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第27話

「ねえ、風のジュエルってどこにあるのかな」


「さあ、判らないわね」


 昨日の夜、黒フードの男から告げられた衝撃的な事実、それは、ルミ達の故郷であるアナテマ大陸が大陸ごと封印されてしまった。そして、奴らは次にここイシュタリア大陸にある風のジュエルを狙っているのだ。このままあの連中の手に風のジュエルが渡ってしまえば、この大陸もアナテマ大陸と同じ運命を辿る確率は極めて高い。

 ロゼッタは昨日あの場に居合わせなかったが、今朝ルミから事情を聞いた。

 アナテマ大陸に行けない以上、もうこの街に滞在する意味はない。奴らの魔の手から風のジュエルを守らねばならない。しかし、三人ともこの大陸に来たのは今回が初めてだった。なので情報収集する必要に迫られた。

 三人は街の人達に話を聞いた。どうやらここから北に行くとライザ国があるらしい。そこに行けばもっと多くの情報が手に入るに違いない。


「じゃあとりあえずライザ国に向かいましょう」


 ルミが決断すると、ヘイデンとロゼッタはうなずいた。次の行き先は決まったので、三人は港町リティルを出立した。


「そう言えば、ライザ国ってレフリ国と戦争している国じゃなかった?」


 ロゼッタの言う通り、ルミ達はプロパの街の市長からの依頼で大剣をレフリ国の将軍に届けたが、そのレフリ国と戦争をしているのがライザ国だったはずだ。

 ヘイデンが呟いた。


「戦争に巻き込まれるのは御免だよな」


 確かにそうである。ルミ達は一刻も早く風のジュエルを見つけないといけないので、余計な戦いに巻き込まれて時間を浪費するのは避けたかった。

 しかしルミは、出来るなら戦争を止めたかった。黒フードの男の計画が進めばより多くの人が犠牲になるので、優先すべきは黒フードの男を倒すことだろう。だが、ライザ国とレフリ国の戦争によって失われる命だってあるのだ。どんな形であれ、命が犠牲になるのは嫌だった。

 ライザ国まで続く道は寂しげで、往来する旅人の姿はほとんどなかった。たまに馬車とすれ違う程度だった。

 やはりこの大陸でもモンスターの活動が活発化していると思われる。

 道半ばを過ぎた辺りで、前方に細い棒の様なものが地面から生えているのが視界に入った。


「あれなんだろ」


 ルミは早足で近づくと、その棒はみるみる巨大化して見上げる程の大木になった。


「わあっ」


 びっくりして尻餅をついたルミの元にヘイデンとロゼッタが駆け付ける。大木からは禍々しい邪気が発せられていた。三人は瞬時に悟る。これは大木の姿をしたモンスターだと。

 大木のモンスター、ドリアードは怪しげな風を巻き起こした。その強風に葉っぱを乗せてルミ達めがけて発射した。木の葉は鋭利な刃物を装着したブーメランの如く襲いかかる。ルミは間一髪の所でその攻撃を回避した。木の葉の刃はそのままの勢いで遥か後方の岩を切り裂いた。


「こんな所でぐずぐずしてられない!」


 ルミ達はすぐさま反撃に転じた。ヘイデンとロゼッタが接近戦に持ち込むが、ドリアードは中々にしぶとかった。ヘイデンの短剣を食らってもその動きは止まらず、ロゼッタのハンマーによる殴打もドリアードに決定的な打撃を与えるに至らなかった。

 ルミはこれまでと違う感覚に襲われていた。今の自分になら出来るかもしれない。アカデミー時代に使う事を許可されなかった中級魔法を。

 意を決したルミは魔力を集中させ、これまでよりもっとそれを深化させた。

 ドリアードはもう一度木の葉ブーメランを飛ばしてきた。鋭い刃が勢いをつけてルミの方へと飛んでくる。だがルミはそれを避けようとせず、両手を前方に突き出すと一気に魔力を解放した。

 ルミの両手から放たれた火炎魔法は今までのよりも明らかに大規模だった。大火炎魔法であった。大火炎魔法は木の葉ブーメランを瞬時に焼き尽くすと、そのまま勢いを落とすことなくドリアードに命中した。地獄の業火と形容するに相応しい威力の大火炎魔法は瞬く間にドリアードを燃やし尽くした。後にはドリアードの姿は影形も残らなかった。


「す、すげえじゃん! ルミ!」


 ヘイデンが駆け付けてルミをねぎらう。ルミは無邪気な笑顔を見せた。ライザ国まであと少しだ。

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