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第16話

 世界のどこかにある無人の古城に、黒いフードを纏った者達が集結していた。


「十悪がついに姿を現した」


「しかも、その内の一匹が早速葬られたようだ」


 黒い者達はフードのせいで顔がまったく見えないが、老若男女様々な人間がいるようだ。中央に陣取っている人物が集団のリーダー的なポジションにいるようだが、他のメンバーはその人物に特別な敬意を払っている様子はない。

 黒い者達の会談は続く。


「葬られたのは愚王ジェラオンか」


「残るは9体……」


「全ては我々の描いたシナリオ通りに事は進んでいる」


「残る3つのジュエルの回収を急ごう」


「母なる理想郷の為に!」





「いっけーーー!!!」


 ルミの放った真空魔法の鋭い刃が、サイクロプスの巨躯を切り裂いた。凄まじい地響きと共に、サイクロプスは崩れる様に倒れた。


「ふうっ」


 ひと息つくルミの元に、村人達が駆けつけてきた。


「すごいじゃないか!お嬢ちゃん!こんなでっかいモンスターを倒しちまうなんてさ!ありがとうよ、お陰でこの村は平和になったよ!」


 きっぷの良さそうなおばさんが拍手してルミを称えた。


「えへへ、どういたしまして」


 ルミは照れながら答えた。

 愚王ジェラオンを倒し、闇なき峠を越えたルミとヘイデンはすぐ近くにあったここ、シルザ村に休息の為立ち寄っていた。

 村民の代表格のおばさんによれば、この村は少し前までは、モンスターに襲われる事など滅多にない、平和な村だった。

 しかし最近になってサイクロプスという巨人型のモンスターが現れ、村人が襲われる事件が相次いで起きた。

 けが人が増えて困っていた所にルミ達がやって来たのである。

 ルミは話を聞くと、すぐにサイクロプス討伐に向かった。そして、討伐に成功したのだった。


「でもまた似たようなモンスターが出てくるかも……」


 村人の一人が不安げにつぶやいた。

 しばらく様子を見ていたヘイデンがルミに話しかけた。


「これってルミが教えてくれたやつか?」


 ルミは深刻な表情で答えた。


「うん……。やっぱり氷のジュエルの加護がなくなった事で、今までいなかった強力なモンスターが生活圏に入ってきてる……」


 この村はしばらくは大丈夫かもしれないが、いつまたサイクロプスの様なモンスターに目をつけられるか判らない。一刻も早く氷のジュエルを黒フードの男から取り戻さねば……。

 だがそろそろ日が暮れそうだし、長旅の疲れもあったので、ルミ達はシルザ村の宿屋で一泊する事にした。

 夜。ヘイデンは既にベッドでいびきをかいている。

 ルミはテーブルの上に水晶玉を置くと祈りを込めた。程なくして水晶玉に男性の顔が浮かび上がった。ルミの師匠、バロックだ。


「ルミ……!なかなか連絡がつかなかったので心配していましたよ!」


「先生……、ごめんなさい」


「ロレンスからルミが川に落ちたと聞いていましたが、無事で何よりです。所で貴方は今どこにいるのです?」


「シルザ村の宿屋です」


「シルザ村……、随分と遠いところにいますね」


「あの、先生、ロレンスさん達は?」


「貴方の捜索をしていたのですが、見つからなかったので仕方なく一足先にシャールメール王国に向かいました」


「そうですか……。心配かけちゃってごめんなさい」


「向こうに着いたら本人達にも言ってあげて下さい。心配していましたからね」


「わかりました」


 ルミはバロックに、ここまでの旅の事を話した。その後しばらく会話をして通信を終了した。

 次の日、おばさん達に挨拶してシルザ村を発ったルミとヘイデンは、シャールメール王国に続く街道にたどり着いた。


「この街道をずっと行けばシャールメール王国だ」


 ヘイデンは向こうを指さしながら言った。

 街道はあまり整備されておらず、旅人の姿は全くない。今にもモンスターが飛び出してきそうな雰囲気だ。

 ルミは意を決すると、街道を歩いていった。ヘイデンもその後ろに続いた。空は今にも雨が降ってきそうな曇り空だった。

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