弟君を殺したのは貴方です。イーサン……。貴方が皇帝になっていれば、私はパルパレオスを殺す事はなかったのですよ……」


「そ、そんな……。俺が、パルパレオスを……殺した……」


 イーサンは呆然とした表情で力なくその場にへたり込んだ。ルミは心配そうにイーサンを見つめている。


「では、地獄に旅立って貰いましょう!」


 スケルトンナイトの激しい攻撃により、傷ついていくルミ達。イーサンは立ち直れず気力を無くしている。

 そんなイーサンをアシモフはあえて攻撃しなかった。まず邪魔者の3人を片付けてからゆっくりとじわじわとなぶりながら弟の後を追わせてやろうと考えた。

 傷つき倒れるルミ達を見ながらアシモフは満足そうにしている。


「そろそろ楽にしてあげましょう」


 アシモフの全身が禍々しいオーラで包まれていく。イーサンはその様子を見ながら何も出来なかった。


「くそっ! 俺は、俺は……!」


 その時、イーサンの耳に懐かしい声が響いた。


「兄さん……、兄さん……」


 この声は!?

 イーサンは顔を上げた。そこにいたのは死んだはずのパルパレオスだった。


「パ、パルパレオス!」


 イーサンは叫ぶ。霊体となったパルパレオスは優しく微笑んだ。


「久しぶりに会いに来てくれて嬉しいよ。兄さん……」


「パルパレオス……、すまなかった……。ダメな兄貴で……」


「兄さん。自分を信じるんだ。俺はいつまでも見守っているよ……」


 パルパレオスはそう言うと光と共に消えていった。


「さあ、これを食らってくたばるがいい!!」


 アシモフは極限破壊魔法の詠唱を終えようとしていた。


「こ、ここまでなの……?」


 ルミ達の表情に絶望の色が浮かぶ。

 しかし、イーサンは今までに味わったことのない感覚に襲われていた。その瞬間、イーサンの脳裏に旋律が浮かんできた。


「何だ!? 頭に楽譜が浮かんでくる……!?」


 イーサンは竪琴を取り出すと頭に浮かんでくる楽譜を演奏した。彼の指先から力強い旋律が奏でられる。


「こ、この音楽は……」


「力が……、力がみなぎってくる!?」


 イーサンの演奏を耳にしたルミ達の全身に力が溢れてくるのを感じた。

 傷つき倒れていた3人は立ち上がった。


「な、なにぃぃぃ!? バカな!!」


 狼狽するアシモフ。


「この力があれば、いける!」


 アシモフに叱咤されたスケルトンナイトは慌てて剣を構えルミ達に襲いかかった。しかし、ルミ達はその攻撃を軽々と回避した。


「うおおおおおお!!!!」


「ええええええい!!!!」


 ヘイデンとロゼッタは空高く舞い上がると、スケルトンナイトめがけて強烈な一太刀を浴びせた。ヘイデンの短剣で真っ二つになり、ロゼッタのハンマーで粉々に破壊された。

 ルミは両手に集中させた魔力をアシモフめがけて解き放った。


「いっけええええ!!!!」


「ぬおおおおおお!!!!」


 ルミの放った大閃光魔法がアシモフの全身を飲み込んでいき、その呪われた身体を浄化していく。閃光が止むと、アシモフの姿は跡形もなく消えていた。

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