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第25話

 レフリ国城下町に辿り着いたルミ達一行は、一息つく暇なくジョーンズ将軍がいる宿舎へと赴いた。

 宿舎の受付の人に用件を話すと3階にある将軍専用の待機室に通された。そこには一人の中年の男性が椅子に座ってくつろいでいた。彼がジョーンズ将軍の様だ。いかにも歴戦のつわものといった強面の顔をこちらに向けると椅子から立ち上がった。


「ジョーンズ将軍ですね。プロパの街からの使者です」


 プロパの街からついて来ていた兵士が将軍に丁寧に挨拶すると、ジョーンズ将軍はその仏頂面を緩めてにこやかに挨拶を返した。


「これはこれは、遠くからわざわざご苦労様です」


 兵士と将軍は軽く世間話を済ますと、早速本題へと入った。


「実は、市長から預かっているものがあります。これを将軍殿にと」


 そう言って兵士は背中に背負っていた大剣を将軍に手渡した。将軍はしばらくその大剣をまじまじと眺めて、もう一度兵士に目線を向けた。


「これを、プロパの街の市長殿が?」


 将軍は兵士に尋ねた。兵士はうなずくと、


「はい。今度のライザ国との戦いに是非とも役立ててもらいたいとの事です」


 兵士はそう言って一礼した。将軍は再度受け取った大剣を眺めている。

 ルミ達は兵士と将軍のやり取りをただ黙って見守っているだけだった。ヘイデンは退屈になったのか小声でルミに話しかけた。


「まだ終わらないのかな」


「うん、まだみたいだね」


 将軍はかなり長い間大剣を食い入る様に観察していた。そして、ようやく口を開いた。


「この大剣……。確かに見覚えがある」


 兵士は顔色一つ変えなかった。ルミ達は将軍の方を向いた。将軍はなおも続ける。


「そう、あれは確か一月ほど前の決戦だった。ライザ国のフラナガン将軍がこれと全く同じ大剣を振り回し、我が軍勢を蹴散らしていた。その威力は凄まじく、一時期我が軍は壊滅寸前の所まで追い詰められた。我々は力を合わせてどうにか盛り返し、フラナガン将軍が持っていた大剣を破壊する事に成功したのだ。あの時の忌々しい大剣が、なぜプロパの街の市長が?」


 ルミは頭の中である仮説が形作られた。自分達がこの依頼を受ける前に、別の人がプロパの街の市長から依頼を受けていたのだ。ただし自分達と違うのは、その人はライザ国に武器を運んだのだ。つまり、プロパの街の市長はレフリ国、ライザ国両方に武器を供給していたのだ。だがなぜそんな事を?

 4人は宿舎を後にした。兵士は満足そうにルミにねぎらいの言葉をかけた。


「ありがとうございました。あなた達のお陰で無事レフリ国に武器を届ける事が出来ました」


「これでオレ達は自由に旅に出られるんだな」


 ヘイデンが確認した。兵士は二回うなずいた。とりあえずこれでプロパの街から移動出来る様になった。ルミ達は元の大陸に戻らねばならない。その為には船に乗らねばならない。


「この近くに港町はないのかしら」


 ロゼッタの問いに兵士は答えた。


「ええ、ここから西にいった所にあります」


 ルミ達はその情報を聞くと居ても立っても居られなくなった。早くその港町に行って船に乗り、シャールメール王国に戻ろう。

 兵士に別れを告げ、レフリ国城下町を後にしたルミ達は西へと進んだ。途中モンスターが何匹か襲ってきたが、ルミ達にとっては何の問題もない相手ばかりだった。

 しばらく歩いていくと、宿屋があった。ルミ達はその宿屋で一泊し英気を養うと、再び港町を目指して歩き出した。

 この時、ルミ達は知る由もなかった。自分達の故郷であるクラニア王国やシャールメール王国があるアナテマ大陸がどんな状態になっているかを。

 遥か高みから一人の少年がルミ達の様子を静かに眺めていた。少年は特にルミに注目した。彼女こそ、世界を救う伝説の天竜なのだろうか……。

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