不穏な気配。
______『魔物使いトーナメント』_____
【日時】:毎月15日、午後1時から
【参加資格】:Eランク以上の魔物使いのみ
【参加可能魔数物】:2体まで
*優勝者には王と対面する権利が与えられる
・参加者は受付まで来ること。
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ふむふむ、なるほど。
とりあえず、優勝商品はいらないな。
いや、これで優勝してケイゴに会うっていうのも手か。
そう考えると案外いい商品かもしれないな。
まあ、その為にはまずもう一体魔物を眷属にする必要があるわけだが。
ひとまず俺は受付でエントリーを済ませ、通りでハンバーガー(この世界ではミナスというらしい)を食べたあと、眷属を増やすためにもう一度森へ行くことにした。
ちなみにエントリーする時に魔物を書く必要は無かった。
俺が森について最初にしたことはライムの経験積みだ。
ライムが進化してくれたらそれだけでCランクの魔物を手に入れることになるからな。
まあ、俺自身がDランクな今、Cランクに進化させれるかどうかはわからないけど。
結論から言えば、今のところ上手くはいっていない。
ライムと同ランクであるスライムと何度か戦わせてはいるのだが、一向に強くなる気配を見せないのだ。
もしかしたら経験の積ませ方が間違ってるのかもしれない。
それだとどうしようもないけどな。
「川口、今日はもうちょっと奥まで行ってみるつもりだから気をつけるんだぞ」
ライムの育成を始めて30分程がたち、一旦育成を断念することにした俺は、朝に行けなかった奥まで行ってみることにした。
「うん!でも芝崎君が守ってくれるから大丈夫!」
「お、おう、任せろ!」
川口の率直な好意に若干ドギマギしながら、俺達は森の奥まで進んでいく。
迷わないように、木の枝を折って行くことも忘れない。
なんかヘンゼルとグレーテルみたいだなぁとか思いながら10分ほど歩き進めていくと、ようやくスライム以外の魔物が出現した。
その魔物は犬くらいの大きさで、突然襲いかかってきたので思わず殴ってしまったが、一撃で倒れないあたり、おそらくスライムよりも強いのだろう。
犬(仮)が俺に飛びかかる。
俺はそれを左によけて回避し、そのお腹に蹴りをぶち当てる。
それだけで、その魔物は呆気なく倒されてしまった。
おそらく、最初の攻撃でほとんどダメージを受けていたのだろう。
[・E+ランク“ウルフ”を眷属にしますか?]
頭に文字が浮かぶ。
この犬、E+ランクかよ。
スライムよりは強かったけど、まだまだトーナメントで戦えるレベルじゃないな。
とりあえず一応ウルフも眷属にしておくか。
「こいつも一応眷属にしとくな。」
「えっ、いいの!?」
そうか、川口は動物が好きなのか。
これは今後の参考にしよう。
「まあな。今度役に立つかもしれないしな」
「そっか、じゃあ、この子の名前は私がつけていい?」
その申し出は純粋にありがたいな。
俺、名前つけるの下手だし。
「ああ、いいぞ、任せる」
「やったー!じゃあどうしようかなぁ。うーん」
川口が名前で迷ってる間に俺のやることは終えておく。
俺が頭で『はい』と念じると、頭に『ステータスを確認してください』という文字が浮かぶ。
まあ、これは前と同じだな。
おそらくステータスを見たらウルフが追加されてるんだろう。
その前に、このウルフの能力を確認しよう。
本の『魔物について』を開き、ウルフを確認する。
〈E+ランク〉
ウルフ・・・能力:嗅覚による索敵
進化:〈C+ランク〉ワーウルフ
なるほど、犬だけあって嗅覚が優れてるのか。
それに、進化後もあるようだし、なかなか使えるかもしれない。
そこまで考えると、名前が決まったのか川口から声がかかる。
「ん?決まったのか?」
「うん!この子の名前は“カリン”がいいな!」
雌限定かよ!
ていうか、カリンって言ったら……
「それって西本の名前じゃないか?」
「うん。……香凜ちゃんとは離れちゃったけど、香凜ちゃんの代わりって事で!」
そうか、今まで何ともないように振舞ってたけど、川口も親友の西本と離れたんだもんな。
寂しいに決まってるか。
「そっか……ごめんな」
「うんうん!芝崎君が謝ることなんて何も無いよ!私が勝手に付いてきたんだし!」
「いや、でも……」
「そこで渋られると、私が付いてきたのが迷惑だったみたいに聞こえるよ?」
「いや、全然そんなことは!」
「だったらこの話はこれで終わり!
で、この子の名前は“カリン”でいいの?」
なんかうまく川口にまとめられてしまったような気もするが、川口が終わらせたいのなら仕方無いだろう。
「…ああ、いいよ」
「やったー!」
無邪気に喜んでいる川口を見て、俺も少し心が解れるのを感じながら、俺はカリンを召喚する。
『召喚“カリン”』
空間が歪み、そこからカリンが飛び出てくる。
「これからよろしくな、カリン……っておい、どうした?」
カリンを召喚したはいいものの、何故か極端に怯えた様子を見せる。
そんなに俺の蹴りが怖かったのかと一瞬思ったが、すぐに本の記述を思い出す。
『能力:嗅覚による索敵』
この怯えようは、おそらくカリンが恐れるレベルの魔物が森にいるのだろう。
そのレベルの魔物を倒せば俺のランクも上がるかもしれない。
俺はそんなふうに軽く考えながら、カリンに道を教えてもらい森の奥へと進んでいった。
おそらく次回から急展開を迎えます。
よろしくお願いしますm(__)m