旅立ち② ハルノ
今回も少し短いです。
キリのいいところで終わらせました。
楽しんでいただけると幸いです!
「えっと…….、どういう事だ?」
真剣な表情で旅に連れていくように頼むハルノに、俺は困惑しながらそう返事を返す。
すると、ハルノはあらかじめその返事が分かっていたように言葉を続けた。
「そのままの意味だよ。私もこの国を出て旅に行きたいんだ。ユウトやマイと一緒に!」
「でもさ、『ストルノ荘』の方は大丈夫なのか?ジェストさんが一人になってしまうんじゃあ--」
「それは大丈夫。お父さんも『僕のことは気にせずに行ってきなさい』って言ってくれたから。それに、新しい従業員さんも雇って、逆に人手が多すぎるぐらいだしね」
こちらも予想していたみたいで、こちらの言葉に重ねるようにして言葉を返してくる。
だったら、と、俺は一番聞きたい質問をする事にした。
「どうして旅に出たいんだ?ハルノには前に教えたと思うけど、俺は異世界から来た異世界人だ。
だから、この旅も勿論険しい旅になるし、最終的には元の世界に帰ることになるかもしれない。
それでも、本当についてきたいのか?」
正直、俺には別にハルノを断る理由がない。
夜の営みがしにくくなるとか、旅のスピードが落ちるというデメリットはあるものの、舞の仲のいい女の子がついてくるのであれば、それは大して問題にはならない。
問題なのは、何の考えもなしに甘い気持ちで付いてくることだ。
オミスの条件を探す旅の中なら、当然危険がついてまわるし、最悪の場合は死ぬ覚悟もしておかないといけない。
それを分かった上で言っているのかと、俺はハルノに尋ねたのだ。
俺の質問を受けたハルノは、一瞬肩をビクッと震わせた後、それでも真剣な表情を変えずに俺に言う。
「それは勿論分かってるよ。ユウトやマイの旅が危険な旅だってことも、ユウト達が元の世界に帰るかもしれないってことも。
でも、だからこそ私はついていきたいの」
どういう事だ?
頭に?マークが並ぶ俺に、ハルノは矢継ぎ早に畳み掛ける。
「だって、ユウト達はこの世界に来てからまだ一ヶ月も経ってないんでしょ!?それに、最初に来た国がカラマ王国らしいし、この国を出たら二人とも路頭に迷って ちゃうじゃない!それに、食事はどうするつもりなの!?まさか、全部保存食を買って済ませるつもりじゃないでしょうね!そんなんじゃ、どれだけ強くても栄養不足で力が発揮できなくなるよ!他にも----」
「ああ、分かったわかった!つまり、ハルノは俺達の為に付いてきてくれるってことか?」
俺の問いに、ハルノは迷いながらも頷く。
「まあ、勿論私も旅に出たいっていう気持ちがあったからっていうのが1番かもしれないけどさ。でも、ユウト達が心配だからっていうのも事実。
だからさ、良かったら私を連れていってくれない?」
そう告げるハルノの表情は、少し不安で覆われていた。
俺は舞の方に目を向ける。
すると、舞も同じくこちらを向き、苦笑しながら頷いた。
まあ、そうだよな。
ここまで言ってくれる子を断るという選択肢は考えられない。
「……わかった。ハルノも一緒に行こう」
「ほ、ほんと!?」
「ああ。
料理を作る人も確かに必要だろうし、何より、そんなに考えてくれているんなら心配する必要も無いだろうしな」
「やった!じゃあ、すぐに支度してくるから待っててね!」
「ああ、わかった」
俺が頷くと、ハルノはバタバタと忙しい音を立てながら自分の部屋へと向かっていく。
途中に、俺達の方を振り返って、少し笑みを浮かべてこう言った。
「あ、それと、多分もう一人私と同じことを言う人が来ると思うよ」
…………ん?
「えっと、どういう事だ?」
「それは後で分かると思う!
てことで、ちょっと準備してくるね!」
「あ、ちょっ、待っ」
バタバタバタバタ。
俺の質問を最後まで聞くことなく、ハルノは階段をドタバタと駆け上がっていった。
「……ホントに、どういう事だよ」
俺は困惑してそう呟く。
すると、それを聞いた舞が困ったような笑みを浮かべて言う。
「私は分かるような気がするけどなぁ」
「ん?本当か?」
「うん。
ま、勘違いかもしれないけどね」
「そっか…。
うーん、誰だろうな」
俺はそう首を捻りながら考える。
そして、この後直ぐにハルノの言った事が現実のものとなるのだった。
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「じゃあなー!」
「ありがとうございましたー!!」
「英雄様ー!また来てねー!」
「ははは、全くだーーー!」
俺達は、様々な歓声を受けながら街の中を歩き進める。
若干一名おかしなやつが混じっていた気がするが、今この瞬間ではそれすらも懐かしい気持ちにさせられる。
いよいよ旅立ちの日だ。
一ヶ月近くと、思っていたよりも長居してしまう程には過ごしやすい国だった。
最初の国がこのカラマ王国で、今は良かったと思っている。
「さあ、行くぞ」
「うん!」
「はーい!」
いつまでも感傷に浸っていても仕方がない。
俺は、舞達にそう告げて、カラマ王国を出ようとした。
その時。
「待ってください!お師匠様!」
ハルノの言ったとおり、本当にやって来る人がいたのだった。
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