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第24話

 プロパの街を出て、レフリ国へと続く道をルミ達3人と1人が歩いていく。ルミの横には巨大な大剣を背負った兵士が黙々と歩いていた。この兵士はプロパの街のアンドリュー市長の配下で、レフリ国将軍ジョーンズに渡す予定の大剣を運ぶ役でもあり、またルミ達が市長の依頼をしっかりと遂行するかどうかを監視する役でもあった。

 しかし、見方を変えると、自分達がこの兵士を、レフリ国までの道中モンスターから守る役を担っていると言ってもいいのではないか。

 ルミはロゼッタにひそひそと話しかけた。


「ロゼッタさん。中立ってのは、どっちの味方にも付かない立場ってことだよね」


「そうね」


 ロゼッタはそっけなく答えた。

 ルミはどうしても分からなかった。ライザ国とレフリ国が戦争をしていて、プロパの街は中立であると。そこまではいい。しかし今、自分達はプロパ市長の依頼で、レフリ国の将軍に武器を運んでいる最中だ。つまりレフリ国に協力しようとしているのだ。これを中立というのだろうか。

 ロゼッタは少し考えて、言った。


「私も政治に詳しい訳じゃないからわからないけど、プロパの街が中立というのは表向きの態度であって、裏ではレフリ国と繋がっている、っていう事かもしれないわね」


 なるほど、そういうことか。とルミは思ったが、やはり釈然としない。アンドリュー市長は自分達は中立である、としつこいくらいに強調していた。まるで試験でいい点数をとった学生が、友達にその答案を見せびらかして自慢するような。市長の言い方はそんな感じだった。


「それより早く依頼をこなして港のある街まで行かないとな」


 ヘイデンの言う通りで、今はロレンス達やシャールメール王国がどうなったのか確かめる方が大事なことだ。

 しばらく歩いていると、上空から奇怪な鳴き声が聞こえてきた。ルミ達は声のした方を向いた。すると、4匹の鳥形モンスターがこちらに狙いを定めて近づいてくる。


「モンスターか!」


 ヘイデンの掛け声を合図に三人は戦闘態勢に移行した。プロパの街からついてきた兵士は少し離れたところから様子を見ている。モンスターはルミ達のすぐ真上辺りまでやって来た。あれは鳥形モンスターのアンフィスバエナだ。

 アンフィスバエナは奇声をあげながらルミ達めがけて突撃してきた。ルミとヘイデンはその攻撃を軽快に避けた。しかし、ロゼッタはかわし切れずにアンフィスバエナの突撃を食らってしまった。だが、頑丈な鎧のおかげかほとんどダメージを受けていない。


「いけー!」


 ルミは素早い動作で魔力を集中させると、間髪入れずに氷結魔法を放った。鋭い氷の槍がアンフィスバエナの胴体を貫き、奇声をあげて絶命した。


「すごい……、魔力があがってる」


 ルミは自分の魔力がふつふつと上昇している手ごたえを掴んでいた。幾度の戦闘経験が彼女を成長させたのだ。

 ヘイデンは短剣を構えると、1匹のアンフィスバエナに狙いを定め、助走をつけて勢いよく飛翔した。そしてアンフィスバエナの右翼を鋭く斬りつけた。片方の翼を失ったアンフィスバエナは、地面に墜落した。ヘイデンはそこを逃さず短剣でとどめを刺した。

 上空にいる1匹のアンフィスバエナはロゼッタに狙いを定め、もう一度突撃してきた。ロゼッタはハンマーを構えると静かに待ち構えている。アンフィスバエナがロゼッタにぶつかる寸前の所を見計らって、渾身の力を込めて頭部を叩きつけた。頭を砕かれたアンフィスバエナは情けなく地面に落下し、動かなくなった。


「おおっ、すごい……!」


 遠くから戦闘の様子を見ていた兵士は、ルミ達の強さに感心した。これほど戦い慣れた冒険者はそうそういないと思われた。

 残る1匹のアンフィスバエナを難なく片付けたルミ達は、武器をしまうと再び歩き始めた。すると、遠くの方に大きな街が見えた。


「あれがレフリ国です」


 兵士が説明した。あそこにいる将軍に武器を届ければ依頼は終了だ。ルミ達の足取りは自然と早まった。

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